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『鋼の錬金術師』完結編に山田涼介が注いだ想い「他人事では終わらない人間ドラマになりました」

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『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』 (C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師 2&3」製作委員会

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2021年に連載20周年を迎えた漫画『鋼の錬金術師』。アニメ化のほか、2017年12月には実写映画化も公開された。それから4年。今年、『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』が二部作連続公開される。

主人公であるエドワード・エルリックを演じるのは前作に引き続き、山田涼介だ。
実は、インタビューの直前に完成した作品を観終えたところだったという山田。
「エモーショナルな気持ちになっている、じゃないけど……今は映画に想いを馳せているような、不思議なテンション」
そんな中、『鋼の錬金術師』の世界に再び“エド”として立った気持ち、作品に対する想いを聞いた。

完結まで描かれたことが嬉しい

完結編は、1作目から4年を経ての続編。どのような気持ちで撮影に挑んだのかという問いに「いつかやるだろうな、というのは思っていたので、『このタイミングなんだな』と。技術的に制作が難しい部分がたくさんある作品ではあるので、いろんな準備が整うまでのことを考えるとむしろ早かったな、と思いました」と2年前に行われたという撮影を回顧しながら語った。
アクションも多い作品ということで、トレーニングも積極的に行っていたという。

「当時はドラマの撮影をしていたんですけど、朝5~6時ぐらいに起きて、夜中の11時、12時ぐらいまで撮影をして。そのあと、深夜1時ぐらいにジムに行って2時間ぐらいトレーニングして……という生活を半年間繰り返してました。すごいスケジュールでトレーニングをしていたな、と思います」

実写化に当たり、原作ファンが気になるのは、全27巻ある作品をどのようにして描くのか、という点だ。自身もファンでもあるという山田は台本を読んだときに「できる限りの中で描こうとしてくれている、ということはすごく伝わってきた」と言う。

「やっぱり原作のファンの方が多い作品なので、役に対してどうこうというよりは、どこを描くのかとか、『鋼の錬金術師』の作品自体にこの映画がどんなふうにアプローチしていくのか、という点はすごく気にかけていたかな、と思います。
ここから始まる!というところで前作は終わっていたので、今回完結まで描けたというのはすごく嬉しかったです」

個性豊かな面々でも「エドの姿なら」プレッシャーを感じない

完結編では新たなキャラクターも多く登場する。
アームストロング少佐を山本耕史が演じるほか、エドとアルの父親であり物語の重要なキーとなるヴァン・ホーエンハイムと“お父様”の二役を内野聖陽、キング・ブラッドレイを舘ひろしが演じる。

「若手の方もいれば、大スターの方もいて、現場が不思議な空間でした。内野さんも舘さんも、クオリティの高い再現度で圧倒されましたね。喋り方やトーン、リズムも原作通りに寄せていらっしゃるな、というイメージがありました」

そして、山田演じるエドとのシーンが多かったのが、スカー役の新田真剣佑と、リン・ヤオとグリードの二役をこなす渡邊圭祐だ。新田演じるスカーはエドの命を狙う。

「マッケンは『復讐者スカー』でメインキャラクターを演じるということで、現場での初日は戸惑いもあったみたいで。経験者として僕もアドバイスできるところはさせてもらいました。マッケン自体、お芝居はもちろん上手ですし、アクションも、すごく体の利く役者さんなので、僕のほうが逆に負けないように、というか、食らいついていかなきゃ、と思っていましたね」

若手からベテランキャストまで揃った現場。その中で座長として思うところはあったのか、という問いに山田はサラリと「何も思わないですよ」と答えた。

「山田涼介として立っていたら多分プレッシャーでどうにかなってしまうと思うんですけど、現場ではあのエドの姿でいるので、何も思わないです。エドってそういう人なので。
実は、ドラマの撮影をしていたので、僕は1ヶ月遅れでクランクインしたんです。だから、逆に迎えられた感というか、やっと来たか! みたいなスタッフさんの空気感があったんです。僕も『遅れてごめーん!』みたいな(笑)だからいい意味で緊張せず、初日からエドができたかな、と」

その時に生きた証がそこにあるだけ

完結までエドを演じ切って、山田の中でエドはどのような存在になったのだろうか。 問いに「どうなんでしょうね……エドはエドなんですよね」と、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「もちろん、エドは特別な存在ではありますけど、他の作品をやるときにエドを思い出すことはないですし。引きずっていたら、いま撮影しているドラマでもしかしたら錬金術を出しちゃったりするかもしれない(笑)
僕が演じたエドがそこにいるだけで、自分にとってどうなのか、というのはどの役でもそうなんですけど、その時に生きた証としか言いようがないというか。だから改めて2年越しに作品を観ると、懐かしい想いにふけると思うんですよね」

前作から4年を経て、自身の成長であったり、変化を感じた部分はあったのだろうか。

「自分自身の成長は、自分ではわからないんですけど、作品を撮るときに前作で感じていたような戸惑いみたいなものは一切なかったかな。
作品の要領やスタイルも全部わかった上での撮影だったので、監督と話す内容がだいぶスタイリッシュになったというか。余計なことを話す時間がなくなりましたね」

『最後の錬成』ではエドとしてだけではなく、ひとりで三役をこなす。心身ともにハードなシーンも多い。

「僕が2人いるわけではないので、片方を1週間演じて、もう片方も同じシーンを1週間かけて撮る。ワンシーン撮るのに2週間ぐらいかかる現場でした。相手がいない状態で動きを想像しながらやるんですよね。グリーンバックのスタジオで、建物もなければ木の枝1本もないような現場で撮影しているので、『何をやっているんだろう?』と思い始めたらおしまいなんです。その気持ちを保ちながらずっと戦い続けるというのは大変でした」

『鋼の錬金術師』の本質は人間ドラマ

子どものころから作品のファンだったという山田に、改めて『鋼の錬金術師』の魅力について聞いた。

「子どもが読んでもおもしろいんですけど、大人になって読むとまた違う面白さが生まれてくるんですよね。
子どもってやっぱりヒーローが好き。いろんなヒーローがこの作品の中にはいます。かっこいいし、アクションシーンもあるし、魔法みたいなこともたくさん起きているし、たぶん子どもはそういうところを楽しんでいるんだろうな、って。
でも、『鋼の錬金術師』の本質ってやっぱり人間ドラマなんですよね。ひとりひとりのキャラクターのバックグラウンドがちゃんと描かれているのがこの作品の魅力だと思うんです。
映画でも『復讐者スカー』ではイシュヴァール殲滅戦を色濃く描いています。それぞれにどんなことが起こって復讐者が生まれるのか、復讐に復讐を重ねても復讐が生まれるだけなんだ、というところを事細かに描いているところが、僕は大人の方にすごく刺さるんじゃないかというふうに思っています。
エンタメ作品ではあるけども、他人事では終わらない、考えさせられる映画になっているんじゃないかな、と思います」

撮影当時のことを思い出すかのように、時々、ふっと黙り込んだ場面もあった。『鋼の錬金術師』の世界を振り返り、エドと山田涼介を行き来している様子が時折感じられたように思う。“エド”として山田涼介が生きた証をぜひスクリーンで見届けてほしい。

取材・文/ふくだりょうこ

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