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浦井健治×真彩希帆×熊谷彩春が語る、2年振りの再演となるミュージカル『笑う男』

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左から、『笑う男』出演の真彩希帆、浦井健治、熊谷彩春 撮影:川野結李歌

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2018年に韓国で世界初演され、19年4月に日生劇場にて日本初演を飾ったミュージカル『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』が、装いも新たに帝国劇場で再演される。

見せ物として口を裂かれ、醜悪な笑みを貼り付けられた主人公のグウィンプレン役は、初演から引き続き浦井健治が演じ、盲目のデア役は、真彩希帆と熊谷彩春がWキャストで挑む。この度、取材会が行われ、浦井、真彩、熊谷の3人に作品の魅力を語ってもらった。

温かい雰囲気のカンパニーで、出演者一人ひとりを起点に作品を作っていく

ーー全体での本読みで始まったということですが、今の時点で2022年版の『笑う男』はどうなりそうですか。手応えなどを教えてください。

浦井健治(以下、浦井) 初演でお客様にたくさん愛された作品が、帝国劇場バージョンとして花開くということで、みんな気合いを入れて挑んでいます。山口祐一郎さんや石川禅さんといった初演からご一緒させていただいている諸先輩方が本当に気を配ってくださって、みんなが過ごしやすい環境です。大船に乗った気持ちで、一人ひとりが役と作品に集中できているかなと思います。

今回新しく参加される大塚千弘さん、吉野圭吾さんも実力派ですし、本読みの時点で素晴らしいトライをしています。この段階で「これだけ役を膨らませるのか!」と思わせてくれています。(演出の)上田一豪さんも仰っていたのですが、この作品を今の時代に上演する意味をすごく考えさせられます。初演の時よりも悲しいかな、リアルに歌詞やセリフが響いてくる。ファンタジー色が強い作品ではありますが、このストーリーをみんなで素直に紡ぐことができたら、この物語が持つメッセージをお客様に届けることができるという確信があります。

真彩希帆(以下、真彩) 私は(宝塚歌劇団を)退団して、『笑う男』がミュージカル2作目となります。幼い頃から見ていた帝国劇場という大きな舞台に立つということが、自分の中でとても感慨深いものがあって、初めてご一緒する方々ばかりですが、稽古場がとても温かい空気で・・・。それが作品によるものなのか、ご本人たちの醸し出す空気なのか、まだ私には分からないんですけど、いいエネルギーだなぁと感じながら臨んでいます。これからお稽古が進むのがますます楽しみです。

熊谷彩春(以下、熊谷) 私にとっても、ほとんど初めましての方が多いカンパニーなのですが、最初の本読みから温かい雰囲気で。右も左も分からずワタワタしていた私を、浦井さんや、山口祐一郎さんをはじめとする大先輩方が本当に温かく包み込んでくださっています。私自身、デアと同じように周りの先輩方に助けていただきながら、今回この作品をお届けできたらなと思っています。

愛する人とは何があっても一緒にいたいと思うので、本当に大好きな作品(真彩)



ーー実力派で個性豊かなキャストが揃いましたよね。

浦井 本当に技術面も含めて演じるキャラクターが如何様にもなる、決め打ちではなくストーリーをきちんと咀嚼した上で役を作っていくというか、良い意味で余裕を持って稽古に挑まれている方が多いので、それが温かい空気感になっているのかなと思います。

……デア役のふたりの歌声は全く違うんです。でも、音楽監督さんの言葉が印象的で「歌唱についてはデアのふたりは何も言うことがない。あとは自分たちのキャラクターをどう作って、どんな歌声を届けるか。実力的には何の心配もしていない」と仰っていたんですよ。

真彩・熊谷 え~~~~~!

浦井 それぐらいの実力をお持ちで、グウィンプレン役を全うするにあたって、自分自身も刺激を受けているし、再び作品に飛び込めるきっかけをふたりにいただいている気がします。

ーー初演の時の思い出は?苦労された点と楽しかった点を教えてください。

浦井 先に苦労を言いますね(笑)。(音楽の)フランク・ワイルドホーンさんは聴いてくださるお客様は“ワイルドホーン節”というか、感動したり、すごいエネルギーをもらうことができたりする天才的な作曲家ですが、その楽曲を歌わせていただくという立場になると、相当な体力がいるんです。グウィンプレンは特にビッグナンバーが連続するので、力の配分を間違えると体力がもたない。それが初演時の反省点でした。今回はそれを含めて、楽曲の中でいかにお客様に物語を伝えるかを突き詰めていかなければならないと思っています。

(初演時の)楽しかったことは、この作品をやっているとキャスト全員がまさに“ウルシュス一座”になって、仲良くなるんです。みんなが「ああやったらどうだ」とか「こうやったらどうだ」とか、演劇を作り上げていく上で提案しあうことができた、とにかく立ち稽古が楽しかったですね。

ーー初演をご覧になられたという真彩さん。感想を教えてください。

真彩 大感動!大号泣!でした。ラストシーンを思い出すだけで胸がいっぱいになります。愛する人と一緒にいられることが一番幸せよね・・・と。美しくて、本当に大好きな作品です。

浦井 (初演に出演した)朝夏まなとさんに「そんなに泣いてどうしたの?」って言われていたよね(笑)

ーー熊谷さんは作品に対してどんな印象をお持ちですか?

熊谷 私は舞台『天保十二年のシェイクスピア』で浦井さんとご一緒させていただいたんですけど、そのときに『笑う男』のCDをいただいたんです。それで、本当にこの作品に恋に落ちてしまいました。何回も何回も聞いて、自分でも歌えるようになって、韓国版の動画も繰り返し見ていたので、まさか自分がデアとしてこの作品に関われるということが夢みたいで。出演が決まってからも「本当なのかな?」と思うほどなんですが(笑)、すごく美しい音楽に魅了されましたね。

コロナ禍の今だからこそ、人と人、心と心の繋がりを描く本作を観てほしい



ーー演じられるデアに対しては、現状、どんな印象を抱いていますか?

真彩 観客としてではなく、自分がデア役を演じるとなって、改めてこの作品をとらえた時に、人間の持つエネルギーの強さというか......人間の本質が見える人間って、なんて強くて美しいんだろうと思いました。大切なことは目に見えることじゃない、じゃあ、なんだろう?と。きっと答えは人によって違うと思います。私もその答えを自分が演じるデアを通して、浦井さんのグウィンプレンはじめ、皆さんと一緒に見つけていけたらいいなと思っています。

熊谷 見た目や富ではなく、中身や本質、心と心の繋がりこそが美しいということが、この作品のテーマだと思うんですけど、それを象徴しているのがデアではないかなと思って。目が見えなくて、心でものを見ることができるデアを、真っすぐに演じていけたらと思っています。

ーー浦井さんはグウィンプレンをどんな役だと思っていますか?

浦井 グウィンプレンは不器用なんですけど、物事に真っすぐに向き合うことができる若者だと思います。真っすぐだからこそ、周りの人を動かす力があったりする。口を裂かれて、化物として扱われて、本当に生きるのが辛いような状況下に置かれていますが、それでも真っすぐでいられるのは、もしかしたらデアに救われていたからなのかもしれません。同時にデアの境遇も本当に辛い状況なんですよね。吹雪の中で凍死している母親に抱きかかえられていた赤ん坊のデアを、口が裂かれてしまった少年グウィンプレンが見つけ、ウルシュスと出会って......。ヴィクトル・ユゴーが生み出した物語自体に感動を呼ぶ大きな力があると思います。

グウィンプレンがたどった道は、人生の縮図のような気がして、とにかく学びが多い役です。今回もグウィンプレンを演じさせていただくということで、さらに精進しなくてはいけないなと思います。楽曲は先ほど言った通り大変なのですが(笑)、何よりも物語をきちんとお客様に届けられるように頑張っていけたらなと思います。

ーー最後に、2022年の抱負も合わせつつ、観客の皆様に一言お願いします!

熊谷 コロナ禍で、人とのつながりがより大事だなと感じています。この作品は、家族や一座の心のつながりが繊細に描かれている素敵な作品。今、そばにいてくれる方々に感謝をしながら、私自身、2022年も精一杯頑張りたいと思いますし、観ていただくお客様には『笑う男』を通して、大切な人を想う温かい気持ちを感じていただけたらなと思っています。

真彩 私自身、人とのつながりというのは尊いものだと感じ、常に大切にしたいと思っています。2022年も、出会う方々一人ひとりと心で深くつながっていきたいですね。『笑う男』という作品に出会い、この作品のテーマをお届けすることが私の使命......というと堅いのですが(笑)。作品を楽しんでいただきつつ、みなさんの近くにいる大切な方ーー家族、パートナー、そして自分自身に対しても、温かい気持ちというものをずっと持ち続けて優しくありたいですね。と、そんな想いもお届けできたらいいなと思います。

浦井 劇中、グウィンプレンが口を隠して登場する時、表情が見えず、「この惨めな化け物」という見せ物でお金を得ている。今はコロナ禍で、お客様の表情が舞台からは見えません。当分マスク着用の上での観劇という日々は続くかもしれない。そして、様々な立場の人がいる状況の中で、貧富の差を感じる世の中かもしれない。このような時代に、この『笑う男』を上演させていただく。シンプルに「人間って、こう生きられたら幸せだよね」というメッセージが、この作品から問いかけられていると感じます。ミュージカルファンのお客様はもちろん、ミュージカルは初めての方でも劇場に足を運ぶのは怖いかもしれないけれど、感染予防の対策は徹底していますので、この時間だけは夢を見ていただけたら。ぜひ劇場に足を運んでいただけたらと思います。

取材・文:五月女菜穂
撮影:川野結李歌



ミュージカル『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』

日程・会場:
・東京公演
2月3日(木)~2月19日(土)
帝国劇場
・大阪公演
3月11日(金)~3月13日(日)
梅田芸術劇場メインホール
・福岡公演
3月18日(金)~3月28日(月)
博多座
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/warauotoko/

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