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倉科カナ×福本莉子対談 姉妹のように心を通わすふたりが語る『お勢、断行』の見どころは?

ぴあ

『お勢、断行』に出演する倉科カナ(左)と福本莉子  撮影:You Ishii

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江戸川乱歩の迷宮テイストを盛り込み、倉持裕が新たに生み出した“稀代の悪女の物語”、『お勢、断行』がいよいよ開幕! コロナ禍による全公演中止という2年前の苦難を乗り越え、パワーアップしての再始動だ。時は大正末期、ある資産家の屋敷を舞台に、人々の思惑が絡み合って起こる惨劇とは……、そこに関わっていく女流作家・お勢の断行とは果たして……!? 主人公・お勢を演じる倉科カナ、資産家の娘・晶を演じる福本莉子、姉妹のように心を通わす微笑ましいふたりが、『お勢、断行』の魅惑の劇世界を朗らかに語り合った。

2年を経ての稽古はタイムリープ? パラレルワールド?

――倉科さんは2年ぶり、福本さんは新たに参加で『お勢、断行』の稽古に入られて、今現在の感触などを教えていただけますか。

倉科 2年前に稽古をした時の映像が残っていまして、それを確認しながら稽古を進めているんですけど、なんだかタイムリープしているような感覚があって(笑)。でも物語の舞台となる“松成家”の娘、晶の役を、今回は新たに福本ちゃんが演じてくださっているので、その違いにパラレルワールド感もあったりして、すごく不思議な感覚です。福本ちゃんと堀井新太さんが新しく参加してくださったことで、2年前とは違う『お勢、断行』になるだろうなと。2年前に中止になったのはとても悔しい出来事でしたけど、その間で得てきたものもあるとと思うので、それを今回の『お勢、断行』にぶつけていきたいです。

福本 私は、2年前にこの舞台が中止になった時のことを覚えていまして。なので、まさかそこに自分が参加することになるとは思いもよらず、びっくりしました。一度完成までたどり着いた作品に、新たに参加するのはとても不安でしたね。でも皆さんが私のことを調べてくださったようで(笑)、稽古場でいろいろと質問してくださったり、気にかけてくださるのが嬉しくて。皆さんの優しさに助けられながら、毎日稽古をしています。最初の本読みは衝撃でしたね。皆さんのやりとりのテンポが良過ぎて、もう完成している! と思って。私の番が来る! ってすごくドキドキしながらの本読みでした(笑)。

倉科 でも福本ちゃんはとても落ち着いていて、凄いんです。私は2年前に蓄積したものがあるから、ある程度のレベルまですぐに行けるけど、福本ちゃんはそれにしっかりついてくるから、ちょっと待って! って(笑)吸収が早すぎて驚きました。

福本 いえいえ、毎日必死に台本を見て、とりあえず台詞を覚えて……みたいな状態です。稽古のスピードがとにかく早くて、一週間で全部終わっちゃうくらいなんです。

――とても順調で、濃い時間のようですね。福本さんは、稽古に入る前は緊張されましたか?

福本 緊張していました。でも、初めて倉持さんにお会いした時に「この作品に出演してくださってありがとうございます」って言われたんです。いえいえ、そんな! 私、出たかったんです! って恐縮しちゃって(笑)。今回のお話をいただく前に、倉持さん作・演出の『鎌塚氏、舞い散る』を観ていて、すごく面白い! いつか出てみたい……と思っていたんですね。「わからないことがあったら何でも聞いてね」とおっしゃっていただいて、優しい方でよかった〜と思いました。

暇つぶしに悪事を働くお勢と純粋無垢な晶

――稽古場で見えてきた、作品の新たな印象などはいかがですか?

倉科 あらためて、面白いな! と。シーンがリプレイされる構成になっていて、それによってそれぞれのキャラクターが多角的に見えてくるんですよね。お勢に関しては、結構人間味が滲み出ているなと感じています。

福本 台本を初めて読んだ時は、素直に難しいなと思いました。それで倉持さんに「ここの台詞はどういう意味ですか?」って聞いたら、倉持さんも「ちょっと待ってね……、自分で書いたけど、難しいなコレ」って。(一同笑)それで「晶はすごく難しいキャラクターだよね」という話になって。一見純粋無垢なんだけど、彼女の本音の部分を考えると混乱してしまう。「晶は台本のまんま、素直な感情でいいんじゃない?」とアドバイスをいただきました。ちょっとダークな雰囲気の中に、倉持さんの笑いのセンスが散りばめられていて、怪しげだけど面白い作品だなと思いましたね。

――倉科さんが演じる、松成家の屋敷に身を寄せている作家の“お勢”、福本さんが演じる松成家令嬢の“晶”、それぞれの人物をどうとらえているのでしょうか。

倉科 お勢って、ものすごくエネルギーが余っているんですよ(笑)。暇つぶしに悪事を働くタイプなので、だから悪とも思っていない、騒ぎを起こすことが日常なんですよね。ただ、私もまだ彼女を完全に捉えられていなくて。2年前も、お勢は結構空白の多い女性だったのでそこを埋めていきたいと思っていますが、まだ迷っていますね。晶に対する気持ちは、少しずつ見えて来ていて。自分とは真逆な晶の純度、育ちの良さに惹かれるお勢の気持ちはすごくわかるし、純粋無垢で真っ白だからこそ、汚してみたいという好奇心もあったり(笑)。難しいですね。

福本 晶は令嬢で、育ちが良くて、習い事もたくさんしていて……。ここに出てくる人物の中では、一番薄味といいますか(笑)。

倉科 ほかの皆さんが濃いからね(笑)。

福本 はい(笑)。純粋無垢な晶が、個性豊かな皆さんに惑わされ、かき乱されていくので、観客の方々の立場に一番近いのかな……とも思いますね。皆さんそれぞれに思惑があり、仕掛けてくる中で、晶はどの情報を選択して、その事態にどう対処していくのかが見どころなのかなと。お嬢様なので、所作も可愛らしく見えたらいいなと思っていて、口調も「何々していらっしゃったわ」なんて喋り方を普段はしないから(笑)、もっと自分の言葉として話せるように出来れば、と現時点では考えています。

江戸川乱歩の怪しげな雰囲気×倉持演出のユーモラスな味わい

――福本さんはストレートプレイ初挑戦と伺っていますが、とても緻密に分析されていて頼もしいですね。

倉科 すごく頼もしいです! しっかりしているんですよ〜。

福本 いえいえ、しっかりしているように見えるだけです(笑)。

倉科 最初にお会いした時は、小柄で可愛らしい方だな〜と思っていて、いざ稽古に入ってみたら、すっごく芯がしっかりしていて! 素晴らしいポテンシャルを秘めていらして、今後が楽しみだなと思います。あと、気さくですね!

福本 ハハハ!

倉科 稽古2日目くらいで、おすすめの筋膜リリースのグッズを教えてもらって、お揃いのものを買ったりして(笑)。仲良くさせていただいています。

福本 こちらこそ〜。最初に倉科さんのほうから話しかけてくださって、嬉しかったです。晶とお勢って結構顔と顔が近いシーンがあるんですけど、稽古中、年上の方に失礼かもしれませんが、可愛い〜!って思っちゃって(笑)。普段は可愛らしいのに、お勢の時はちょっと悪女っぽくて、そのギャップがまた素敵です。

倉科 私も、可愛いな〜と思いながら見つめています!(笑)。

――息の合った和やかな空気が伝わって来ます。あらためて今、実感されている本作の魅力について教えてください。

倉科 そうですね。江戸川乱歩原案による怪しげな雰囲気と、倉持さんのユーモラスな味わいも見どころのひとつですよね。登場人物たちのいろんな欲が渦巻いていて、各々内に秘めていたものがいきなりギラッと剥き出しになる瞬間が要所要所にあります。それが倉持さんの演出で色濃く表出されていって。『お勢、断行』なのでお勢が主役ではあるのですが、松成家の人たちが悪事を働いて物語が進んでいくんです。その悪に対してお勢がなにをどう思ったり、どう断行していくのかは、終盤にならないとわからなかったりして、そこが難しく、また面白いところではあるなと感じています。

福本 倉科さんがおっしゃるように、お勢だけでなく、ほかの皆さんのストーリーもしっかり描かれているので、見ていて「この人たち、どうするんだろう」ってとっても気になるんです。本当に全員が輝いていて、それぞれの思惑が入り乱れるユニークさもあって……、こういう舞台は観たことがなかったので、新鮮ですね。江戸川乱歩の独特の世界観のなかで、舞台セットも、衣裳も、斎藤ネコさんの音楽も素晴らしい。まさしく総合芸術で、私たちもお客さんもその世界にどっぷり浸れると思います。

2年前の悔しさを糧に

――2年間待ちわびていた方も多いでしょう。危うい魅力に満ちた劇空間での、色濃い人間ドラマを楽しみにしています。

倉科 2年前の悔しさを糧に、キャスト一同、スタッフさんも含めて皆、気合が入っていますので、ぜひ劇場にお越しいただけたら嬉しいです。

福本 いろんな人の思いがたくさん詰まった作品に参加させていただけたのは、すごく光栄なことです。私はぜひ、若い方にも劇場に足を運んでいただきたいんです。テレビやネットは気軽に作品に触れられて便利ではあるけれど、劇場に行く、そのひと手間をするだけで全然違ったエンタテインメントに出会えます。面白そう、行ってみようかな〜くらいの軽い気持ちで、高校生とかも友達を誘って、ぜひ来てほしいなと思いますね。

倉科 素晴らしい! 福本ちゃんのその言葉が、私は嬉しいです!(一同笑)

取材・文=上野紀子
撮影=You Ishii

倉科カナ/ヘアメイク:草場妙子 スタイリスト:清原愛花
衣装:ドレス/ERDEM(メゾン・ディセット) ピアス、リング/ともにBOUCHERON(ブシュロン クライアントサービス) シューズ/JIMMY CHOO(ジミー チュウ)
福本莉子/ヘアメイク:伏屋陽子(ESPER) スタイリスト:中井彩乃

<公演情報>
『お勢、断行』

2022年5月11日(水) ~5月24日(火)
会場:世田谷パブリックシアター
兵庫・愛知・長野・福岡・島根ツアー公演あり