Wキャストの坂口湧久&碧直生が語るミュージカル『キッド・ヴィクトリー』
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インタビュー
左から 碧直生、坂口湧久 撮影:源賀津己
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すべて見る誘拐事件の被害者の「その後」を描いたオフ・ブロードウェイ ミュージカル『キッド・ヴィクトリー』が2021年12月15日から浅草九劇(東京都台東区)で開幕する。
2019年に加藤清史郎主演で日本初演された本作。今回は、本格的なミュージカルを小劇場の距離感で楽しめる「浅草九劇ミュージカル企画」第一弾として、全役Wキャストで上演される。
主人公のルーカス役を演じる、坂口湧久と碧直生のふたりに作品の見どころなどを聞いた。
同じ脚本なのに、全然違う作品が出来上がっていくような感覚
ーーお稽古の最中だと思いますが、順調でしょうか?
坂口 順調だと思います!(坂口が出演する)WESTチームと(碧が出演する)EASTチームはそれぞれ別日に稽古をしているのですが、なんかすごく新鮮ですね。同じ作品をやっているはずなのに、全然違う作品が出来上がっているような気がします。
碧 僕はミュージカル初出演なので、正直、周りの皆さんについていくのに必死です。主人公のルーカスは歌わないんですけど、周りの皆さんの歌声には普通に感動してしまいます......(笑)。毎日たくさん刺激を受けながら稽古しています!
ーーWESTチーム、EASTチームはそれぞれ稽古の動画を見せ合っているそうですね?
碧 はい。たくさん動画を見て、参考にしています。先日は、WESTチームの方が先に稽古が進んでいたので、動画を見て「ダンスがたくさんありそうだな」とか思いながら、稽古の予習をしていました。
坂口 動画の冒頭「明日、大変だから頑張ってね!」とメッセージ入れたんですけど、気づきました?カットされちゃったかな?(笑)
碧 え!気づかなかった......!今度はしっかり見てみます(笑)
主人公・ルーク役を演じることについて
ーー動画を通じてコミュニケーションを取っているのですね。今回のルーク役に関してはどんな役だと思っていますか?
坂口 僕は前回(2019年)、アンドリュー役として出演していたのですが、その時とは何もかも違うなと思って。アンドリューはいかにもミュージカルらしく、歌とダンスがあって、ルークを楽しませる役割だったのですが、今回のルーク役は、彼の心情の変化が物語の軸になってくる。お芝居が見せどころなんですよね。
舞台上のルークは基本受け身なんです。周りの皆さんが歌ってくれて、そこから何か感じて、刺激を受けていく役どころなので。時系列がばらばらになっている点が少し難しいんで
すけど、皆さんに助けられながら、ルークを深めているところです。
ーーひとつの作品で別役をやるのは初めてですよね?
坂口 はい。初めてです。先日、アンドリューとルークのシーンを稽古したんですが、いまだにアンドリューと呼ばれると、返事をしそうになりました(笑)。不思議な感覚なんですけど、作品をいろいろな役を通して見られるのは楽しいです。
ーー碧さんはルーク役についてはどうでしょう?何か感じていることがあれば教えてください。
碧 初めて台本読んだときは、ちょっと正直ルークの気持ちが分からなかったんです。けど、読み込んでいくうちに、「ルークはこう思ったんだ」とかどんどんルークが分かって、今は一緒に生きているみたいな感じです。
ルークはすごく感受性が豊かな子。言われたことをすごく真に受けたりとか、吸収したり。そこは自分と似ている気がして、どんどん愛おしい存在になっています。
ーー全役がWキャストということで、EASTチームもWESTチームも全然違う作品に感じられそうですね。
坂口 全然違うと思います!演出の奥山(寛)さんが「自分に寄せた役作りをしてほしい」と仰っていることもあって、皆さんの素敵な個性が出てくると思うんですよね。僕も舞台稽古で早くEASTチームの全貌を観たいです。すごく楽しみです。
碧 そうですね、僕も劇場に入ってからWESTチームを観ることがすごく楽しみ。負けないようにしないと!
ーー碧さんはミュージカル出演は今回が初めてですが、ミュージカルの魅力はどんなところに感じていますか?ご覧になられたりもします?
碧 はい。最近だと、劇団四季の『アラジン』と、草彅剛さんが主演されている音楽劇『アルトゥロ・ウイの興隆』を観たんです。全然作品のテイストは違いますけど、お芝居の中に歌やダンスが入っているという点では同じじゃないですか。どちらも本当にすごかった。自分はまだまだミュージカル初心者ですが、楽しんでもらえる作品を作りたいなと改めて思いましたね。
ーー坂口さんは数々のミュージカル出られていますが、魅力は何だと思いますか?
坂口 『キッド・ヴィクトリー』もそうですけど、音楽がすごく素敵なんですよ。音楽があることで、物語が心の深いところまで届く気がするんですよね、ミュージカルって。出演するのも、観るのも、大好きです。
20代になっても、10代の時に負けないくらいキラキラしたい
ーーさて、おふたりは同い年ですよね。別々にお稽古していることもあって、なかなか聞けないこともあると思うので、これを機にぜひ質問があれば!
坂口 もう20歳になられたんですよね?
碧 はい!
坂口 お酒とか飲んでます?
碧 そうですね、弱いですけど。飲みますか?
坂口 そうですね。あんまりまだ慣れていないから、僕も弱いんです。「飲みたい」と思う瞬間はまだないです(笑)
碧 確かに、ビールの美味しさはまだ分からないです(笑)
坂口 僕も!いろいろな人から話を聞くと、「ビールを飲みたくなる瞬間」があるらしくて。その瞬間が訪れたら、飲みたいと思います(笑)
碧 ひとつ聞きたいことがあるんですけど、僕たち20歳じゃないですか。20歳になってどう思っていますか?20歳って、社会的に見たら大人ということは分かっているんですけど、自分の感覚としては、小さい頃に想像していた20歳とかけ離れているんですよね。
坂口 今まで年齢を聞かれて「18歳です!」と言うと「まだ10代か、若い」みたいに言われたんですけど、いざ20歳になって、10の位が変わると自分で「やべぇ」って思いました(笑)。別に若さを武器にしていたわけではないんですけど、ちゃんとした大人にならないとな、頑張らないとなと思います。
ーーどんな20代を過ごしたいですか?
碧 10代はキラキラしているとよく言うと思うんですけど、20代もそれに負けないぐらいキラキラした時間を過ごしていきたいですね。
もっと自分のいろいろな一面を引き出していきたいと思うので、いろいろな作品に出会いたいですし、そのひとつひとつのことを一生懸命に、丁寧にやって、着実に力をつけていきたいです。
ーーそういう意味だと『キッド・ヴィクトリー』は20代最初の作品としては良い挑戦ですね!
碧 はい。とってもすごくいいチャンスだなと思います。
ーー坂口さんはどうですか?
坂口 プライベート面では、大人っぽい趣味を見つけたいです。今は学生だから勉強もしなきゃいけないんですけど、自分の時間を有意義に使える大人に憧れているので。
お仕事の面では、俳優って、いろいろな職業になれるじゃないですか。警察官になったり、今回のように事件に巻き込まれる苦しい少年になったり。そこがすごく魅力だと思っています。年を重ねると、演じられる役幅も増えると思いますし、これからもいろいろな役に挑戦したいと思っています。
ーー今趣味の話が出ましたが、最近ハマっていることなどあればぜひ教えて下さい。
碧 最近、ラジオを聴くようになりました。深夜ラジオとか聴きますか?
坂口 あんまり聴かないんですけど、めっちゃ面白いんですよね?
碧 Creepy Nutsさんとかオードリーさんとか面白いです。深夜ラジオって、悪いことをしているわけではないんですけど、何かこそこそやっている感が楽しいんですよね。
坂口 僕はもともとピアノを弾くことがすごく好き。弾き始めたらずっと弾いていられます。あとこのコロナ禍でよくやっているのは、友達と電話をしながらゲームをやること!実際には会えていないんですけど、リモートでゲームをやって一緒に遊んでいました。
ーー最後に、楽しみにされているお客様とファンの皆様に一言お願いします!
碧 僕が演じるルークという主人公は、本当の自分を見失ってしまって、自分が別人になったような感じになってしまうんですね。それって、誰にでも起こりうることだなと思っていて。「本当の自分ってなんだろう?」と僕も今ルークと一緒で探してる最中なんですけど、
この作品を通じて、「本当の自分とは何か」を改めて考え直すきっかけになったら。
僕は全力でこの『キッド・ヴィクトリー』を一生懸命やって、見てくださった人に何かを届けられたら幸せです。頑張ります!
坂口 見どころは音楽です。メロディも美しいですし、そこに皆さんの歌が加わって、本当に見どころ満載なナンバーが多いです。
ストーリー自体は、ルークの視点で見ていただいてもいいですし、ルークと向き合う親の視点で観てもらってもいいと思うんです。いろいろなメッセージが隠されている作品で、男性女性、全ての年代の方に何かしらが刺さると思います。お客様に何か感じていただければいいなと思っています。頑張ります!
取材・文:五月女菜穂 撮影:源賀津己
オフ・ブロードウェイ ミュージカル 『キッド・ヴィクトリー』
Music&Book John Kander Lyrics&Book Greg Pierce
2021年12月15日(水) ~12月26日(日)
会場:東京・浅草九劇
チケット情報
https://w.pia.jp/t/kid-victory/
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