Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

文学、美術、音楽など、映画とさまざまな構成要素に注目

高崎 俊夫

1954年生まれ フリー編集者、映画評論家

よこがお

深田晃司の映画はシネフィル出身らしく、これまでは一作ごとに敬愛する映画作家の作風の影響が垣間見える瞬間があったが、『よこがお』ではひたすらヒロインの筒井真理子の表情の変化のみを細大漏らさずにとらえようと執心しているかにみえる。つまりゴダールがアンナ・カリーナを、トリュフォーがファニー・アルダンを愛をもってみつめたように、深田は筒井真理子をキャメラを通して凝視しているのだ。前作『淵に立つ』では、デニーロ・メソッドを実践するかのごとく三週間で十三キロの体重の増減に挑戦した筒井真理子だが、不条理劇風なホラーとして括られるであろう、この新作では、ある事件によって平穏だった日常が破壊され、いつしか内面に巣くうデモーニッシュなものに苛まれ、対決を強いられる主人公を果敢に演じている。『愛しのアイリーン』の木野花がそうだが、長年、演劇で培ったキャリアがスクリーンで一挙に開花する例がある。『よこがお』の筒井真理子には、そんな尽きせぬエロティックな魅力がある。

19/7/22(月)

アプリで読む