シュルレアリスムに触発され誕生した「前衛写真」の本質に迫る『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真』
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ウジェーヌ・アジェ《日食の間》1912 年 東京都写真美術館蔵
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すべて見る海外から伝わってきたシュルレアリスムや抽象美術の影響を受け、1930 年代から 1940 年 代までに全国各地のアマチュア団体を中心に勃興した写真の潮流である「前衛写真」。東京都写真美術館で5月20日(金)から始まる『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真』では、近年各地の美術館で調査が進み、海外からの注目も集めている日本の「前衛写真」にスポットを当てる。
契機となったのは、 1937 年(昭和12)に瀧口修造が山中散生(ちるう)ととも に企画し、マックス・エルンストやマン・レイ、ルネ・マグリットなどシュルレアリスムの作品を紹介した「海外超現実主義作品展」が東京で開催(のち京都・大阪・名古屋・福井を巡回)されたことだった。この展覧会に触発された写真家たちは、日本各地で写真クラブを結成し、写真誌での写真論の発表や新しい写真表現の実験を繰り広げた。クラブの会員は写真家にとどまらず、画家や詩人、デザイナーなども参加し、各クラブはそれぞれに個性を持ちながら活動していたという。
同展では、大阪、名古屋、福岡、東京と地域ごとに章をわけ、各地域の前衛写真グループの作品約180点を紹介する。例えば、1904(明治37)年に大阪で結成され、現在も活動を続ける「浪華写真倶楽部」、坂田稔が1934年に結成した「なごや・ふぉと・ぐるっぺ」、1930年代半ばから40年まで福岡で活動、写真以外にも取り組んだ前衛美術グループ「ソシエテ・イルフ」、写真雑誌『フォトタイムス』の後援により、1938年に東京で瀧口修造らを中心に設立された「前衛写真協会」など。
日本各地でのそれぞれの活動を紹介しながら「前衛写真」の全体像を俯瞰するほか、マン・レイ、ウジェーヌ・アジェ、ハンス・ベルメールなど、同時代の海外作家たちの作品もあわせて展示する。
太平洋戦争が始まる前のわずか数年の活動だったこともあり、まだまだ謎も多い「前衛写真」。戦後の主観主義写真や、1950年代に再度現れるシュルレアリスムの影響などにも触れながら、日本の写真史のなかの「前衛写真」を考察し、その本質に迫っていく。



『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真』
会期:2022月5日20日(金)~2022年8月21日(日)
会場:東京都写真美術館 3F 展示室
休館日:月曜(祝日の場合は開館、翌日休)
料金:一般 700円、大学560円、高中・65歳以上350円
公式サイト:https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4280.html
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