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文学、美術、音楽など、映画とさまざまな構成要素に注目

高崎 俊夫

1954年生まれ フリー編集者、映画評論家

日活ロマンポルノ50周年 私たちの好きなロマンポルノ

『愛欲の日々 エクスタシー』(11/23、27 、12/7 、12、17) 〜シネマヴェーラ渋谷「日活ロマンポルノ50周年・私たちの好きなロマンポルノ」(11/20〜12/17)で上映〜 今年は日活ロマンポルノが誕生して50周年を迎えるということで、シネマヴェーラ渋谷で大特集が組まれている。今回は神代辰巳、田中登、曽根中生らの有名作だけでなく、今までほとんど上映される機会のなかったレアな映画がピックアップされているのが注目される。とりわけ『ORGASM(オルガスム)』という映画のミニコミ誌を発行している女性たちが選んだ作品群はブッとんでいて面白い。  その中でも磯村一路の『愛欲の日々 エクスタシー』(84年)は傑出している。磯村監督と言えば、後に田中麗奈主演の『がんばっていきまっしょい』(98年)で大ブレイクし、一時は青春映画の旗手のごとく賞揚されたが、このロマンポルノ作品こそ彼の本領が発揮されているといえよう。当時、磯村はルイ・マルに私淑していたというが、葬式帰りの不倫のカップルの奇妙な道行を追う、この映画は、まるで<愛の不毛>を謳った初期のミケランジェロ・アントニオーニを思わせる独特のアンニュイな感覚が画面を覆い尽くしているのだ。高橋伴明作品で知られる下元史朗の屈託した表情が良く、彼の隠れた代表作であろう。後半になって、主人公たちとは対照的に、一見、無邪気な若いカップルが登場するが、この付随的に見える、しかし鮮烈なエピソードは、明らかに夭折の作家、山川方夫の傑作ショートショート『赤い手帖』にインスパイアされたものである。冷え冷えとした大気感を見事に醸成させた名手、長田勇市のキャメラも素晴らしい。

21/11/7(日)

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