Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

返校 言葉が消えた日

台湾の戒厳令が1987年に解除されてから6年後の夏、私は『悲情城市』の取材で初めて台湾を訪れました。「白色テロ」と呼ばれる40年に及ぶ圧政下を潜り抜けて来た市民の一人は「実は今も憲兵に連れていかれるような怖いという感触があります」と話してくれました。子や孫に囲まれ幸せな現在の暮らしぶりを伺ったばかり。そんな暗い影など感じさせない様子だったので、改めて長期にわたり自由を奪われることの残酷さが身に染みました。 本作はそんな暗黒時代を舞台に2017年に台湾で発売された大ヒットサイコホラーゲームを実写化し、ゲーム世代だけでなく、戒厳令下の時代を覚えている中年以上の世代にも映画館に足を運ばせ、19年の興行記録ナンバーワンとなりました。 こんな展開です。放課後の教室で目覚めたある女子生徒が人の気配の無いことに気付き校内をさまよいます。彼女は政府から禁じられた本を読む読書会メンバー。1人の男子生徒と出会い脱出を図りますが、どうしても外に出られません。やがて2人は、学校で起きた政府による迫害事件と、その原因をつくった密告者の悲しい真相にたどり着きます。 作品から浮かび上がるのは、人間は追い詰められると取調官の求めに応じてウソの供述をしたり、助かりたい一心から密告までしてしまうということです。フェイクニュースは論外ですが、自由に物が言える社会は全力で守らなければいけないですし、いま世界で行われている言論の自由への弾圧は問題です。絶望に駆られながらも「生きてさえいれば希望はある」と生徒に語る教師の重い言葉が耳に残りました。

21/7/27(火)

アプリで読む