第56回金馬奨12部門ノミネート、最優秀新人監督賞を含む最多5部門を受賞し、2019年度台湾映画NO.1ヒットを記録した『返校　言葉が消えた日』の監督ジョン・スーも注目すべき新しい才能で応援したい映画人だ。独裁政権のもと国民のあらゆる自由が制限されていた1962年の台湾、ある高校で開かれていた政府が禁止する本を密かに読む読書会を巡って起こる事件をかなりスタイリッシュでシュールな映像で描いた衝撃的なダーク・ミステリーは、どこかアラン・パーカー監督の『ピンク・フロイド／ザ・ウォール』に通じる世界観を持っていて、僕は完全にその世界にひきずりこまれてしまった。主演のファン・レイシンを演じるのは14歳で小説家としてデビューし、『全ては愛のため』で映画デビューした新世代の女優ワン・ジン。透明感のある美少女のムードが映画の持つ不思議な浮遊感につながっている。

21/7/23(金)