Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > ぴあ映画 > 水先案内人も絶賛する 『ハケンアニメ!』の魅力

観ると“やる気”に火がつく傑作が登場
覆面試写でわかった映画『ハケンアニメ!』の魅力!

5月20日(金)公開

PR

(C)2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

水先案内人も絶賛する
『ハケンアニメ!』の魅力

映画『ハケンアニメ!』はスニークプレビューでも高評価を得たが、映画を観るプロたち、実際に映像制作にたずさわる人たちからも絶賛を集めている。

そこで「ぴあ」で、様々な作品をおすすめしている“水先案内人”の方々にレビューを依頼した。水先案内人は映画/映像をつくる、観る、解説&紹介するプロフェッショナルたちだ。

映画を観る匠だからわかる視点、本作の登場人物たちと同じ“制作者”だからわかる感動ポイント……本作が細部まで丁寧に描かれた“深い”作品であることが伝わるはずだ。

イソガイマサト(フリーライター)
クリエイターたちの世界を余すところ描き切ったお仕事ムービーの傑作

笠井信輔(フリーアナウンサー)
今年観たエンタメ系日本映画の中でも最高の仕上がり

佐々木俊尚(フリージャーナリスト、作家)
アニメ文化への愛おしさがふつふつとこみ上げてくる

中川右介(作家、編集者)
実にいろんなものが投げ込まれている映画

波多野健(TVプロデューサー、ディレクター)
「視聴率」と「やりたいもの」の狭間がテーマ

イソガイマサト

フリーライター

 

クリエイターたちの世界を余すところ描き切ったお仕事ムービーの傑作

誰かに届けたい! 誰かの胸に刺さって欲しい! そんな新人アニメ監督と伝説の天才アニメ監督の“覇権バトル”を軸に、ゼロから“世界”を創出するクリエイターたちの世界を余すところ描き切ったお仕事ムービーの傑作。

憧れだけではやっていけない業界のシビアな現実もきちんと映し出しているから、吉岡里帆が演じた新人監督・斎藤瞳の熱い想いと意地や苦悩、中村倫也が扮した天才監督・王子千晴の孤独と恐れなどの生の感情に心を揺さぶられる。個人的には対談イベントで王子が吐き捨てるように言う本音、瞳が制作デスク(前野朋也)に後半でぶちまけるいまの想いの言葉が好きだ。

そこには嘘がまったくない。それこそ、瞳のひたむきな姿には芝居に常に全力でぶつかる吉岡里帆自身が重なるし、憂いを帯びた王子の姿には世の中を斜めから見ながらさらなる高みを目指しているような感じがする中村倫也の素のキャラも反映されているような気がする。いやいや、登場するすべてのキャラとそれを体現する演者の全員が本気で、吉野耕平監督(『水曜日が消えた』)を始めとした作り手たちも一切妥協していないから観る者の胸を熱くするのだ。

物作りをしている人も創作物に助けられた人、夢に向かって邁進中の人や夢を諦めかけている人はもちろん、すべての人に観て欲しい。きっと何かが刺さるはずだから。

笠井信輔

フリーアナウンサー

 

今年観たエンタメ系日本映画の中でも最高の仕上がり

マジ面白い。めちゃくちゃ楽しい。ヤバいくらい興奮する。どう表現しようか迷ってしまう。今年観たエンタメ系日本映画の中でも最高の仕上がりと言っていい。

新人アニメ監督(吉岡里帆)が、超人気わがままアニメ監督(中村倫也)にアニメ視聴率対決を挑むと言う、テレビアニメ戦争の制作舞台裏を見ているだけで面白い。そこに人気声優たちが本人役でズラッと出てくる贅沢な配役。吉岡里帆は豊かな感情の発露で、自然と応援したくなるヒロイン像を作り上げ、中村倫也はクールな破天荒ぶりの奥底に眠る「生み出すことへの苦悩」をにじませ、敵役なのに感情移入させる。

このふたりをコントロールするのが鬼プロデューサー(柄本佑)と神プロデューサー(尾野真千子)。対象的な芝居を見せるふたりの熱演でさらに面白さが加速。
何より、劇中劇の2本のアニメがすこぶるよくできている(スピンオフ希望!)。東映アニメーション、プロダクションI.Gなど一流アニメハウスが本気で作っているのだが、東宝チャンピオン祭りのゴジラ映画のように、「特撮は良かったけど…」とならないのが、本作の強みだ。

監督VS役者VSプロデューサーというドラマの中で、「作りたいもの」と「売れるもの」は違う!と言う、クリエイターたちが抱える永遠の課題を見事に映像化し、その下で絵を描くアニメーターたちの情熱だけで身を粉にして働く姿に思わず涙してしまう。これは観なけりゃわらない!

佐々木俊尚

フリージャーナリスト、作家

 

アニメ文化への愛おしさがふつふつとこみ上げてくる

かつて「アニメ好き」というと、「ちょっと気持ち悪いオタク」と思われてしまった時代もあった。

1989年に幼女連続誘拐事件が起き、犯人がアニメ好きだと思い込みでマスコミ報道されたことや、90年代にステレオタイプなオタク像を表現した「おたく評論家」宅八郎が人気を博したことなどが背景にあった。しかし90年代末には「新世紀エヴァンゲリオン」が社会現象にまでなり、さらにスタジオジブリ作品の世界的評価なども後押しして、アニメは「気持ち悪い」どころか日本の文化の中心地として屹立するまでになっていく。近年には「進撃の巨人」など既存の文学を超えるほどの想像力をもった作品が多数登場してきている。

そういう背景を振り返りながら本作を観ていると、この日本の素晴らしいアニメ文化への愛おしさがふつふつとこみ上げてくる。それほどまでにこの作品には、アニメをつくる人たちの情熱と狂騒と葛藤がこれでもか!というほどに詰め込まれている。劇中で制作されているふたつのアニメ作品の完成度の高さからも、本作の制作陣の熱意があふれ出ていることがわかる。

間違いなく、アニメが好きな人たち全員に見てほしい作品だと思う。

中川右介

作家、編集者

 

実にいろんなものが投げ込まれている映画

辻村深月の、けっこう長い小説を、いったんバラしてうまく再構成した脚本が、うまい。

いわゆる業界ものだが、内輪受けを狙ったものではない。もともと、映画やテレビ業界を舞台にした映画は、面白いものが多いが、これもそのひとつとなった。

こういう作品の場合、劇中劇が大きなポイントとなる。この映画では、2本の連続テレビアニメが劇中劇となるが、この完成度が高い。これをもとにテレビアニメ化できそうな水準だ。資料を読むと、原作者の辻村が2本の完璧なストーリーを書いて、それをもとにしているという。そこまで練られているのだ。

そのため、実在するアニメのメイキング映像を見ているかのような感覚になる。
アニメ制作の過程がよく分かるのも嬉しい。個性的なスタッフたちも、よく描かれている。
監督という仕事が、物語を創作するだけでなく、何十人ものスタッフを束ねていく、まさに監督であることもよく分かる。

2組の男女が主要人物だが、恋愛要素は薄く、「恋と仕事の選択」なんてテーマが、もはや古臭いことが逆説的に分かる。これはクリエーターたちの物語なのだ。

そして、若い女性の成長物語でもある。

実にいろんなものが投げ込まれている映画。

エンドロールのあと、もうワンシーンあるので、最後まで席を立たないようお勧めする。

波多野健

TVプロデューサー、ディレクター

 

「視聴率」と「やりたいもの」の狭間がテーマ

テレビアニメの世界を描いた直木賞&本屋大賞受賞作家 辻村深月の小説を映画化したもので、新人監督と人気監督が新作アニメの「覇権」を競う様子を描いた作品。

僕もテレビの世界に40年以上いるので少しわかるが、これは「視聴率」と「やりたいもの」の狭間がテーマだと思う。視聴率というのはテレビの世界では常に問われる「ノルマ」だが、これに捕らわれすぎると方向を失う。特にここ20~30年にわたる「視聴率の分析」ほどクリエイターを阻害してきたものはないと僕は思っている。要はやりたいものを自由に作ればいいのだ。それが当たる時もあり、当たらない時もある。僕が携わった「世界まるごとHOWマッチ」や「平成教育委員会」などは、あれよあれよという間にお化け番組になっていった。

始まる前はそれが当たるかどうかはわからない。ひたすら自分がおもしろいと思ったことに邁進するだけである。それとテレビの世界にいていつも感じるのは「自分が作ったものは伝わっているのか?」という不安である。この主人公も自身が受けた「啓示」を自分も誰かに与えたい、伝えたいと願って行動している。しかし実際に視聴者が自分の作品を見ているところを見るのはほぼなく、実感にはとぼしい。

それでもほんのたまに、僕の場合は視聴率はよくなくても「やっぱり猫が好き」や「WOOD」という番組について「あれはおもしろかったですね」などと出会った人に言われると嬉しくなる。それをよすがとして次の番組に向かうことになる。

この映画はふたりの監督の闘いのようではあるが、実はふたりとも同じ方向、「自分がやりたいものは何か?」に向かっていて、ファンタジーではあるが、このような熱い思いでものを作っている人たちがいればいいなと思う。なかなか、お薦めです。