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舞台『千と千尋の神隠し』ダブルキャストインタビュー【千尋編】橋本環奈&上白石萌音

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インタビュー

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右から 橋本環奈、上白石萌音  撮影:川野結李歌

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宮﨑駿監督の不朽の名作『千と千尋の神隠し』が、『レ・ミゼラブル』など演劇史に残る名作を生み出してきたジョン・ケアードの翻案・演出によって、初めて舞台化される。主人公の千尋を演じるのは、今回が初舞台となる橋本環奈と、幅広く活躍し、放送中の朝ドラ『カムカムエヴリバディ』も話題の上白石萌音。世界中で愛される作品を演じる心境はいかなるものなのか。興奮の中にも真摯に向き合おうとするふたりの役者魂が見えてくる。

成長していく千尋と心を通わせて

──原作の映画『千と千尋の神隠し』を最初に観たときの思い出と、舞台化にあたって改めてご覧になった感想を聞かせてください。

橋本 最初に観たのは小学校1年生くらいです。それが人生で初めて観た映画だったと思うんですけど、小学校1年生では感じたことのない、いろんな感情になったことを覚えています。怖いけど何度も観たくなる。惹きつけられる。そんな魅力のある映画でした。そして今改めて観ても、その圧倒される気持ちは変わらなくて。どの年代でも惹かれる魅力があるんだなと改めて感じました。

上白石 私が最初に観たのは、忘れもしない7歳のときでした。恐ろしいけど引き込まれるものを感じたんでしょうね、おいおいと泣きながら最後まで観ていたそうです(笑)。本当に一度観たら忘れられない夢みたいな世界で、スケールが大きいんですけど、でも、油屋で働いている人たちはあくまで淡々としていて、日常をあっさり生きているみたいなギャップがあって。そこが面白いところなのかなと、何度も観ているうちに思ってきました。

舞台『千と千尋の神隠し』ビジュアル

──その世界にいる千尋の魅力や、今回演じるにあたってポイントにしたいと思うのは、どんなところでしょうか。

橋本 千尋があの世界の中でどんどん進んで成長していく姿っていうのは、観ていて応援したくなるんですよね。カッコいいし、かわいいし、いろんな要素があるなと思います。ただ、その中でもまずは、すべてを新鮮に感じていくことが大事だと思うんです。私自身も初舞台で何もかもが初めてというところで、千尋の気持ちとつながるのかなと思うので、千尋と心を通わせて、成長できたらいいなと思っています。そして、観に来てくださっている方にも、千尋と一緒に油屋の世界に飛び込む気持ちになってもらえるように、応援してもらえるように、千尋として生きたいです。

上白石 油屋の人たちがあの壮大な世界の中であっさり生きているように、千尋も怖がったり不思議がったり勇気を出したりしながらも、どこかさっぱりしているところがあるんですよね。そこが子どもならではの潔さなのかなと思ったりしているんですけど。それから、勘が鋭くて運がいい。一歩踏み外したら奈落の底に落ちるような階段も無事に降りきるし、奇跡みたいな選択ができる。それも何も考えずに一生懸命できることをやっているがゆえの、子どもならでは強さかなと思うので、すべてのキーポイントは、千尋が10歳であるというところにある気がしていて。だから私も、あの世界の一つひとつに驚いたり、一つひとつを信じたりしながら、とにかくまっすぐ演じることができればいいなと思います。

「10歳の時はケンカっ早い時期でした(笑)」(上白石)

──おふたりは、どんな10歳でしたか。

橋本 9歳になったときにお仕事を始めたので、もうお仕事をしていましたね。

上白石 あの有名な写真は何歳なの? 踊っていて髪がヒュンってなっている写真。

橋本 あれは14歳で、私は是枝裕和監督の『奇跡』で初めて映画に出たんですけど、そのオーディションを受けたのが10歳のときでした。

上白石 観に行きました!

橋本 ほんとですか!? あの映画は九州に新幹線が開通するときだったので、出演できたのがうれしかったのを覚えていますね(橋本は福岡県出身)。私はとにかくやんちゃな子で怖いもの知らずで、今も中身はあまり変わってないですけど(笑)、千尋は踏み出す勇気のある子なので、そこは似ているかなと思います。

上白石 私は10歳のときはメキシコに住んでいて、楽しい生き方を学んでいた時期でしたね。日本人学校に通っていたんですけど、同じ敷地内に現地校もあったので、一歩外に出たら現地の子どもたちがいて。当時はスペイン語も少しだけは話せていましたが、それ以上にわからなくても伝えたいみたいなガッツがすごくあって。人生の中で一番アクティブで気が強くてケンカっ早い時期でした(笑)。

橋本 ケンカするイメージがない(笑)。

上白石 すぐケンカしてたんです。正義感が強くて、例えばやんちゃな子がおとなしい女の子をからかったりしていたら、立ち上がって「人の気持ちがわからないの?」なんて言っちゃう、学級委員タイプでした。その後日本の中学校で思春期を迎えてすごく陰になったんですけど(笑)。あの頃は、勇気があって、私も何も怖くなくて無敵だと思っていたので、そういう意味では千尋と近いかもしれません。

「不安もあるけどここで怖気づいてはいけないと(笑)」(橋本)

──橋本さんは今回が初舞台です。舞台にはどういう思いを持っておられましたか。また、このタイミングで舞台に立つことになったのはなぜだったのか、教えてください。

橋本 これまでも、舞台というものが気持ちの中になかったわけではありませんでした。周りの役者さんで舞台に立っている人は、口を揃えて「舞台は楽しいよ。やったほうがいいよ」おっしゃいますから。しかもそう言っている顔がみんなイキイキしていて、それを見るたびにそんなに楽しいんだと思っていたんです。でも、観ている側としてはやっぱり、中途半端な気持ちで立てる場所ではないという思いが大きくて、そんなに簡単に「やりたい!」と言ってできるものではないんだろうと自戒するような気持でいたんですけど、そんなときにこの『千と千尋の神隠し』のお話をいただいて。これだけみんなから愛されている作品で千尋をやらせていただけるなんて光栄なことだし、こんな機会はないんだから、不安もありましたけど、ここで怖気づいてはけないと(笑)、挑戦しようと思ったんです。

上白石 舞台は楽しいよ(笑)。

──上白石さんは、ジョン・ケアード演出のミュージカル『ナイツ・テイル─騎士物語─』をはじめ、舞台には数多く立っておられます。その「舞台は楽しい」という思いを、詳しく聞かせてください。

上白石 私は舞台が一番好きなんですけど、考える時間も悩む時間もいっぱいあるのがいいなと思っています。1行の台詞に何日も何日も悩めるなんて、こんなに贅沢なことはないなと。そうやって日々脚本に向き合うことで自分の足りない部分がわかったり、もっとこうしたいという欲が出てきたりもしますし。

もちろん映像の瞬発力の楽しさもあるんですけど、舞台に出るたびにしっかり地に足が着く感覚があるんです。あと、毎日物語が始まって終わって、全部を生ききれるというのが好きです。しかも、同じ脚本で同じことをやっているのに一度も同じ舞台にならない。本当に生きている、お芝居をしているという感覚を毎日しびれるくらい味わえるのが、たまらなくて。たまにふっと我に返ったときに、なんでこんなに緊張することをしているんだろうと思うこともあるんですけど(笑)。でもやっぱり舞台は、小さいときから好きで、今も好きで、これからも一番好きだろうなと思っています。

すべてのことを驚きと新鮮さを持って受け止められるように

──初舞台の橋本さんには、楽しみなことや自分に期待したいことを、これまでも舞台に立ってこられた上白石さんには、この『千と千尋の神隠し』で自分の課題にしたいことを、教えていただければ。

橋本 まったく想像がつかないですけど(笑)、自分の新しい面を見つけられるのかなという気はしています。ひとつの役をこんなに長くやることも初めてですから、萌音ちゃんの言う悩める時間で、役を深く捉えていけたらなとも思いますし。ジョン・ケアードさんの演出も本当に楽しみです。『ナイツ・テイル』も拝見したんですけど、びっくり箱のようでした。盛り上がって感動するところもあれば、やさしい気持ちになって癒やされるところもあって、2時間とか3時間の間でいろんな感情が味わえて、本当に夢が詰まっているなと思いました。そんな場所で自分が千尋を演じられるなんて、楽しみしかないなと思っています。

上白石 私は、ジョンがよく言う「本当に初めてこの場で起きているように見せたい」という言葉が好きなんですけど、それってお芝居のすべてのような気がしていて。とくに千尋は、本当に初めての経験を重ねてちょっとずつ成長していくので、どれだけその場の空気や、起こっていることに素直に反応できるかがとても大切になってくると思うんです。大人の初めてと子どもの初めては違う気がしますし。本当にすべてのことに驚きと新鮮さを持って受け止められるように、やわらかくいられたらいいなと思っています。

──映画を繰り返し観るなど、準備をしていることはありますか。

橋本 もちろん映画は繰り返し観ています。でも、自分がやるとわかりつつ、結局楽しんで観てしまっていて(笑)。だけど、そうやって映画を観て自分が感じていることを忘れないで、大事にしていくのがいいんだろうなとは思っています。

上白石 準備だと思って観始めても最後は普通に泣いちゃうんです(笑)。ただ、このとき千尋はどんな表情をしているんだろうとか、千尋の顔を観るようになってはいます。言ってしまえば答えは映画にあるので、そこは大事にしたいなと思って。あと、繰り返し観てわかったのが、千尋はめちゃくちゃ身体能力が高いということ。動くし走るし、転んだら必ず足がエビ反りみたいになって起き上がるし。身体もやわらかいんです。

橋本 確かに(笑)!

上白石 だから、どんな動きを求められてもできるように、ストレッチと筋トレはやっておこうと思っています。

橋本 うわー、過酷だなぁ(笑)。

上白石 そう。きっと過酷だよ(笑)。



取材・文:大内弓子 撮影:川野結李歌
ヘアメイク:[橋本] 森本淳子(GON.) [上白石] 冨永朋子(allure)
スタイリスト:[橋本]鈴江英夫(株式会社H) [上白石]嶋岡隆、北村梓(Office Shimarl)



舞台『千と千尋の神隠し』
2022年3月2日(水)~2022年3月29日(火)
※プレビュー公演2月28日(月)~3月1日(火)
会場:東京・帝国劇場
大阪(4月)、福岡(5月)、北海道(6月)、愛知(6・7月)でも上演予定

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