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小松菜奈と坂口健太郎が生きた10年間「全員が命と向き合って戦った時間だった」

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『余命10年』 坂口健太郎、小松菜奈

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ひとりの人生の生きた証を育てたい

ただあなたがそこにいる。それだけで、世界がいとおしい。

そんな人を愛する尊さをかみしめる映画が誕生した。3月4日(金)公開の映画『余命10年』は、数万人にひとりの難病を患い、余命10年となった女性と、生きる希望を失った男性のラブストーリー。難病と戦い、若くしてこの世を去った小坂流加さんの同名小説を原作に、藤井道人がメガホンをとった。

主人公・茉莉を演じるのは、小松菜奈。役づくりにあたって、小坂流加さんのご家族とも話をしたと言う。

「小坂流加さんがどんな方だったのか、どんなふうに小説を書いて、どういうことが好きだったか、そういうことを聞かせていただきました。中でも印象的だったのは、小坂流加さんは何かをしてもらったら『ありがとう』とちゃんと伝える人だったという話です。あとは、食事に関しても自分で塩分調節をしたり、病気についても自分で調べて、それをファイルにまとめて、どこに何があるのかもしっかり把握されていた。人として自立していて、自分の身の回りのことは自分でする人だったとおっしゃっていました」(小松)

そうした小坂流加さんのことをよく知る人からの言葉は、茉莉を生きる上で血となり肉となった。

「原作には、闘病中だった小坂流加さんの叶えたかった願いが込められていたように感じる部分もあった。それを、映画にすることで少しでも叶えたいという気持ちがありました。闘病のお話となると、どうしても悲観的な印象を持たれてしまうと思うんですが、このお話はそうじゃない。和人と出会って茉莉の中に生きる意味が芽生えていく。ひとりの人生の生きた証をちゃんとこの映画で育てたいなと思いながら演じていました」(小松)

茉莉と出会う青年・和人を演じるのが、坂口健太郎だ。

「茉莉が抱えていたものを和人が知るのは物語の結構後半の方で。極端な言い方をすると、そこまでの和人はただ茉莉に愛情を向けていられたらそれだけでいいという役なんです。でもそれってすごくシンプルなようで、とても大事なことで。和人がどういうふうに茉莉を見ていたかで作品の出来が変わってくる。茉莉を見つめる眼差しは大事にしたいなと思っていました」(坂口)

だからこそ、和人が真実を知る場面は、坂口にとっても重要だった。

「どんな気持ちになるんだろうって。ずっと何も知らなかった和人が茉莉から病気のことを打ち明けられる。そのときの感情のぶれは自分でもやってみるまではわからないだろうなと思った。だからこそ、その場面に至るまでの2人の時間を大事にしようと思ったし、そこで和人が茉莉をどう愛するかということをいつも心に置いていました」(坂口)

別の作品に入っているときも、茉莉の存在を心の隅に置いていた

撮影は、約1年にわたって行われた。春夏秋冬。4つの季節をまたいで役を生きたことは、2人にとって特別な経験となった。

「1年通して季節を追っていくことで、夏にあった思い出が自分の中に記憶として焼き付いている。それがその後の楽しいシーンや悲しいシーンを演じているときにふっとよぎってきて、ちゃんと時が経ったんだと感じることができました」(小松)

1年という時間を共に過ごすことで、現場の距離感もぐっと縮まった。

「カメラと演者の距離感も全然違うんです。距離が縮まることで、ぐっとカメラが近づいてきたときに、自分の中で計画していたものがいい意味で全部崩されていくような感覚があったんです。何より初めて会ったときから撮影が終わるそのときまで、全員が同じ方向を向いてやれたことが幸せだなと思いました。全員が命と向き合って、それぞれの場所でまっすぐ戦ってきたからこそ、こういう作品をつくれたんだと思います」(小松)

坂口も、同時にいくつかの作品を並行して撮影しながらも、常に心の中にこの『余命10年』があったと証言する。

「別の作品に入っているときも、茉莉という存在を心の隅に置いておいたような感じはありました。1年という時間があった分、現場から離れているときにも作品について考えることができた。最初に台本を読んで瞬間的に『こういう言い回しなのかな?』と思っていたところが、ゆっくり考える時間をとれることで、こういう言い方もあるし、こういう解釈もあると頭の中で整理できたのは、すごく贅沢だったなと思います」(坂口)

そして、くすぐったそうに頬をほころばせ、坂口はこう付け加えた。

「少し時間があいて、またこの『余命10年』の現場に戻ったときに、久しぶりに会うんだけど、なんだか帰ってきたなという感覚があったんです。それはきっと藤井組の特色でもあると思うんですけど、すごくうれしかった。やり方によっては、2ヶ月でこの作品を撮ることもできたと思う。でも、そしたらまったく違う作品になっていただろうし。1年という時間をかけたからこそ撮れたものが映画の中に映っている気がします」(坂口)

坂口さんは、人を愛する気持ちを目で伝えられる人

茉莉と和人。ただふたりがそこにいるだけで、時にせつなさがこみ上げ、時に優しい気持ちになる。特別な関係を築き上げたふたりは、お互いの演技をどう見ていたのだろうか。

「ラストに、風がばっと吹いて桜が舞い散るシーンがあるんですけど、そこの坂口さんのお芝居を私も現場で見ていたんですね。あのときの和人の表情だけで、茉莉と和人が過ごした時間が浮かんできて感動しました。坂口さんは人を愛するという繊細な気持ちを目で伝えられる人。その目には力強さもあれば危うさもあって。和人がどんどん成長していく姿が、グラデーションのように映し出されている。ちゃんと10年生きたんだということを、言葉じゃないところで伝えられるお芝居に惹き込まれました」(小松)

「茉莉は、いとしい人に伝えなきゃいけないことを伝えきれない、だけどそれでも一緒にいたいという、複雑な感情が混ざり合ったお芝居をずっと要求される役。命がけで茉莉と向き合っているさまを見ていると、『大丈夫だよ』と肩に手を置いてあげたくなる瞬間もあったんですね。でも、茉莉を演じるには、それが100%正解で。ちょっと大げさかもしれないですけど、命を削りながらやらなきゃいけない役なんですよ。そんなふうにひとつの役を生き切るさまを近くで見させてもらったことは、僕にとっても宝物のような時間でした」(坂口)

長いような、短いような、10年という時間。最後に、小松と坂口の「10年前」を聞いてみた。

「10年前ということは20歳。俺はめちゃくちゃだったな。今ちゃんとしているかと言ったらわからないけど(笑)」(坂口)

「ちゃんとしてるよ(笑)」(小松)

「ありがとう(照)。10年前は、周りの友達は就職とか考えはじめる時期で。でも僕は就活もしてなかったし、自分の将来なんて何も決めないまま、わりとだらだら惰性のように生きていたというか。30歳でこんなふうにやっているなんてまったく想像していなかったし、かけらも思っていなかった。人生設計というものとまったく縁のない頃ですね」(坂口)

「私もこの道に行くとは本当に思っていませんでした。むしろ苦手というか、向いていないなと思っていました。まだ学生だったので、毎日学校に通って、勉強して、友達と遊んで、帰り道に甘いもの食べて、そういうごく普通の生活を過ごしていて。そこから、お芝居と出会って、今もこうやって続けさせていただけているなんて不思議だなと思います。つくづく人生は出会いがすべて。出会いによって、いろんなことが変わる。逆に言うと、何が起こるかわからないから人生は楽しいなと思います」(小松)

ただ漫然と生きていると、自分の人生に終わりが来る日なんて、まるで想像もできない。でも、命には限りがあると気づいたとき、ありきたりと思っていた何気ない風景までもが輝いて見える。平凡こそが、美しい。ただそこにあるものが、何よりかけがけのないものなのだ。

『余命10年』が、そんな日々の眩しさを教えてくれた。

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撮影/奥田耕平、取材・文/横川良明、(小松)ヘアメイク/小澤麻衣(mod's hair)スタイリング/遠藤彩香、(坂口)ヘアメイク/廣瀬瑠美、スタイリング/壽村太一

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