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ぴあ 総合TOP > 『近松心中物語』で対照的な女性を演じる笹本玲奈×石橋静河。いずれも今の誰かに重なるかも!? 『近松心中物語』キャストインタビュー【後編:梅川&お亀】

『近松心中物語』で対照的な女性を演じる笹本玲奈×石橋静河。いずれも今の誰かに重なるかも!? 『近松心中物語』キャストインタビュー【後編:梅川&お亀】

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石橋静河、笹本玲奈 撮影:外舘翔太

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キャストインタビュー前編:田中哲司×松田龍平対談で、男性の視点からその面白さを紐解いた『近松心中物語』。今度は、女性側から迫ってみたい。登場してくれるのは、忠兵衛(田中)と恋に落ちる遊女・梅川を演じる笹本玲奈と、与平衛(松田)の妻・お亀に扮する石橋静河。一目惚れの相手とともに心中へと向かう梅川、心中に憧れるお亀という、まったく違う女性を演じながら、どんなものが見えてきているのか。稽古に入ったふたりに、作品の魅力を語ってもらった。

お亀は、現代の女性が見ても応援したくなるような女性(笹本)
梅川は忠兵衛よりも腹が据わっているような強さを感じます(石橋)

――稽古が始まっての感想を、まず聞かせてください。

笹本 じっくりと本読みを重ねてきたので、立ち稽古はまだ冒頭のシーンしかやっていないんです。でも、その本読みで、演出の長塚(圭史)さんが一人ひとりの人物を丁寧に説明してくださったので、全体的に徐々に深まりつつあるなと感じています。セットがけっこう抽象的でシンプルなんですが、その中でいかに心情を伝えるかっていうことが大切になってくるんだろうなと思います。

石橋 しかも、そのセットが傾斜になっているので、身体が慣れていくのに時間がかかるだろうなと思っているんですけど(笑)。

笹本 そうですね。梅川の衣裳は裾の長い引き着ですし、その傾斜舞台の上で、梅川として自然に呼吸ができるのかなっていう不安はまだあって。そこに慣れるのが今回は最優先だなと、私も思っています(笑)。

石橋 稽古では浴衣を着ているんですけど、私たちが普段着ているような洋服で生活をするのと、着物で生活をしているのとでは、人の考え方や感じ方も全然違うんだろうなと思ったり。一つひとつが新鮮で楽しいですね。

――長塚さんの説明から感じたことも含め、笹本さんは梅川を、石橋さんはお亀を、どういう女性だと捉えておられますか。

笹本 長塚さんは、遊女にも位があって、梅川はわりと下のほうにいるんだとおっしゃっていたんです。だからきっと、普通の女性なんですよね。何の特別感もない普通の女性が、たまたま遊女にならざるを得なくなり、たまたま出会った忠兵衛と恋に落ちて運命が大きく変わっていく。そういう意味では、すごく人間味のある人物だなと思います。

石橋 お亀は裕福な家に生まれていて、そこが梅川さんや遊郭にいる女性たちと違うところなんですけど、だからこそ、エネルギーがあり余っているというか(笑)。

長塚さんは、生を持て余しているからこそ一番最初に死に向かっていってしまうとおっしゃっていましたが、だから、全部の感情を、特に与平衛に対しては、好きも怒りも100%、120%ぶつけていくんだろうし。死に対しても、生きることをあきらめて死を選ぶのではなく、「美しく死にたい!」と、怖いくらいに情熱がありますし。とにかく面白い女の子だなと思っています。

笹本 お亀は、現代の女性が見ても応援したくなるような女性ですよね。お亀と与平衛って、常に修羅場なんですけど(笑)、江戸時代の女性とは思えないくらいお亀はバーっと自分の思ったことを言っていて、聞いていてスカッとするんです。またそれを、しーちゃん(石橋)と松田さんが演じるので本当にかわいくて! 楽しそうなふたりだな、いいなと思いながら、本読みを聞いていました。

梅川・忠兵衛とはあまりにもテンションが違っていて(笑)、静と動という対照的なふた組だなと思います。

石橋 お亀はいつもわちゃわちゃいろんなことをしゃべっていてにぎやかで、怒ったり泣いたり忙しいんですけど、梅川さんはいろんなことを内に秘めているというか、静かで奥ゆかしくて抑制されていて。そしてそれが、弱さになっていない感じがするんです。忠兵衛よりも腹が据わっているような強さを感じますし、同時に、思いやりや品も感じられて。玲奈さんが演じられると、梅川が持っているものがよく見えてくるなと思っています。

笹本 ただ、実は私は、梅川の生き方や考え方が、なかなか理解しづらいなと思っているんです。当時は女性が男性の後ろに一歩引いているのが当たり前で、それが美しいとされていた時代だったと思うんですけど、今は違います。梅川みたいな奥ゆかしくて健気なこと、男性に対してのみならず、とても言えないなと本当に感心してしまうんですよね(笑)。

でも、遊郭でも禿や自分の仲間に対して深い思いやりがあって、貧しい家庭で育って7つのときに身を売られてしまうけれども、家族とはいい関係だったんだろうなっていうことは、一つひとつのセリフから想像できるんです。だから、忠兵衛という愛する人のことを一番に考えるという姿は、人として素敵だなというふうには思っています。

観客からどんな反応がもらえるのか

――貧しい梅川・忠兵衛カップルと、裕福なお亀・与平衛カップルの対比に、今の格差社会に通じるものがあるのではないかと長塚さんはおっしゃっていました。それに限らず、この作品から今の私たちにどんなものが届きそうだと、感じておられますか。

笹本 私は今のお客様の反応がまったく想像できなくて。40年以上前に蜷川幸雄さんが上演されていた頃は、和物の舞台も多かったと思うんですけど、最近は減ってきていますし。だから、どういう反応をいただけるのか、私自身もすごく楽しみにしているんです。ただ、ふた組のカップルの描かれ方がとてもシンプルなので、私自身はそこが面白いなと思っています。

お亀・与平衛は、それこそ今の夫婦と変わらないような会話をしていますし(笑)。梅川・忠兵衛の恋も、出会って一目惚れして、そこからたった40日で運命が変わっていく面白さがありますし。近松門左衛門が書いた色々なものを組み合わせて作られた作品ですけど、中でも面白いものを集めているなと思うので、そこも楽しんでいただければと思います。

石橋 私が稽古をしていて思うのは、長塚さんが一人ひとりについて細かく説明してくださったこともあって、この作品のなかに本当にいろんな人の暮らしがあるなということなんです。

みんなそれぞれに苦しい生活をしていて、特に遊女の人たちなんて本当に苦しい人生なんですけど、明るく生きていて、だからこそ、その裏にある苦労や悲しみがより感じられる。

そんなふうに、大変だけれども生きようとするパワーが詰まっている作品だなと思うんです。だから、どの時代も、今も、いろんな人が苦しい思いをしながら一生懸命生きていると思うんですけど、そこにフックする言葉もいっぱいあって。今の人にとっても何か感じてもらえるところがあるんじゃないかと思っています。

日本語の美しさ、そして不思議とマッチするスチャダラパーの音楽と江戸言葉

――笹本さんがおっしゃったように、『近松心中物語』は、42年前に生まれて繰り返し上演されてきた日本の名作です。俳優としてのご自身にどんな挑戦になり、どんな意味のある作品になりそうでしょう。

笹本 これまでミュージカルで演じていたのは、ほとんどが外国人の役だったんです。特に私はフランス人が多かったので、フランスの文化や歴史の知識は豊富なんですけど、日本史に触れる機会がまったくなかったんです(笑)。だから、この作品で江戸時代のことを学べるのが、役者の笹本玲奈ではなく、ひとりの日本人としてすごくありがたくて、小学校1年生の新入生気分ですごく楽しいんです。

役者としては、関西の言葉に初めて挑戦しています。それも昔の言葉遣いなので、本来の日本語を学び直している感じがして、役者の笹本玲奈としてもすごく勉強になっていますね。

石橋 日本語の美しさに触れられるのは本当に嬉しいなと私も思っています。今は、例えばネットの誹謗中傷とか、嫌な言葉があふれているからなおさらそう思うんです。それから、この舞台の前に出演させていただいた『未練の幽霊と怪物』(KAAT神奈川芸術劇場ほかにて、6月5日~7月4日上演)で能に触れたときに、日本語の成り立ちみたいなことも勉強したんですけど、日本語は文字ができるのが遅くて音が大事だったんだということを知って。長塚さんがこのお芝居はフィジカルなものなんだとおっしゃっていたことが、私の中で勝手にその音ということに結びついて、この中に出てくる昔の言葉の音が、すごく面白く感じられるんですよね。

例えば、冒頭の騒ぎ唄に出てくる「のんやほほ」っていう囃子言葉もそうなんですけど、音が面白いうえに、「月が上がる」っていう意味があるらしくて、「そうなの!?」ってびっくりしちゃって(笑)。

笹本 私もです(笑)!

石橋 単純にそういうことが、俳優としてという以上に個人として楽しく面白がってやれる理由のひとつになっていますね。

――今回の音楽はラップグループのスチャダラパーさんが担当されています。その言葉の面白さを味わえそうですね。

笹本 そうなんです。最初にデモ音源を聴かせてもらったときは、自分にこんなラップができるかなと思ったんですけど、稽古してみると、スチャダラさんの曲が妙にマッチしていてすごく楽しくて。

石橋 本当にびっくりするくらい、スチャダラさんの音と言葉が馴染んでいるんです。江戸時代にこんなふうに歌ってたんじゃないかと思うくらいぴったりなんですよ。

笹本 梅川が笑顔で楽しそうにしているのは、その歌のシーンくらいなんですけど(笑)。そこから一気にこの世界に入っていけると思うので、ぜひ楽しみにしていてください。

取材・文:大内弓子 撮影:外舘翔太



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『近松心中物語』キャストインタビュー【前編:忠兵衛&与兵衛】田中哲司さん、松田龍平さんインタビューはこちら
https://lp.p.pia.jp/shared/cnt-s/cnt-s-11-02_2_e913193c-691d-4ec6-8633-2ade6b91fe6e.html

公演情報
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『近松心中物語』
2021年9月4日(土)~2021年9月20(月・祝)
会場:KAAT神奈川芸術劇場 ホール
ほか、福岡、愛知、兵庫、大阪、長野公演あり

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