男が仕事に追われて子供に会えなくても、何も言われない。しかし女となると別だ。しかもそれが宇宙飛行士で、1年間“地球を不在にする”としたら。本作は7歳の娘を持つシングルマザーの宇宙飛行士サラの葛藤と、娘との絆を描いている。 これまで宇宙飛行士の物語は多々あれど、地球を飛び立つまでの訓練の様子をこれほどじっくりと、リアルに見せてくれる映画はなかったのではないか。本作を観ると、宇宙飛行士という遠い存在の陰の苦労が、親近感をもって伝わってくる。スーパーヒーローもまた、ひとりの悩める人間であることに変わりはないのだ。ガラス越しに向き合う母と娘の姿が、なんと切ないことだろう。 凛とした美しさと強さをたたえたエヴァ・グリーンの魅力、坂本龍一の控えめで心に染みる音楽、そして澄んだ空気に包まれたランドスケープの美しさが、いつまでも脳裏に残る。

21/4/11(日)