「“ストレンジの立ち方”というものがある」三上哲が語る『ドクター・ストレンジ』最新作
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三上哲
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すべて見るマーベル・スタジオの最新作『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』がいよいよ5月4日(水・祝)から公開になる。本作は字幕版だけでなく日本語吹替版も公開が決まっており、これまで通りベネディクト・カンバーバッチ演じるドクター・ストレンジを俳優の三上哲が演じる。
カンバーバッチの吹替を繰り返し担当する三上は本シリーズをどう観ているのか? 愛情を込めて“ベネさん”と呼ぶカンバーバッチの演技のポイントは? 公開前に新作の内容に触れないよう注意して話をきいた。
アベンジャーズにはアイアンマン、スパイダーマンなどさまざまなメンバーが存在するが、その中で最も謎に満ちていて、今後のマーベル・スタジオ映画を語る上で最も欠かすことのできない人物がドクター・ストレンジだ。
2017年の映画『ドクター・ストレンジ』で初めて姿を見せた彼は、天才外科医だった。しかし、ストレンジは自動車事故で両手に致命的な怪我を負い、人生を回復させるために彷徨する中で神秘の力をもつ指導者エンシェント・ワンに出会う。この世のものとは思えない魔術の世界に遭遇したストレンジは戸惑う。しかし、彼はエンシェント・ワンに弟子入りする。
「1作目の映画では、ストレンジのさまざまな表情、ベネさんのさまざまな演技が描かれていましたよね」と三上は振り返る。「ですから、日本語吹替版の収録では彼の演技に寄り添って、彼についていく感じでした。こちらが画面の中の演技から、どれだけ汲み取ることができるのか? そして汲み取ったものを自分の身体を通して、どこまで声で演じることができるのか? そこがポイントでした」
弟子入りしたばかりのストレンジは有能な男ではあるが、ある意味では自分本位で、少し身勝手。憎めないキャラクターだが、どこか上から目線な人物だった。しかし、彼は熾烈な戦いに巻き込まれ、魔術の世界の可能性と恐ろしさに触れることで変化を遂げていく。
「ストレンジは最初は戦うことに対して反抗していましたし、相手を倒すことに対してすごく傷ついていて、映画の最後あたりでやっと責任感が出てくる。つまり、1作目は彼がヒーローになるまでの映画だったんですね」
その後、魔術を使い空間や時間を自在に操るドクター・ストレンジは、アベンジャーズの中で重要な役割を果たす人気メンバーに成長していった。観客もストレンジの“スゴ腕で、達観しているようだが、どこか抜けてる部分もある”ところに大きな魅力を感じているようだ。
「そうなんです。ただのイヤな奴じゃないんですよね。そこはベネさんがしっかりと演じてくれています。だから収録では彼の表情や声のトーンをよく観て、よく聞いて、彼とまったく同じトーンにするのではなくて、彼がどのような意図で言っているのか汲み取った上で日本語吹替版に落とし込んでいます。ベネさん自体がすごくチャーミングな人だと思いますし、個人的にはグッと入り込んで戦うシーンよりもストレンジのちょっと抜けている部分というかコミカルなシーンが好きだったりします(笑)」
三上はドクター・ストレンジの表情、声のトーン、そのシーンで置かれている状況を漏らさずに汲み取って声の演技に反映している。じっくりと観察し、キャラクターに迫る中で見えてきた“ストレンジの魅力”もあるようだ。
「観ていると“ストレンジの立ち方”というものがあるのかな? と思うんです。芯が通っていて、スッと立っている。というのも、画面の中のキャラクターの姿勢がいいと、こちらの姿勢もよくなるんです。逆に猫背のキャラクターを演じるときには、片足に体重をかけた状態でしゃべったりもします。
姿勢というか立ち方によって世界の見え方は変わってくると思うんです。ストレンジはシリーズ全体を通して、スッと立って世界を見つめながら話しているイメージがあります。もちろんシーンによってはコミカルだったり、苦しい状態だったりしますから、こちらとしては自分の重心を少し変えたりしながら、可能な限り画面の中のキャラクターと同じ感覚に陥った状態でセリフを言いたいんです」
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』では最強の敵サノスの出現によってアベンジャーズのメンバーはこれまでにない窮地に立たされたが、そこでもドクター・ストレンジは揺るがずにスッと立った状態で、物語のクライマックスにつながる重要な予言を提示していた。クセは強いが、ブレない、絶対的に頼りになる男、それがドクター・ストレンジなのかもしれない。
「その上で、彼は成長してるんです。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』ではこれまで以上にスパイダーマンに寄り添う感じがあって、彼の成長を感じましたね」
その『…ノー・ウェイ・ホーム』の“その後”を描く最新作『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』がついに登場する。どのような内容になるのか、詳細はまだ伏せられているが、タイトルにもなっているマルチバース(多次元)が物語の重要なキーワードになりそうで、三上はすでに日本語吹替版の収録を終えているという。
「最新作は映像もすごいですし、マルチバースが導入されたことで物語の可能性も広がりつつも、最終的にはすごくうまくまとまっています。僕もまだ完全な状態のものは観ていないのですが、収録しながら『これを映画館の大きなスクリーンで観たら、さぞすごいだろうな』と思いました。
日本語吹替版は字幕版よりも得られる情報量が多いので、まずは日本語吹替版で楽しんでいただいて、その後にベネさんの美声を楽しむために字幕版も観ていただく。日本語吹替版→字幕版の順番でお願いします!」
『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』
5月4日(祝・水) 公開
(C)Marvel Studios 2021
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