
TBS DOCS特集第2回:いまの若者が語るドキュメンタリーの魅力
今回は同じ大学の映像ゼミ出身で、現在は教育と映像の研究を行なっているダイキ(仮名)さん、IT企業の営業職をしているひとみ(仮名)さん、エンタメ業界の広告営業をしているしおり(仮名)さんに参加いただき、座談会を実施!
多い時は週3回ぐらいドキュメンタリーをテレビで見ると語るダイキさん。一方、これまでドキュメンタリーはほとんど見てこなかったと語るドキュメンタリー初心者のしおりさんとひとみさん。そんな彼らにTBSドキュメンタリー映画祭 2022上映作品の中で“推し作品”を事前に見てもらい、20 代のリアルな反応を調査! 見終わったあとに感じた変化とは──?「ドキュメンタリーって本当に面白いの?」に迫ります。
大人になるのってすごくいいなと思った(ダイキさん)
女性の新しい価値観がももクロによって普及されるといいな(ひとみさん)

── ドキュメンタリー好きなダイキさんは“推し作品”として『ももいろクローバーZ ~アイドルの向こう側~』を挙げていただきましたが、なぜこの作品を見てみたいと思ったんでしょう? やはりももクロのファンだからとかですか?
ダイキさん 僕は“モノノフ”ではないんですが唯一、生で見たことがあるアイドルがももクロで。普段から彼女たちを追いかけているわけではないけど、気になる存在ではあったので今回の映画祭のラインナップを見たときに「ももクロっていまどうなんだろう?」っていう興味があって選びました。
ひとみさん 私も実は見ました! 私自身、ももクロが好きということもあるんですが、自分でも結構「女性って何歳まで女の子でいられるんだろう?」というこの映画のテーマにも近いことを普段考えるので、その意見を知りたいなと思って見てみました。
── 20代前半でそういうことをもう既に意識されているんですか?
ひとみさん そうですね(笑)。なんなら高校生ぐらいからずっと……。
ダイキさん そうなの!?
しおりさん ゼミに入る理由ヤバかったよね?
ひとみさん ゼミに入るときに、「将来の夢は?」という質問があって、それに対してみんなは職業を答えていたのに対し、私は「お嫁さんになりたい」と答えていて、そういうテーマについて普段から考えていたんです(笑)。

── 実際見てみてどうでした?
ひとみさん 日本って若い女性ほど価値があって、歳をとっていくとともに価値がなくなっていくみたいな価値観がちょっとあるのかなと思って。アメリカとかフランスとか欧米に比べて、特に日本とか韓国、アジア系は若干そういう価値観があるのかなって。
特に日本のアイドルはそれを象徴していると思います。ほかのアイドルグループは新しい子がどんどん入ってきて歳をとったら卒業というかたちが当たり前だけど、ももクロは新メンバーの追加もなくずっと活動を続けてきているという新しいアイドル。
私がこれを見て思ったのは、ももクロが30代になってもアイドル活動を続けられていて、なおかつ人気があるということを維持していただくことで、日本でも女性は歳を重ねても価値が薄れないというような価値観がももクロによって普及されるといいなぁと思いました。

── ダイキさんはどうでした?
ダイキさん 僕は男性ですが女性に見て欲しいなと感じました。やっぱりかわいいのでずっと見ていられる、見やすいドキュメンタリーなんで楽しいんですけど、タイトルからは想像できないぐらいももクロがキャリアについて考えているんだなっていうのが分かって面白かったです。プロ意識が想像を超えていて、いまこういう風に考えているんだっていうのが知れて本当にいい機会でした。
それと、ももクロメンバー全員が生き生きしていて、男性目線から見ても「大人になるのってすごくいいな」と感じましたね。歳をとっていけばその先にどんどんまた別のステージがあって、次のステージに行ってもまた別のステージがあると彼女たちが見据えているからこそ、僕もまだ次のステージがあるんだなって感じられましたね。
悲しみで自分の殻に閉じこもるのではなく、
外に広げていく萌々花さんの考え方に勇気をもらった!(しおりさん)
── 続いてしおりさんは、難病と闘う女性自らがカメラを回して記録された『だから私は前を向く 萌々花20歳』を選んでいただきましが、なぜこの作品を選ばれたのでしょうか?
しおりさん ふたつ理由があるんですが、まずはこのサムネール写真を見たときに、パッと目にいったのがこの萌々花さんの写真で、すごく笑顔だったので前向きになれる作品なのかなと思って選んだのと、ふたつ目は、カメラマンが密着したドキュメンタリーは見たことがあったんですが、自分でカメラを回してっていうのは見たことがなかったんで、萌々花さん目線の生活の様子だったり、萌々花さんの周りにいる人たちとか、自分でカメラを回すからこそ言えるような感情を知りたいなと思って選びました。

── しおりさんも萌々花さんと年齢も近くて感じることは結構あったのではないでしょうか?
しおりさん そうですね。つらいにも関わらず、それを受け入れて逃げないで前を向き続けている姿がすごくて、勇気をもらいました。
萌々花さんは出来ないことは出来なくてしょうがないって思うけど、なんでも挑戦するスタンスは守っていて、それでやってきたことを同じ境遇の子たちに伝えていくとか、もっと多くの人に伝えていくとか、悲しみで自分の殻に閉じこもるのではなく、外に広げていくっていう考え方が素晴らしいなって思いました。
それと、類は友を呼ぶじゃないですけど、芯の強い、萌々花さんを萌々花さんとして見てくれるような人たちが周りにいて素敵だなと思いました。

── 普段あまりドキュメンタリーを見ないとおっしゃっていましたが、今回見てみてどうでしたか?
しおりさん 普段作品を選ぶときは、見やすそうかで選ぶんですが、この作品も同世代の女の子の話だったので、とても入っていきやすかったです。
自分と少しでも繋がりがある作品は気になるので、『ライブで歓声が聞こえる日 コロナ禍に抗う音楽業界』も観たいですね。

私はエンタメ業界で働いているので、一番自分に近いというか、音楽ライブも行きますし、会社に入ってコロナでライブが中止になったという話もいっぱいあって自分に身近な話だったので、音楽関係者側のドキュメンタリーの話を見てみたいなって思います。
悲劇を繰り返さないためには
まず知ることが必要だなと思いました(ひとみさん)

── 続いてひとみさん、地下鉄サリン事件で重い障がいを負った被害者とその家族を描いた『さっちゃん最後のメッセージ 地下鉄サリン被害者家族の25年』を選んでいただきましが、なぜこの作品を選ばれたのでしょうか?
ひとみさん 「家族みんなで支えていたことが、さっちゃんにとって本当に幸せだったのだろうか。辛い辛いで生きていたのではないだろうか」という紹介文を見て、自分の祖父だったり親だったりの介護に繋がる部分があるなと感じて。
実は私の母が、意思疎通がうまくできない祖父に対しての介護をどうするかですごく悩んでいる時期があって、私もそれで一緒に考えていた時期があったので、これを見て参考になるんじゃないかというのがあって見てみました。
── ちなみに地下鉄サリン事件は知っていましたか?
ひとみさん はい。ただ当時は生まれてはないので、大人になってニュースとかで知りました。

── 作品を見てみてどうでした?
ひとみさん 地下鉄サリン事件の簡単な概要は知っていたんですけど、実際の報道当時の映像とかオウム真理教の映像とか見たことない映像ばかりで……。被害者の被害に遭った瞬間の映像とか見るのが初めてだったので最初の印象としてはすごく衝撃的で、こんなことがあっていいのかって思いました。
さっちゃんが頭の中で思うことがあってもそれをうまく伝えられないもどかしさはあったと思うんですけど、さっちゃんが頑張って表現している時にお兄さんが毎回「これはこう言っています」って説明をしていて、ちゃんと汲み取れていて。さっちゃんに「そうでしょ?」って聞くと「そうだよ」って、意思疎通ができているのがすごいなって思いましたね。

サリン事件みたいな残虐な事件ってほかにもあると思うんですけど、この作品を見て思ったのは、特に私たち世代とかもっと若い世代ってうっすら知っていても詳細は知らないっていうことってあるあるだなと思って。こういう細部まで知ることでこういうことを繰り返したら絶対ダメだと改めて感じたし、繰り返さないためには事件についてまず知ることが必要だなと思いましたね。
ドキュメンタリーの魅力は想像力が豊かになり、
普段経験できないようなことが疑似体験できること!

── ひとみさんもドキュメンタリーは普段ほとんど観ないとおっしゃっていましたが、今回見てどうでした?
ひとみさん 難しくなくて面白かったです。
── 自分との接点を見つけて、入っていきやすかったってことでしょうか?
ひとみさん 当事者の目線になった映像というか、当事者視点でのストーリー仕立てになっているので、感情移入がしやすくすっと入ってきました。
── ドキュメンタリー好きなダイキさんは改めてドキュメンタリーの魅力は何だと思いますか?
ダイキさん 人生100年時代って言われますが、その中でも経験できないようなことがドキュメンタリーを通して疑似体験できるところだと思います。いろんな人と関わる上で、想像力を働かせることは大事だと思うんで、普段から見ているっていうのはありますね。ドラマも好きですが、あくまでフィクションと感じてしまうとこがあるんですけど、その点ドキュメンタリーは“被写体が本当に体験した物語”なのでより共感しやすいです。
しおりさん 確かに!
ひとみさん 疑似体験できるっていうのはほんとにそうだなと思います! 今回見て、いろんな人の人生をのぞき見しているような感覚になれたのでドキュメンタリーっていいな、もっと見てみたいって思いました!
TBSドキュメンタリー映画祭 2022
3月18日(金)〜3月24日(木)ヒューマントラストシネマ渋谷にて開催ほか全国順次開催
上映スケジュールはこちら
チケット情報はこちら
アンバサダーによるトークショー詳細
3月18日(金)19:00~19:30予定
トラウデン直美×須賀川拓監督(オンラインにて)
ヒューマントラストシネマ渋谷にて『戦争の狂気 中東特派員が見たガザ紛争の現実』上映後、キックオフ舞台挨拶イベント実施予定
【臨場感MAX!の生配信トークイベント開催決定!】
3月18日(金)21:30~ 須賀川監督×トラウデン直美によるトークイベントをこちらにて生配信!
映画のこと、世界のこと生トーク!アナタも #須賀川監督に聞きたい を付けて質問ツイートしよう!
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