【おとな向け映画ガイド】
テニス界のレジェンド姉妹を育てた熱血パパをウィル・スミスが演じ、アカデミー賞最有力!『ドリームプラン』
今週末(2/18〜19)の映画公開は21本。うち全国100館以上で拡大公開される作品が『牛首村』『アンチャーテッド』『愛国女子ー紅武士道』『グッバイ、ドン・グリーズ!』『君が落とした青空』の5本。中規模公開、ミニシアター系が16本です。今回は、次週、2/23(水・祝) 公開の『ドリームプラン』をご紹介します。
テニス未経験の父がたてた仰天の計画
『ドリームプラン』
プロテニス界のスーパースターを描いた伝記映画なんですが、ちょっと視点が変わっています。スポットをあてたのは、そのお父さん。
演じるのは、ウィル・スミス。すでに、アメリカの映画賞ではビッグタイトルのひとつであるゴールデン・グローブ賞や、全米批評家が選ぶナショナル・ボード・オブ・レビューで主演男優賞を受賞。3月に発表の米アカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、本命視されています。
米女子プロテニス界で1990年代後半から10数年にわたりトップの座に君臨し続けた、ビーナス&セリーナ姉妹を育てた父親、リチャード・ウィリアムズが主人公です。さまざまな逸話の持ち主ですが、その最たるものは、テニスの試合をTVで観て、4万ドルの賞金を受け取るシーンに感動し、自分たちの娘をテニスプレイヤーにして大金を稼ぐことを思いつき、「ドリーム・プラン」なる78ページにわたる計画書を独学で研究して作ったという実話。テニスは未経験、しかも書いたのはビーナスが生まれる2年前です。ロスの貧困地区に移り住み、すでに3人の愛娘がいた彼は、黒人が人種差別を口で訴えずに、劣悪な環境を打破する方法は、スポーツだと考えたのです。
四女のビーナス、末っ子のセリーナが、ふたりあわせてグランドスラム30回優勝、ともにオリンピックのゴールドメダリストとなった今、パパは最高のアメリカン・ドリームの具現者ですが、まかりまちがうとアブない人でした。娘をスター選手にするために、最初は自分でコーチをし、周りをまきこみ、猪突猛進する。そのやり方に警鐘を鳴らすような人物には、執拗に反論する。見果てぬ夢、で終わらなかったドン・キ・ホーテです。その強引な生き方、狂信的なところもそのまま描いていますが、どこか愛せる、共感できるキャラクターなのは、家族への愛が彼の原動力だから。
古びたフォルクスワーゲンのミニバスに姉妹を乗せてテニスコートへ通う日々。そんなパパに家族が絶対の信頼をおく姿にも心打たれます。妻(演じているアーンジャニュー・エリスはアカデミー賞助演女優賞候補)は、まるで同志のように支え、3人の姉たちは、けなげにボール拾いを手伝います。この映画の製作総指揮に、長女で映画界の道に進んだイシャ・プライスが名をつらねていることも、このプラン達成に向かう苦難や家族の絆をよりリアリティのあるものにしているのでしょう。
こうして、ビーナス&セリーナは鮮烈なデビューを飾っていていくわけですが、練習風景、試合の再現も、驚くような迫力です。ビーナス役のサナイヤ・シドニー、セリーナ役のデミ・シングルトンのふたりは、猛特訓で撮影にのぞんだといいますが、代役も使った圧巻のプレイシーンには、心底引き込まれます。
ウイリアムズが妻と自分の力だけではこれ以上の娘の成長はないと考え、アポなしでプロのコーチを探し回るシーン、フロリダのリック・メイシーというという高名な指導者が運営するアカデミーのスパルタ教育、プロツアーで名前が出始めるとスポンサーがこぞってアプローチに来る姿。プロテニス界の教育システムや、スポーツビジネスの舞台裏もかなりのぞけます。
ビーナス&セリーナはともにいまだ現役。女子シングルスのグランドスラム制覇数は、1位がセリーナの23勝、2位はビーナスで7勝、3位が大坂なおみの4勝。2021年の全豪オープン・シングルスで、セリーナを破った大坂さん。彼女のパパは、ウィリアムズに影響を受け、娘をテニスの道に進ませた、といいます。
【ぴあ水先案内から】
笠井信輔さん(フリーアナウンサー)
「……アカデミー賞主演男優賞。あるぞ! 平均点確約のウィル作品の中で抜きん出たクオリティー……」
細谷美香さん(映画ライター)
「……ビーナス&セリーナ・ウィリアムズを一流選手に育てた父親が、ここまで型破りな人物だったとは!……」
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