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限りある命を生きることの尊さ丁寧に描く 『銀河鉄道999 THE MUSICAL』上演中

ぴあ

『銀河鉄道999 THE MUSICAL』ゲネプロより、手前左から、メーテル役:花總まり、星野鉄郎役:中川晃教

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中川晃教が主演する『銀河鉄道999 THE MUSICAL』が4月8日、東京・日本青年館ホールで開幕した。中川が主人公の星野鉄郎を演じるのは2018年、2019年に続き3度目。音楽劇の要素も取り入れつつ舞台版として育ってきた中川鉄郎版999は、今回初めて“ミュージカル”をタイトルに冠している。共演もメーテル役の花總まりをはじめ、佐藤流司、梅田彩佳、徳永ゆうき、矢沢洋子、松本梨香、北翔海莉、三浦涼介と歌唱力の高い顔ぶれを揃え、音楽監督にはゴダイゴのミッキー吉野を迎えたこのミュージカル版『銀河鉄道999』の開幕レポートをお届けする。

車掌役:徳永ゆうき(中央手前)

原作は'77年に連載が開始され、テレビアニメ、劇場アニメも大ヒットした松本零士の国民的漫画。舞台は未来、人類は肉体を機械に変えることで永遠の命を手にしている。しかし機械化人として永遠の命を謳歌する裕福な人々と、高価な機械の体を買えない貧しい者たちとの格差は広がり社会は分断されている。そんな中、母親を機械伯爵に殺された少年・星野鉄郎は、長い金髪を持つ謎の美女メーテルに出会い、機械の身体をタダでくれるというアンドロメダを目指し銀河鉄道999号に乗る。停車する星々での出会いや経験を経て鉄郎は成長し、そして世界の真実が明らかになっていく……。

クレア役:梅田彩佳
左)星野鉄郎役:中川晃教、右)キャプテン・ハーロック役:三浦涼介
機械伯爵役:佐藤流司
リューズ役:矢沢洋子
左)星野鉄郎役:中川晃教、右)クイーン・エメラルダス役:北翔海莉

蒸気機関車の外見を持つ999号での宇宙の旅、出会いと別れ、少年の成長といったノスタルジックなモチーフの中に、永遠の命(機械の体)と限りある命(人間)を対比させ、限りある命を生きることの尊さを描く物語。脚本の高橋亜子、演出の小山ゆうなはそのメッセージ性を丁寧に深掘りする。例えば宇宙海賊クイーン・エメラルダスとの遭遇や、機械伯爵の要塞・時間城からの脱出など、いくらでも派手に見せることもできただろう。しかしそれよりも、そこに挑むキャラクターの決意や、経験を経ての葛藤など、前後の心情描写に焦点を置く。そのことで、ある種観客側も“このキャラクターはこういったもの”と知ったつもりになっていた登場人物たちが生き生きと息づき、新鮮な感動を与えてくれる。

もちろんそれは演じる俳優たちの、実力に裏打ちされた演技力があってこそでもある。3度目の鉄郎役となる中川は、登場シーンは16歳の少年のきらめきを持ち、子どもらしい真っ直ぐな純粋さで鉄郎の強さを表現。一方で、どこか影のある達観した視点、子どもらしからぬ紳士的なふるまいを自然と同居させ、“純粋な少年だからこその強さ”だけではない、“星野鉄郎だからこその強さ”を生み出している。この人ならではの透明感がありつつも鋭い強さのある歌声もまた、鉄郎のしなやかさにマッチし、鉄郎として説得力のある存在感を放つ。

鉄郎を999号の旅へいざなうメーテル役の花總まりも、この人らしい浮世離れした美しさで、謎めいたメーテルを造形。しかし前半は落ち着いた空気を纏う優しい大人の女性という、世の大半がイメージするであろうメーテルそのものであったが、母・プロメシュームとの邂逅前後から見せる葛藤は生々しく、新鮮。ラスボス感たっぷりに演じるプロメシューム役の松本梨香の迫力とともに、この母子の宿命はこのミュージカル版の見どころのひとつになっている。

プロメシューム役:松本梨香
メーテル役:花總まり

様々な人に受け継がれ、高みへと届く思い
クライマックスの感動はミュージカル版ならでは

メーテル・プロメシュームで“母と子”を描くと同時に、今作は鉄郎とその父の“父と子”の関係性も重要な軸。劇場版アニメーションで語られ、原作にはない鉄郎の父親のエピソードを盛り込むことで、「思いを繋ぐ」という大きなテーマを浮き上がらせた。冷酷な姿と裏腹に、原作には描かれない過去の優しさ溢れる姿でインパクトを残した機械伯爵役の佐藤流司、かつての鉄郎の父の友人で、鉄郎に大きな影響を与える大山トチロー役の藤岡正明らはしっかりとキャラクターの思いを残す。

機械伯爵役:佐藤流司
左)大山トチロー役:藤岡正明

キャプテン・ハーロック役の三浦涼介、クイーン・エメラルダス役の北翔海莉らは、これぞ松本零士作品! といった外見のカッコよさで観る者の心を鷲掴みにしながらも、鉄郎に思いを“渡す”役目を的確に演じる。思いは様々な人に受け継がれていくことで、ひとりでは届かなかった高みへといつかは届く。その希望が鉄郎に集結し、クライマックスへと繋がる感動はこのミュージカル版ならではの魅力だ。

キャプテン・ハーロック役:三浦涼介
クイーン・エメラルダス役:北翔海莉

また今回は音楽監督をミッキー吉野が手掛け、ゴダイゴが歌った名曲「銀河鉄道999」が初めて劇中で使われることも大きい。日本人のDNAに刻まれるあの名曲は、流れるだけで自然と血が滾る。ミュージカルの中で、万感の思いを込めて歌われる「銀河鉄道999」もまた、格別だ。ぜひ劇場で味わってほしい。

初日に向けて、中川は「『銀河鉄道999』は、全世界にたくさんのファンがいる偉大で、とても愛されている作品です。今回は音楽劇ではなくミュージカル化ということで、身の引き締まる思いと、いい作品にしたいという情熱とどちらもが入り混じって挑戦させていただいています。鉄郎やメーテルをはじめ、宇宙の大冒険に登場する全キャラクターに注目していただきながら、登場人物たちに共通する命尽きるまで終わらない人生とお客様ご自身の人生を重ねながら観ていただけたら」とコメント。また花總は「足りない時間の中で、一生懸命この作品と向き合い、キャスト一同、カを合わせて『銀河鉄道999 THE MUSICAL』を創ってまいりました。神田さんの想いを乗せて、自分なりのメーテルを届けられればと思います」と、当初メーテル役にキャスティングされていた神田沙也加さんへの思いも語った。

公演は4月18日(月)までホールにて上演される。

取材・文・撮影:平野祥恵