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田中哲司、大森南朋、赤堀雅秋の演劇ユニット第3弾。門脇麦、荒川良々をゲストに迎えて、“ケダモノ”を描く

ぴあ

左から、赤堀雅秋・田中哲司・大森南朋・門脇麦・荒川良々 撮影:近藤誠司

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約6年前に誕生し、第1弾『同じ夢』、第2弾『神の子』を上演してきた、田中哲司、大森南朋、赤堀雅秋の演劇ユニット。『ケダモノ』と題する約2年半ぶりとなる第3弾には、門脇麦と荒川良々が参加する。独自のユーモアを交えながら人間の奥底を描き出す赤堀作品の魅力がさらに濃く刻まれそうな本作で、それぞれの俳優たちも、テレビでは観ることができない魅力を爆発させそうだ。

一緒にゼロから真摯にものが作れる幸せな場

──田中哲司さん、大森南朋さん、赤堀雅秋さんの演劇ユニットの上演が第3弾を迎えました。お三方の今の思いを聞かせてください。

赤堀 とても幸せです。今、脚本の執筆が遅れていて、各所にご迷惑をかけているので、そんな牧歌的なことを言っている場合ではないのですが(笑)。でも、一緒にゼロから真摯にものが作れる、そういう幸せな環境があることは、やはりとてもありがたいです。

『ケダモノ』メインビジュアル

田中 僕にとっても赤堀作品に参加するのは楽しみでしかないんです。同じ舞台でも、原作があったり難解な作品もあるなかで赤堀くんの本はスッとその世界に馴染める。だからすごく楽しくて、それが3回も続けられるというのは嬉しい限りです。

大森 3回もやれるっていうのがまずありがたいです。ただ、自分の中ではなんとなく、すでに習慣化してきている感じはありまして。2回目の公演後、次もあるだろうなと体がもう待っていたので。まだどうなるかわからないことが多いですが、来たものに集中してやっていければなと思っています。

──そして、第3弾にゲストとして出演される門脇麦さんと荒川良々さん。どんなお気持ちでいらっしゃいますか。

門脇 赤堀さんとはいつかご一緒したいと思っていたんです。でも、これはどなたとご一緒するときにも言えることだと思うのですが、どのタイミングで何をやるかというのは運命というか巡り合わせだと思っていて。そういう意味では、第1弾と第2弾を拝見したときから、皆さんのやりたいことができる空間なんだろうなと感じていたので、このユニットに参加できるのは、すごく素敵なタイミングでお声がけいただけたなと思っています。

荒川 僕は、「ようやくきたか」という思いですね(笑)。というのも、赤堀さんとは前から付き合いもありましたし、1回目も2回目も知っている人が出ていましたから、「あれ? なんで俺は呼ばれないんだ。いつ呼んでくれるんだ」と思っていたんです。

佇まいに、内側から漏れてくる雰囲気がある役者陣

──赤堀さんにお聞きしますが、今回、門脇さんと荒川さんにお声がけされた理由は?

赤堀 まずおふたりとも、単純に魅力的な役者さんだなと思っていて。門脇さんも、語弊があるかもしれませんが、演技がどうこうではなく、もう佇まいに、内側から漏れてくる雰囲気がある。あと、顔が好きなんです。なんか面白い顔をしているなと思って、以前からご一緒できたらと思っていたので、今回念願が叶いました。そして、荒川くんはもう長い付き合いで。言わずもがなで面白いですし、いてくれたら本当に助かるなという存在です。

──田中さん、大森さん、門脇さん、荒川さんにも、お互いの印象や、共演するにあたって楽しみなところをお話いただければ。

田中 まず大森くんは、いてくれるだけで安心して芝居ができるんです。

大森 それは僕も同じです。哲司さんと、こうやって舞台を定期的にやらせていただいて、本当に楽しいですし、頼もしいなと改めて感じています。プライベートでも頼りにさせてもらっています。

田中 こちらこそです。あと、麦ちゃんは、映像で何度か一緒になってますがまだ底が見えないような気がしているので、どんな顔を見せてくれるのかなと、絡めるのがすごく楽しみです。

大森 僕は麦ちゃんとは初めて共演させてもらうんですけど、若いのに先輩たちをあまり許してくれなさそうな感じが出ていて(笑)、そこがいいなと思っています。

荒川 僕は門脇さんとはチラシ撮影で初めてお会いしたんですけど、映像や舞台の作品をいろいろ観ているので、楽しみしかないです。

田中 良々とは、『ワニを素手でつかまえる方法』(2004年)以来?

荒川 そうですね。20年ぶりくらい。

田中 コロナ禍以前は普段から一緒に飲んだりしていたので、そんなに久しぶりだったとは思えないんだけど、久々にできるのが楽しみです。

大森 僕は荒川くんとは、岩松了さんの『恋する妊婦』(2008年)以来。あのとき毎日ネギで頭を引っ叩いていた仲なので(笑)、久々に一緒にやれるのが楽しみです。

門脇 私はそれこそ哲司さんとは映像でちょこっと共演させていただいていますが、皆さん初めてで。普段はわりと同世代と作品をやることが多いので、今回どんなふうになるのか、怖くもあり楽しみでもありという感じなんです。皆さんがどんなふうにお芝居を作っていかれるのか、日々勉強したいと思っています。

コロナ禍、閉鎖的な小さな田舎町で起こる人間模様

──このメンバーで、赤堀さんは今回、どんなことを描いていこうとされているのでしょうか。

赤堀 まだ確定ではないですけど、大森南朋さんがリサイクルショップの店長、荒川良々さんがその店員、田中哲司さんが映画プロデューサーで、その男連中が通うキャバクラで働いているのが門脇さん、そして僕は害獣を駆除する猟師を演じる予定で、山に囲まれた閉鎖的な小さな田舎町で起こる人間模様を描きます。で、自分としてはできれば普遍的な話を書きたいと常々思っているので、これまでは、例えば震災であるとか、そのときに起こったことは描かないできたんですけど、今回は、コロナ禍ということを大前提に、しょうもない人間たちを描けたらなと思っています。

──演じる皆さんは、赤堀作品にどんな魅力を感じておられますか。

田中 これだけダメな人たちが出てくるのは、赤堀くんの作品しかないと思うんです。下手したら、全員クズ(笑)。しかも、悪い人でも実はいいところがあったという役は多いですけど、そういう“いい人要素”が全くない。そういう人を思う存分、全身全霊でやれるっていうのは、ストレス発散になるというか。だから、明るい気持ちで稽古場にいけるんです。

大森 僕もたぶん哲司さんと同じようなことを感じていると思うんです。ドラマとかではいい人を演じたりもしますけど、僕の中にもやっぱりそのヤバい匂いはないものではないと思うので。それを毎回赤堀くんのところで吐き出している感じがあるんです。ただ、観客として赤堀くんの舞台を観に行っても、その狂気を孕んだ凶暴的な空気を引きずりながらも、それがイヤな感じではないんです。それはなぜなのか、自分で演じてみてもよくわからないんですけど。結局、嘘がないからなのかなと思ったりしていて。そこが魅力なのかもしれないです。

門脇 私は完全に観客のひとりとしての感想になりますが。誰でも、見たくない感情や忘れたいことっていっぱいあると思うんですけど、そういうものが詰まっていて、一つひとつ丁寧に描かれているので。凶暴性というものもありますけど、いつもやさしい舞台だなと思って観ていました。

荒川 僕個人としてはまず、自分と笑いのツボが似ているので面白いというのがあります。それと、例えば医者だから偉いとかではなくて、みんな一緒の人間だというふうに、いつもいろいろな人間が一緒に生きている。そこがいいなと思っています。

赤堀 そういう意味では、哲司さんの言うそのダメな人を(笑)、リアリティを持って体現してくれそうな方を、いつもキャスティングさせてもらっている気がします。哲司さん、南朋ちゃんはもちろんのこと、門脇さんも荒川くんも、佇まいがすごく生々しいというか。生々しい雰囲気を持っている人が、魅力を感じる俳優さんだったりしますね。

今の世の中の「虚無」を描き、一筋でも希望が見出せたら

──赤堀さんがチラシに書かれたイントロダクションには、「電車の中で無闇に刃物を振り回し……」など、昨今起こった事件が並んでいます。書かれた思いを赤堀さんに、そこから感じることを皆さんにお聞きできれば。

赤堀 本当は、「はじめ人間ギャートルズ」(1974〜75年放送のテレビアニメ)のエンディングテーマ曲の「やつらの足音のバラード」の歌詞をそのまま載せたかったんですが、費用の問題であきらめたんです(笑)。でも、あの歌にある「何もない」っていう、今の世の中の人間の虚無というか、諦念と言ったらいいのか、そういうものを描けたらなと思っていて。

『ケダモノ』チラシ裏面

とくにこのコロナや戦争で、言語化できないものが内側に溜まって塊みたいになっていると思うので、その象徴として事件を羅列してみたんですけど。そういうものを描きながら、一筋でも希望が見出せたらいいなと思っています。

田中 まさにこのイントロダクションが赤堀くんの世界を表しているというか。これを読んだだけで世界が広がりますよね。

赤堀 でも、これを読んで来ない人もいっぱいいると思うので(笑)。

田中 線引きになるという(笑)。でも僕、「はじめ人間ギャートルズ」が大好きなんです。マンガを全部持っていて、今も時々読んでいるんですよ。

大森 そんな一面があったとは(笑)。

田中 (門脇に)全然知らないでしょ? 麦ちゃんが生まれる前のマンガだから。

門脇 はい、全く知らないです。

田中 今度貸すね。って、「ギャートルズ」の話で盛り上がってしまいそうですけど(笑)。『ケダモノ』という題名で、ついに一線を越えてきたなという感じがするので。これまで以上に期待しています。



取材・文:大内弓子 撮影:近藤誠司

大森南朋 ヘアメイク:TAKAHASHI (stereogn)/門脇麦 スタイリスト:宮本茉莉(STAN-S)・ヘアメイク:秋鹿裕子(W)衣裳:AOIWANAKA