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水先案内人のおすすめ

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話題作、アート系作品を中心に

恩田 泰子

映画記者(読売新聞)

花束みたいな恋をした

ずっと一緒にいたいと思っていたはずなのに、いつの間にか心がすれ違い始める。ひとつの恋が始まって終わるまでの5年間を描いた本作で描かれる出来事を誰が他人事だと思えるだろうか。 この映画で有村架純と菅田将暉が演じる文系カップルの趣味嗜好はびっくりするほどよく似ていて、まるで一緒に生きるために生まれてきた特別な2人のようだと、途中までは思う。けれども、好きなことだけしていては生活していけない。大学を卒業し、しばしの猶予期間を経て社会へ出ると、2人は少しずつ変わっていく。 それは当たり前のことだけれど、この映画がすごいのは、当たり前のことをちゃんと見せていることだ。そして、それはどんな大事件が起きるよりも切ない。ほかの誰かを好きになるわけでもなければ、病や家の事情で引き裂かれるわけでもない。2人は、ただ「成長」しているだけ。でも、男の子が男になり、女の子が女になっていく過程をこれほどきちんと描いた映画はそうはない。 終幕、思い出のファミレスで主人公たちは、自分たちは決して特別ではなかったのだと知る。でも、特別でない恋人たちにも確かに存在したいとおしい時間を描いているからこそ、この物語は素晴らしいのだ。

21/1/28(木)

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