《I don’t wanna love you, my baby》と甫木元がソウルフルに歌い上げ、「Nevermore」からライブはスタート。ドラムとベースだけのゆったりしたグルーヴから始まり、徐々に疾走感を増していくバンドサウンド、ジャズ、ギターポップ、R&Bなどが混ざり合うアレンジによって、創造的な音楽空間が立ち上がる。エンディングに向かうにつれて感情を高ぶらせるボーカルを含め、最高にエモーショナルなオープニングだ。
ソウルミュージック、ファンク、ジャズの要素が有機的に絡み合い、《東西南北 右も左も I don‘t care / すくなくとも もぎたて一つ》という歌詞――まるで二人の音楽的なスタンスを示唆するような――「コーラ・バナナ・ミュージック」、女性の言葉による歌詞と郷愁を誘うメロディを軸にしたソウル・ジャズ・バラード「またたき」、さらに最新EP『Tide Pool』から、ディープなR&B的なグルーヴ、オーセンティックなジャズピアノが共鳴する「All Too Soon」へ。時代やジャンルを自由に行き来する音楽性、まさに映画のワンシーンのような歌詞、緻密にして斬新なアンサンブル。楽曲を連ねるたびにこのグループの音楽的なレイヤーが深まり、知的好奇心と身体的な快楽が同時に湧き上がる。コンセプト先行ではなく、メンバー、ミュージシャンの息づかいや体温が感じられる演奏にも強く惹きつけられた。
個人的にもっとも印象的だったのは、「I Don’t Have a Pen」。クラシックの印象派を想起させるピアノと起伏に富んだボーカルラインから始まり、プログレッシブに展開していくこの曲は、ライブという場所で再構築されることでスリリングの度合いを上げていた。断片的なイメージをカットアップした歌詞も、刺激的なイマジネーションを増幅。ハンドマイクで生々しい感情を込めた歌を響かせる甫木元のパフォーマンスにも惹きつけられた。
■Bialystocks
01. Nevermore
02. 花束
03. コーラ・バナナ・ミュージック
04. またたき
05. All Too Soon
06. Emptyman
07. Winter
08. I Don't Have a Pen
09. Over Now
10. 光のあと
11. 夜よ
EN1. 差し色