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パナソニック汐留美術館『クールベと海展』6月1日より再開! レアリスムの巨匠による海の風景画の特異性を探る

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写実主義の画家として活躍し、後に続く印象派にも大きな影響を与えたクールベ。彼が好んで描いた海を主題とした展覧会『クールベと海 展ーフランス近代 自然へのまなざし』が、パナソニック汐留美術館で6月13日(日)まで開催されている。

対象を忠実に描き出す写実主義の画家、クールベはスイス国境近くの山間地、オルナンの出身。本展は、22歳まで海を見たことがなかったクールベの自然との関わり、そして同時代の画家たちの海を描いた作品をあわせて紹介していくものだ。

クールベと海展のエントランス

展覧会は5章構成。第一章「クールベと自然」、第二章「クールベと動物」の章では、山に囲まれた小さな村で育ったクールベと自然とのかかわりについて、作品とともに迫っていく。起伏に富んだ故郷や、野生の動物など自然をモチーフとした絵を彼は繰り返し、理想化させることなく描いていた。彼にとって、自然は非常に身近な存在だったのだろう。

第一章「クールベと自然」展示風景。左はギュスターヴ・クールベ《岩山の風景、ジュラ》1856年
第一章「クールベと自然」展示風景 右はギュスターヴ・クールべ《セイ=アン=バレーの水車小屋》1858年
第二章「クールベと動物」展示風景

続く第三章「クールベ以前の海」、第四章「クールベと同時代の海」では、クールベが海を描き始める前から同時代にかけての海の描かれ方について、コンスタブルやターナー、ブーダンらの作品を通じて紐解いていく。

いまでこそ、休日をのんびり過ごす場所、泳ぐ場所として認識されるようになった海であるが、19世紀中頃まで畏怖や崇高の対象として扱われてきた。鉄道が開通し余暇を楽しむ「リゾート地」の概念が人々の間に生まれるようになり、ようやく海は人々に身近な存在となってきたのだ。二つの章を通じて、人々の海への認識がどのように変わっていったのかを検証していく。

第三章「クールベ以前の海」 展示風景 左 ラ・トルネーズ(1823年建造) 右 スピーディー(1828年建造) 
第四章「クールベと同時代の海」展示風景。左の壁の作品はクロード・モネで左が《アンティーブ岬》1888年、右が《アヴァルの門》1886年。右の壁の作品はモネの師匠であるウジェーヌ・ブーダンの作品で、左が《ブレスト、停泊地》1872年、右が《浜辺にて》。クールベはブーダンと連れ立って戸外に制作に出たり、モネを大切な年下の友人として付き合いがあり、お互いに刺激を受け合う仲であった。

加えて、参考資料として19世紀中頃に使用されていた水着も当時の写真とともに展示。1910年ころまでは、このようなスタイルの水着がスタンダードだったという。

左が男性もの、中、右は女性ものの水着

そして、展覧会のクライマックスとなる第五章「クールベの海」へ。22歳のときに生まれて初めて海を見て、そのときの印象を「奇妙なもの」と表現したクールベは、それから20数年後、ノルマンディーの海へ頻繁に赴き、生涯で海を主題にした作品を100点以上残す「海の画家」となった。

第五章「クールベの海」展示風景。左から、ギュスターヴ・クールベ《波》1870年、《波》1869年、《波》1869年。どの作品も浜辺や人、船を描かず、ただ波と水平線を描いている。特に波が崩れた瞬間の描写を非常に丁寧に描いており、近くで見ると白い部分はパレットナイフで若干盛り上がるように描いている。本展では彼が描いた海景画11点が展示される。
第五章「クールベの海」展示風景。左から、《波》1869年、《水平線上のスコール》1872-73年、《海》1875年。これらは、クールベが故郷のオルナンやスイス滞在中に描いたもの。海から遠く離れた場所でも、クールベは思い出を頼りに海の風景画を描きつづけていた。

クールベはさまざまな海景を描いたが、どの作品も空の色や波しぶきの形、陽の光などが異なり、彼の卓越した描写力を見て取れる。また、モネなど印象派の画家たちが好んで描いたエトルタの海岸も積極的に描いている。彼が描いた海の絵もまた、印象派の画家たちに影響を与えたと考えられるだろう。

絵画の世界を大きく変えたクールベ。彼の描いた数々の迫力ある海の絵を堪能してみよう。

取材・文:浦島茂世

【開催情報】
『クールベと海 展ーフランス近代 自然へのまなざし』
2021年4月10日(土)~6月13日(日)、パナソニック汐留美術館にて開催
※日時指定予約制
https://panasonic.co.jp/ls/museum/

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