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洋画、邦画、時々アニメ 映画で人生が変わります

堀 晃和

ライター&エディター。記者歴27年、元産経新聞文化部長。映画と音楽と酒文化が守備範囲。

ばるぼら

漫画誌『ビッグコミック』(11月25日号)で、主演の稲垣吾郎が語っている。「男は、壊れたくてもなかなか壊れられない」。だから「壊れゆく男を演じるのは気持ちよかった」という。 『ばるぼら』は、同誌1973年7月10日号から74年5月25日号まで連載された手塚治虫の同名漫画が原作。人気作家の美倉洋介(稲垣)が東京・新宿の路上でホームレスのような少女ばるぼら(二階堂ふみ)と出会うことで日常が狂い始める様子を描いた。 愛欲におぼれ、破綻していく孤独な男の苦悩を表現した稲垣と、魔性の女を演じた二階堂。2人の演技が圧巻だ。理屈ではなく、心と身体で強くひかれあう様子が体温を伴って伝わってくる。 監督は、手塚治虫の長男でヴィジュアリストとして活躍する手塚眞。これまでも独特な映像感覚が評価されてきたが、本作でも観る者を魅了する。異世界にいるような幻想的な映像が美しく、心地よい。エロティックで退廃的、妖艶な雰囲気をまといながら、どこか透き通った美しさを持つばるぼら。その不思議な魅力が、世界的な撮影監督クリストファー・ドイルの陰影を強く意識した鮮やかな色彩で描写されているのも見所だ。映画が終わった後も余韻が続く。

20/11/17(火)

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