
原田マハ原作、京都を舞台にしたアートミステリーをドラマ化!
『連続ドラマW いりびと―異邦人―』特集
WOWOW『連続ドラマW いりびと―異邦人―』
11月28日(日)放送・配信スタート(全5話)
放送:毎週日曜夜10時(第1話無料放送)【WOWOWプライム】
配信:第1話放送終了後配信スタート(無料トライアル実施中)【WOWOWオンデマンド】
※第2話放送終了後に全話一挙配信
今年の話題をさらった映画『キネマの神様』『総理の夫』の原作者であり、美術キュレーターだった経歴を持つ人気作家・原田マハの美術小説をWOWOWが完全映像化。今や実力派女優の筆頭に挙げられる高畑充希がWOWOWドラマ初主演を務め、時に美しく、時に狂おしいアートミステリーの世界へといざなう。
物語の舞台は、静謐で荘厳な魅力が人間の情も業も包み込む京都。無名画家の手による1枚の絵をきっかけに、画壇のめくるめく人間模様、ある天才画家の死の真相がゆっくりと明らかに……。全5話の監督を務めたのは、数々の映画やドラマ、そしてCMも数多く手がける映像派・萩原健太郎。美しくも心揺さぶる作品世界に、どうしようもなく魅了されるはずだ。
無名画家が描いた1枚の絵に魅了された主人公
その奔走が京都画壇の秘密を明るみに暴き出していく……


主人公の篁(たかむら)菜穂は、稀代の美術収集家の孫娘であり、東京にある美術館の副館長。生まれながらの審美眼を持つ菜穂にとっては、画廊を経営する夫よりも、お腹にいる夫の子よりも、美術への関心が第一だった。
現在、身重の体を労わるため京都に滞在中の菜穂は、立ち寄った画廊で1枚の絵に出会う。まだ無名の女性画家の手による絵に惹きつけられた菜穂は、彼女の存在を世に出そうと奔走。ところが、菜穂の行為は京都画壇の秘められた過去を明るみにするものだった……。
無鉄砲に突き進む菜穂の情熱、暴かれる危険な過去、欲望と欲望が絡み合う人間模様と宿命的真実。幾重にも重なった濃厚な人間ドラマとミステリーが、視聴者の心をもかき乱す。また、そんな中で変化を遂げる菜穂の成長も見どころとなっており、不思議な爽快感すら味わえるラストが待っている。
本作をひも解くための3つのキーワード
生まれながらの審美眼を持つ主人公に高畑充希
多彩な実力派たちの競演が作品世界を彩る
シリアスからコメディまで、幅広い作品で実力を見せつけてきた高畑充希が、物語の主人公として存在感を発揮。美術の世界に対する絶対的情熱と自信を持ち、持ち前の慧眼を武器にひた走る菜穂を、低温の魅力を湛えながら熱演。
その夫で、妻に複雑な感情を抱く画廊経営者の篁一輝を風間俊介、京都画壇の権力者として菜穂の前に立ちはだかる日本画家・志村照山を松重豊、照山の養女で圧巻の画力を持つ無名画家・白根樹をSUMIRE、菜穂の奮闘を見守る書家・鷹野せんを梶芽衣子が演じている。
また、菜穂の母でありながら一輝に秋波を送る有吉克子を森口瑤子、菜穂が樹の絵に出会う画廊のオーナーを松尾貴史、京都画壇の暗部について菜穂に警告する新聞記者をマキタスポーツが演じ、それぞれキーパーソンに。実力派たちの競演が、作品世界をより濃厚にしている。
Character
ビジュアルとドラマのおいしいところ取り
アート+映画が人気の理由とは


作品数こそ限られるものの、アートを題材にした映画は人気のジャンル。名匠ジュゼッペ・トルナトーレが監督を務め、女性に接するのが苦手な美術鑑定士と広場恐怖症の資産家令嬢の恋を描いた『鑑定士と顔のない依頼人』は、アーティスティックな作品世界と衝撃の展開が話題となり、日本でもさまざまな考察が飛び交うほど注目を集めた。
また、モネの名画を巡って詐欺計画が進行する『モネ・ゲーム』(※モネの絵画は『いりびと―異邦人―』でも重要なアイテムとして登場)、アート界で成功を収めた男がトラブルに見舞われる『ザ・スクエア 思いやりの聖域』、画家であるマーガレット&ウォルター・キーン夫妻の実話を映画化した『ビッグ・アイズ』、ゴッホの不器用な生きざまに迫る『永遠の門 ゴッホの見た未来』など、テイストはさまざまだが、見応えのある作品ばかりだ。
絵画や彫刻には作者の想いが詰め込まれており、その周辺には取り巻く人々のドラマが渦巻いている。ビジュアルとドラマのおいしいとこ取りができてしまうアート+映画というジャンルが人気なのは、そう考えるとまさに必然なのだ。
Review
アートの持つ魅力はもちろん、その裏側の激しい魔性にも気づかされてしまう
浦島茂世(美術ライター)


このところ、学芸員の仕事や展覧会の裏側について書かれた本が立て続けに出版されている。けれども、本作の登場人物のような、ハイクラスで、上質で、そして少し影のある世界の話は表にはめったに出てこない。だから、華麗なる人々が紡ぎ出す、『異邦人(いりびと)』という物語に、私はあっという間に引き込まれてしまった。
美しい作品の数々、京都の家の設え、主人公・菜穂の四季折々で変わるファッション、登場人物の凛とした立ち居振る舞いなど枚挙に暇がない。さらには「移動の基本はタクシーなんだ」、「菜穂は100万円の小さな絵も衝動買いできてしまうんだ」、「一輝と菜穂は東京のマンションに杉本博司の作品を飾るんだ」など些末なことにも、いちいち驚いてしまい、この作品を観ている自分こそが“異邦人(いりびと)”なのでは?と感じてしまうほど。
本作の登場人物はだれもが個性的で、自己主張が激しい。けれども、彼女らは純粋で嫌味はなく、アート(とそれにまつわるお金)の話が絡みさえしなければ、基本的にみんな優しく、決してぶつかりあうことがない。そう、アートさえなければ優しいお金持ちの話なのだ。それゆえ、アートの持つ魅力はもちろんのこと、その裏側の激しい魔性にも気づかされてしまう。そういった意味では、とても怖いドラマでもあるのだ。
ちなみに、いわゆる“不文律”を含めて、特に日本画壇を取り巻く状況を、物語の中で分かりやすく解説してくれるのは非常に助かった。絵のサイズは“号”で呼ぶ、投機目的で絵を買う人もいる、師匠を差し置いて弟子を尊んではいけない、京都画壇の大家であっても、ナワバリ外の東京進出は大変……など、これからの美術館・ギャラリー巡りにも使えそうな知識だからありがたい。
アートの深淵をちらりと覗き見したい人に、美しく、ときには少し怖い、知的好奇心も満たされる本作品はぜひともおすすめしたい。
WOWOW『連続ドラマW いりびと―異邦人―』
11月28日(日)放送・配信スタート(全5話)
放送:毎週日曜夜10時(第1話無料放送)【WOWOWプライム】
配信:第1話放送終了後配信スタート(無料トライアル実施中)【WOWOWオンデマンド】
※第2話放送終了後に全話一挙配信
原作:原田マハ「異邦人(いりびと)」(PHP文芸文庫刊)
脚本:関久代
音楽:audioforce
監督:萩原健太郎(『サヨナラまでの30分』『東京喰種 トーキョーグール』)
出演:高畑充希、風間俊介、SUMIRE
森口瑤子、松尾貴史、マキタスポーツ、菅原大吉
木場勝己、壮一帆、白羽ゆり、宮田圭子 / 二階堂智、康すおん
梶芽衣子、松重豊
Text:渡邉ひかる