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ぴあ 総合TOP > ぴあ映画 > 第1回:いま、ドキュメンタリーがアツい!「TBS DOCS」って何?

『人生クライマー~山野井泰史と垂直の世界〜』『ももいろクローバーZ~アイドルの向こう側~』
『完黙 中村喜四郎~逮捕と選挙』©️TBSテレビ

第1回:いま、ドキュメンタリーがアツい!「TBS DOCS」って何?

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数々の人気番組、ニュース番組を手がけるTBSが“テレビで伝えきれない真実”を映画で描いた作品を上映する「TBSドキュメンタリー映画祭 2022」が3月18日(金)に開幕する。上映される11作品は社会派作品や人物にじっくりと迫ったもの、エンターテインメント性の高い作品などバラエティ豊か。そのどれもが映画館でしか観られない、“観客に新たな発見”をもたらす傑作ばかりだ。

勉強になる、考えさせられる作品ばかりではなく、観ると自分の中に変化が起こる、観終わったあとには何だか元気になれる……そんな作品も揃う本映画祭は、全映画ファン必見のイベントになりそうだ。

なぜいまドキュメンタリー映画が人気を集めるのか?

『なぜ君は総理大臣になれないのか』(C)Netzgen

近年、ドキュメンタリー映画が話題にあがることが増えている。1969年に開催されるも歴史に埋もれていた音楽フェスを描いた『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』は圧倒的なステージ映像と当時の社会情勢を描いて高い評価を獲得し、映画の“音”に魅力にフォーカスした『ようこそ映画音響の世界へ』は口コミで人気を集め、全国100館近くの劇場で上映された。

なぜ君は総理大臣になれないのか』はコネも地盤もない香川県出身の政治家の活動を丁寧に追う作品でロングランヒットに。Netflixで配信された『オクトパスの神秘: 海の賢者は語る』は海中で暮らすタコの姿を通して、人生について考える異色作で、昨年のアカデミー長編ドキュメンタリー賞に輝いた。

近年のドキュメンタリー映画の最大の特徴は、ジャンルや扱う題材が幅広く、その語り口やタッチが多彩なことだ。扱うジャンルは政治や社会にとどまらず、料理やゲーム、学園生活、オモチャ、スポーツなどさまざま。

緊迫したシーンやインタビューを用いて重厚に見せる映画がある一方、口コミで多くの観客を集めた『パンケーキを毒見する』や、北米のドーナツ店のルーツを探る『ドーナツキング』のようにCGやアニメーションを駆使して優しく語りかけてくる映画もあり、映画館に足を運んだ人は「思ったより難しくなかった」「劇映画と同じように楽しめた」と語ることが多いようだ。

そもそも私たちは意識していないだけで毎日ドキュメンタリーに触れている。ニュース番組や情報番組の特集コーナー、タレントにドッキリを仕掛けたり、その反応を楽しむバラエティ番組、奇抜な企画に自らチャレンジするYoutuber……どれもが“ノンフィクション”で、私たちは筋書きのない展開を楽しんでいる。ドキュメンタリーは私たちにとって最も身近なジャンルだと言っていいのではないだろうか。

テレビやSNSを通じて抱えきれないほどの情報が流れ込んでくるも、情報量の多さゆえ、その多くが“通りすぎて”いってしまう現代。ドキュメンタリー映画はひとつの場所に腰を落ち着けて、じっくりと人物や事件やテーマに向き合うことができる最高の贅沢と言えるだろう。

“報道の雄”TBSがドキュメンタリー映画に挑む理由

1955年に開局したTBSはテレビ・ラジオを通じて様々な報道番組を手がけてきた。そんな中で制作された映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』が大ヒットし、社内で「ドキュメンタリーにはさらなる可能性があるのでは?」と企画され、スタートしたのが「TBSドキュメンタリー映画祭」だ。

本映画祭の上映作品はいずれもTBSで日々、ニュースや番組に向き合い、現場に足を運び、取材と制作を続けているスタッフたちが手がけている。彼らは365日休むことなく現場を追い、各地にパイプを築いているため、その取材力は抜群だ。

『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』 豊島圭介監督(右下)
(C)2020映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会/(C)SHINCHOSHA

さらに彼らは日々の膨大な量のニュースや番組を手がけているため、誰よりも“このニュースにはもっと伝えたいことがあるんだ”という気持ちや、“このニュースにはまだ続きがあるので紹介したい”という気持ちが強い。通常のニュース番組では「では次のニュースです」と切られてしまった“その後”の物語、短い映像では描ききれなかった貴重な映像や語り。それらを時間かけて集め、編集したのが今回の映画祭で上映される11作品になる。

ほとんどの作品がTBSの深夜番組「解放区」の映像が基になっているが、全作品、映画祭のためにさらなる取材や編集を行なった劇場版で、時間の都合で泣く泣くカットしてしまった場面、テレビでは表現できない部分、映画館のスクリーンに映えるシーンがふんだんに盛り込まれている。

毎日、カメラを回し続けてきたテレビ局員だからこそ描ける作品たちは、テレビ番組の枠組みを超えるものばかりで、このたびTBS DOCS(TBSドキュメンタリーの略)というブランドが誕生。この旗の下で様々な作品が公開されることになっている。

ドキュメンタリーは“難しく”ない! 誰もが楽しめる注目ポイント

『ももいろクローバーZ~アイドルの向こう側~』©️TBSテレビ

とは言え、ドキュメンタリー映画になじみのない方の中には「ドキュメンタリーはなんだか難しそう」「予備知識がないと楽しめないのでは?」と思っている方も多いのではないだろうか?

本映画祭では様々なジャンルの作品が集結しており、政治や事件だけでなく、エンタメ、人物など様々なタイプの作品を楽しむことができる。さらにどの映画も中心にあるのは、誰もが興味のある題材や普遍的な人間ドラマ、ドキドキするようなサスペンスフルな展開、思わず胸が熱くなる展開なのだ。

例えば『人生クライマー~山野井泰史と垂直の世界〜』で描かれるのは、ひとりのクライマー山野井泰史の姿。彼は登山界で最高の栄誉といわれるピオレドール生涯功労賞に輝くが、さらに未踏の岸壁に挑もうとする。なぜ、この男はここまで山に、巨壁に、垂直の世界に魅了されるのか? 一級の人間ドラマと、スクリーン一面に広がる、恐ろしくも美しい白銀の世界を楽しめる。

『人生クライマー~山野井泰史と垂直の世界〜』©️TBSテレビ

どんなドラマにも挫折や苦境はつきもの。人はそこから立ちあがろうとする登場人物たちに魅了されてきた。かつて記者時代には“国会王子”と呼ばれ人気を博した武田一顯が松原由昌と共に追うのは初出馬から40年に渡って当選を続けるも、初めて選挙に敗れた男。『完黙 中村喜四郎~逮捕と選挙』では数々の逆境を乗り越えてきた不屈の政治家・中村喜四郎の生き様を追う作品で、作品の中でいくつもの“なぜ”が描かれ、カメラはその謎に迫る。

『ももいろクローバーZ~アイドルの向こう側~』は大人気のアイドル・ももいろクローバーZのドキュメンタリー。これまでもアイドルの活動に迫った作品はたくさんあるが、本作では年齢を重ね、まだ誰も足を踏み入れていない領域を目指す4人の女性の姿、その葛藤、目指す場所を描き出していく。ファンはもちろんだが、彼女たちのことを詳しく知らない人でも、胸に迫るものが感じられる内容になっている。

どの作品も題材は違うが、いずれも人間、その人が生きる社会、つまり私たちが暮らしている日常と地続きの世界を描いたものばかりで、題材になじみがない、その存在を知らない作品の方が逆に大きな発見や意外な共感を味新たなあらわえるのではないだろうか。



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