宇垣美里の自信の持ち方「年齢を重ねたからこそ見える景色がある」
映画
インタビュー
宇垣美里 撮影/須田卓馬
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すべて見る4月12日よりスタートしたドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』。累計発行部数300万部を突破した原作マンガの実写化ということもあり、スタート前から大きな注目を集めていました。
さまざまなコンプレックスや悩みを抱えた女性たちが、もがきながらも前に進んでいこうとする姿と、そのリアルな心情描写が話題となっています。
今回は、外見と年齢にコンプレックスを抱える30代の女性・彩を演じた宇垣美里さんにインタビュー。「彩」という女性を演じる上での葛藤、作品の魅力について語っていただきました。
明日カノは多くの人が感情移入できる作品
――以前から原作の『明日、私は誰かのカノジョ』を読まれていたということですが、宇垣さんから見た『明日カノ』の魅力について聞かせていただけますか。
まずレンタル彼女という、あまりなじみのないお仕事だったので、どういうものなのかな、と思って読み始めたんですけど、そこから見えてくるそれぞれのキャラクターの悩みや苦しんでいる部分がすごく普遍的ですよね。だからこそ、感情移入して読んでいる人が多いんじゃないかな、と思います。
あと、女性たちの関係も、慣れ合うわけでも過剰に手を繋ぐわけでもないけど、なんとなくお互いの辛さはわかっているんですよね。お互い、それぞれの場所で戦っているんだよね、という非常にハードボイルなシスターフッドのようなものを感じます。
――特に共感したキャラクターはいますか?
すごく個性の強いキャラクターで、それぞれに共感できる部分とできない部分が同居していると思います。でも、やっぱり彩ちゃんは原作を読んでいたときからすごく好きなキャラクターのひとりでした。
彼女は弱いし、繊細なところもある脆い子なんですけど、彼女が選んだ道はすごく強い決断だったと思うんですよね。
――そんな彩を演じることが決まったときは、どんなお気持ちでしたか?
まず、髪が長いけどどうするんだろうと思って(笑)
原作のファンの方がたくさんいらっしゃって、それぞれ自分の中の彩像、雪像があると思うので、そこに合わないととても申し訳ないな、と。
彩ちゃんは私のイメージではもう少し大人っぽい顔立ちの人だったので、私では全体的に丸すぎないかしら、とドキドキしていたんですが、そこはメイクや髪形でカバーできているかな、と思っています。
「彩」は難しいけれど楽しい役だった
――実写化は原作ファンからすると複雑に思うこともあるかと思います。漫画やアニメがお好きな宇垣さんだからこそ、気をつけていたことなどはありましたか?
原作に愛がない作品は個人的には分かりますよね。でも、「この役者さんはすごく愛があるな」とか「ここの設定は変えるんだ、でも、この人は役のことをすごく考えてくださっているんだな」ということも分かるじゃないですか。
なので、どのように脚色するかは私には手出しができませんが、「この人は彩ちゃんのことをすごく考えて演じてるな」と思われるようにがんばろうと思いましたし、監督を始め、スタッフの皆さんがすごく原作に愛を持っている現場なので、それは本当によかったな、って思っています。
――実際、演じてみられてどうでしたか?
いやー、大変だったな、という気持ちです。
というのが、彩ちゃんってすごく繊細な部分がある子で、どうしても感情の振れ幅が大きいんですね。それはたぶん、自己評価が低いゆえの過剰防衛みたいなことだと思うんですけど、私自身はわりと一定のタイプなので、彩ちゃんはすごく元気だな、と。
――難しい役どころだったんですね。
そうですね。ただ、普段は自分の中でセーブしているんですよね。ここはそんなに感情的にならないでおこう、と思っていることを彩ちゃんは気持ちよく大声で怒り、気持ちよく泣く。自分の人生では絶対に感じられないし、たぶんチョイスしない方法だから、それをできるのは楽しかったですね。
――宇垣さんが普段感情を爆発させることはあまりないですか?
彩ちゃんが泣きながら「なんでよ!」と怒るようなタイプだとすれば、私はたぶん冷静になって理論で詰めてしまうタイプですね。それはそれですごく面倒くさいタイプではあるんですけど。感動して泣くことはありますが、彩ちゃんみたいに怒りで泣くことはないです。そういう意味で大変でしたね。また今日もケンカするの? って。
――パワーが必要な現場だった?
そうですね。光晴役の福山翔大さんと「今日もケンカだね、がんばろう」って。何回も泣いて、何回もケンカし、「本当にお疲れさまです」ってふたりで言っていました。
「すごく頑張ってるんだけどなあ」という気持ちはずっとあった
――彩は年齢を重ねていくにつれてのいろいろな悩みを抱えていると思うんですが、宇垣さんは年齢を重ねていく上でどういうふうになりたい、など理想はありますか?
正直、年齢についてあんまり考えたことはないんです。
ただ、周りにいる憧れている先輩方はみなさん「20代のときよりも30代のほうが楽しいよ、40代はもっと楽しい、50代になったら最高だよ」と言ってくれる方ばかり。だから、私は年を重ねることをすごくポジティブに捉えています。
若いままでは見られなかった景色が年を重ねることによって見えることは間違いないし、若い女性というカテゴリーから外れることで可能になることってあると思うんですよね。もちろん、失うものもありますが、歳を重ねることはすごく楽しみですし、早くそこに行きたいな、と思う部分もあります。
――以前からそういう考え方だったんでしょうか?
私は自分でも、大人っぽい顔立ちではないと感じているんですけど、それで「なんでこんな女の子みたいな扱いをするんだろう?」とか、私は大人として仕事をするためにいるのに「そこで座って笑っていたらいいんだよ」みたいな扱いをされることが多かったんです。それがとても苦手だし、少し悔しい想いをしていたんですよね。
――実力を見てもらえない、というところですよね。
同期の男の子に同じ扱い方をしませんよね、ということってあると思うので。そういう流れがなくなればいい話なんですけどね。
――周りからの接し方が原因で外見がコンプレックスになったり、ということは……。
そうですね。私はすごく恵まれているし、それでいろんなチャンスをいただいたこともありますが、それだとどうしても、外側だけで中身を見てもらえないと思うことが多かったですね。
たまたま運が良くてこの顔になっただけなので、それだけだと思われるのは、ちょっと悔しいなあ、私すごく頑張ってるんだけどなあ、という気持ちがずっとあったので、それはコンプレックスに思っていました。
――コンプレックスとはどのように向き合われたのでしょうか。
何かの仕事のときは、人一倍予習をします。例えば、アカデミー賞の中継の司会をするとなったら、ノミネートされている作品は全部観ますし、前哨戦となる賞ではどの作品が受賞して、どのようなスピーチがあったのかも、全て把握しています。私はそこまでしてきている、という自負を持つことで自分を慰めているのかな、と思います。
――コンプレックスとの向き合い方は、仕事をされていく上で身につけられたんですか?
アナウンサーになってから初めてそういう扱いをされたのでびっくりしましたね。写真が出ない書く仕事もさせてもらっているんですけど、そういった仕事を積み重ねていくことで評価してもらって、克服していったのかな、と思います 。
いつもハッピーな人でありたい
――見た目の話もありましたが、メイクも作品のひとつのキーワードかと思います。宇垣さんがメイクでこだわっている部分はありますか?
メイクで何かを隠そうと思ったことがあんまりなくて、私はメイクで変身するのが好きです。だから、毎日同じメイクはしないですね。
今日はちょっとアジアンビューティー系、とか今日はカラーでハッピーなメイクとか、そうやって毎日メイクの方法を変えることで、自分のマインドまで変えられるようにメイクを楽しんでいますね。スイッチングじゃないですけど。
――変身というと、どういうふうな女性になってみたい、というのはありますか?
いつでもご機嫌な人になりたいな。いつもハッピーな人が一番いいな、と思うので、そうありたいとは常々思っていますね。あとは人見知りを治したいとか。
――作品に出てくるキャラクターたちはそれぞれ依存している部分があるかと思うのですが、宇垣さんは何か依存しているものはありますか?
甘いものが大好きなんです。どんなにダイエットとか、脂質が良くないと言われようが、「いや、好きなんだ!」という気持ちですね。今日もお昼ご飯にシュークリームを買ってきてもらっちゃいました。コンビニに行くたびにグミを買っているし、甘いものにはちょっと依存しているかもしれないですね。正直、食べるために生きているんですよね(笑)
――食べたあとはやっぱり運動されたりとか?
ジムにも行きますし、書く仕事をするときや、インタビューを受けるときは、「パワーを使っているので甘いものは必要です!」って言いながら食べてます。頭を使っているので!って。
女の子たちの生きざまを見届けて
――お話を伺っていると、宇垣さんの言葉のチョイスがポジティブで美しいな、と感じたのですが、『明日カノ』にも登場する萌など、自信がない女の子がいたとしたら、どういうアドバイスをされますか?
その人のいいところをたくさん言います。例えば、友だちが仕事や恋愛で落ち込んでいるときは、「あなたのどこがいいか私にプレゼンさせてください!」って言うかな。でも、それしかできないんですよね。基本的には何かの機会にご一緒した人のいいところはすぐに伝えようにしたいな、と思っています。
――すごい、素敵ですね。
あなたのこうというところが大好き、そもそもあなたが好き!ということは常々伝えたいな、と思っていますし、自信のない子はそんな言葉を積み重ねていくことも大事ですよね。何か自信を無くすようなことがあったときに、「でも宇垣は私のことが好きって言ってた」って、それで少しでも元気になってくれたらいいな、と思います。
――最後に、今回のドラマで注目してほしいポイントを教えてください。
スタッフ一同本当に原作に、そして一人一人のキャラクターに愛を持って作っている現場です。本当に素敵なスタッフの皆さんに恵まれたなと思っているので、みんなの頑張りがギュッと詰まった作品をぜひ見ていただきたいです。
一見特殊な仕事をしていたり、特殊な状況にあるような女の子たちが、実はすごく自分に近い部分を持っていて、共感できる部分が必ずあると思います。
それぞれの女の子たちが葛藤して道を選んでいく生き様を見届けてください。
撮影/須田卓馬、取材・文/ふくだりょうこ
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