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シリーズ第1作の彩色画全点を日本初公開 『出版120周年 ピーターラビット(TM)展』世田谷美術館で開幕

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第2章「ピーターラビットのおはなし」展示風景より

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1902年にシリーズ最初の絵本『ピーターラビットのおはなし』が刊行されてから今年で120周年。そのメモリアルイヤーを記念した展覧会『出版120周年 ピーターラビット(TM)展』が3月26日(土)、世田谷美術館にて開幕した。

会場入口。同展のサポーター、および音声ガイドのナビゲーターは俳優の松下洸平が務めている

ビアトリクス・ポター(TM)が生み出した、イギリスの美しい田園風景を舞台に繰り広げられるいたずら好きなうさぎピーターの物語「ピーターラビット(TM)」シリーズ。同展では、出版後、瞬く間に大ヒットとなり、今なお世界中で愛され続けている人気シリーズの誕生前夜から現在に至るまでの歩みを全4章で紹介していく。

第1章展示風景より。ビアトリクス・ポターと家族の写真など

1866年、ロンドンの裕福な家庭に生まれたビアトリクス・ポターは、幼い頃から絵を描くことが大好きで、小動物にも興味を持ち、子供部屋にこっそり持ち込んだハツカネズミやコウモリ、トカゲなどを熱心に描いていた。本格的にウサギを描くようになったのは22歳のとき。ペットショップで雄ウサギを購入したビアトリクスは、ベンジャミン・バウンサーと名付け、ベンジャミンをモデルにたくさんの水彩画やスケッチを描いた。第1章「ピーターラビット誕生以前」では、作者ビアトリクス・ポターが「ピーターラビット」の誕生以前に挿絵画家として描いていた作品の原画や習作などを紹介していく。

左:《ウサギの頭部習作》1890年、右:《ウサギの頭部習作》1890年頃 いずれもモデルはベンジャミン・バウンサー
左:《横たわるウサギの習作》1890年頃 右:《庭の野ウサギ》1892年 

1892年、ベンジャミンが死んでしまうと、その寂しさを埋めるために再び雄ウサギを購入する。ウサギの名前はピーター・パイパー。ビアトリクスはピーターをモデルにウサギのスケッチや水彩を再び描くようになる。第2章「ピーターラビットのおはなし」では、シリーズ誕生のきっかけとなった、ビアトリクスが元家庭教師の息子ノエル宛に描いた絵手紙を展示。病気で療養中のノエルへのお見舞いとして送られたこの絵手紙には、ピーターら4匹の子ウサギの物語が17点の線描画と文章で8ページにわたって展開している。この絵手紙の原本が公開されるのは、日本では初めてのことだ。

手前:《ノエル・ムーア宛ての絵手紙》1893年9月4日付

1900年、この絵手紙を絵本として出版することをすすめられたビアトリクスは出版社に売り込むが、なかなかうまくいかず、まずは自費で出版しようと1901年に私家版を出版。その後、挿絵に着色するなどの改定が行われ、1902年ついに『ピーターラビットのおはなし』の初版が発売となる。会場では私家版の初版や2刷も展示されている。

左から私家版『ピーターラビットのおはなし』初刷 1901年、私家版『ピーターラビットのおはなし』2刷 1902年、私家版『ピーターラビットのおはなし』ファクシミリ版 1993年(絵手紙100周年記念版として出版されたもの)

そして、この展覧会のメインとなるのが『ピーターラビットのおはなし』の彩色画の展示だ。出版社であるフレデリック・ウォーン社の意向により、初版時には採用されなかった原画なども含め、ビアトリクスの当初の構想に基づいた形で全点が展示されている。小さなサイズだが、やわらかな色づかいで丁寧に彩色された水彩画で、『ピーターラビットのおはなし』の世界を改めてじっくりとたどり、味わうことができる。

第3章展示風景より
第3章展示風景より
『ピーターラビットのおはなし』挿絵原画

同展の監修を務めた大東文化大学教授の河野芳英さんは、「ピーターラビット」の魅力についてこう語る。
「(絵については)ウサギの表情や動きをデフォルメしていないところですね。びっくりした様子を表すためには後ろ姿でそれを表現したり、もしウサギが2本足で立って、走るとしたらこう走るだろうというところを博物学的な目で描いている。もうひとつこの作品のおもしろいところは“行きて帰りし物語”であるということ。絵本というのはだいたいハッピーエンドが多いんですけど、曖昧な形で終わるんですよね。純文学もそうなんですけど、行って帰って、まだまだ人生は続くんだよ、みたいな。つまり何回読んでも飽きないんですよね。そんなところが魅力なんじゃないかなと思います」

同展監修を担当した大東文化大学教授の河野芳英さん

続く第3章「ピーターラビットと仲間たち」では、全23冊出版されている「ピーターラビット」シリーズから、『ベンジャミン・バニーのおはなし』『はりねずみティギーのおはなし』『フロプシーのこどもたち』などピーターラビットが登場する作品の草稿や原本などが展示されている。第4章「広がるピーターラビットの世界」では、絵本のキャラクターを商品化するための特許を取得した最初の人物ともいわれるビアトリクスが考案したさまざまなグッズや日本での展開などについても紹介。展示の最後は、イギリス湖水地方にあるテーマパーク「The World of Beatrix Potter Attraction」が同展のために特別に制作した特大のバースデイ・ケーキで締めくくられる。

左:『ジンジャーとピクルスのおはなし』初版 1909年 右:『きつねのトッドのおはなし』初版 1912年
第3章展示風景より
第4章展示風景より ビアトリクスが監修したグッズなど
第4章展示風景より

かわいい動物たちの物語を描くことと並行し、農場経営を通してイギリスの湖水地方の景観を守る自然保護活動にも情熱を注いだビアトリクス・ポター。美しい自然や動物たちを愛し、守り続けたビアトリクスが生み出し、今なお多くの人に愛され、影響を与え続けている「ピーターラビット」の作品世界にたっぷりと浸ってみてほしい。

PETER RABBIT(TM) & BEATRIX POTTER(TM)(C) Frederick Warne & Co., 2022

【開催情報】
『出版120周年 ピーターラビット(TM)展』
3月26日(土)~6月19日(日)、世田谷美術館にて開催
https://peter120.exhibit.jp/

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