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モネ、ゴッホからリヒターまで 自然に対する絵画表現の変遷をたどる『自然と人のダイアローグ』開幕

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左:ポール・セザンヌ《ベルヴュの館と鳩小屋》1890〜1892年頃 フォルクヴァング美術館蔵 右:ポール・シニャック《サン=トロペの港》1901〜1902年 国立西洋美術館蔵

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リニューアルのため休館していた国立西洋美術館が1年半振りに企画展を開催している。6月4日(土)より9月11日(日)までの会期で行われる『国立西洋美術館リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで』は、自然と人をテーマに近代の絵画の変遷をたどる展覧会だ。

開館当初の佇まいに近づける工事のため、2022年4月まで約1年半のあいだ休館していた国立西洋美術館。リニューアル後、初となる企画展は、ドイツはエッセンにあるフォルクヴァング美術館の協力を得て開催される。

フォルクヴァング美術館は、実業家のカール・エルンスト・オストハウスの個人コレクションを核とした美術館。オストハウスと同時代を生きた実業家、松方幸次郎のコレクションを元に誕生した国立西洋美術館との共通点も多い。

同展では2つの美術館のコレクションから、「自然との対話」を画家たちがどのように行い、作品として作り上げていったのかについて4章構成で取り上げる。印象派やポスト印象派を軸に、20世紀絵画まで100点以上の作品が展示されている。

左:ウジェーヌ・ブーダン《トルーヴィルの浜》1867年 国立西洋美術館蔵 右:エドゥアール・マネ《嵐の海》1873年 国立西洋美術館蔵

第1章は「空を流れる時間」。技術革新が進み、携行できる絵の具が普及した19世紀、画家たちは盛んに戸外に出て、変化する光の姿を捉えようとした。モネの師匠でもあり、海辺の風景を描き続けたブーダンの作品をスタートに自然をさまざまな形で捉えようとする画家たちを取り上げる。

左:マックス・リーバーマン《ラーレンの通学路》1898年 フォルクヴァング美術館蔵  右:エドゥアール・マネ《ブラン氏の肖像》1879年頃 国立西洋美術館蔵

ドイツの画家マックス・リーバーマンやマネは、木漏れ日と人々をモチーフに、光のきらめきを描いた。それぞれ画家ごとに個性が出ているのが興味深い。

この章で一番の盛り上がりを見せるのは印象派の巨匠として知られるクロード・モネと現在、世界でもっとも人気のある画家のひとり、ゲルハルト・リヒターの共演だ。小舟にのって川で遊ぶ少女たちと、きらめく水面のコントラストが美しいモネの作品とソフトフォーカスで撮影された写真にも見える、青空と雲を描いたリヒターの作品が隣り合う。二つの作品の間には110年の年月が流れているが、光のあり方を追求しようとする画家たちの姿勢は変わらない。

左:クロード・モネ《舟遊び》1887年 国立西洋美術館蔵 右:ゲルハルト・リヒター《雲》1970年 《雲》フォルクヴァング美術館蔵

第2章は「〈彼方〉への旅」と題し、自分の心象や観念を自然の風景と結びつけた画家たちの作品を紹介する。ロマン派を代表するドイツの画家、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒは夕日を見つめる後ろ姿の女性像を描くことで、ヨハン・クリスティアン・クラウゼン・ダールは窓とその向こうの神秘的な風景を描くことで、人間の理想を追求することを試みた。

左:カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ《夕日の前に立つ女性》1818年 フォルクヴァング美術館蔵  右:ヨハン・クリスティアン・クラウゼン・ダール《ビルニッツ城の眺め》1823年 フォルクヴァング美術館蔵

ゴーガンはブルターニュ地方にあるポン=タヴェンやタヒチなど、あえて都会から離れて制作することで、自らの芸術を追求していた。

左:ポール・ゴーガン《扇を持つ娘》1902年 フォルクヴァング美術館蔵 右:ポール・ゴーガン《海辺に立つブルターニュの少女たち》1889年 国立西洋美術館蔵

第3章「光の建築」は、自然のなかに普遍的な秩序や法則、本質的な構造を見出し、表現のなかに織り込もうと試みた画家たちの作品を紹介する。スーラの点描技法に強く影響を受けたベルギーの画家、レイセルベルへは水面と月の光を丹念に点描で描き、フィンランドの国民的画家、ガッレン=カッレラは、静かな湖面にさざなみが立つ場面を装飾的に描いている。

点描技法をスーラとともに実践し、後の画家たちに大きな影響を与えたシニャックは、パリや南仏などさまざまな場所の風景を描いた。

左:テオ・ファン・レイセルベルへ《ブローニュ=シュル=メールの月光》1900年 フォルクヴァング美術館蔵 右:アクセリ・ガッレン=カッレラ《ケイテレ湖》1906年 国立西洋美術館蔵
左:ポール・シニャック《ポン・デ・ザール橋》1912/1913年 右:ポール・シニャック《サン=トロペの港》1901〜1902年 国立西洋美術館蔵

最終章となる「天と地のあいだ、循環する時間」では、めぐる季節や生と死など自然のなかにおける「循環」を描いた作品を展示する。

ゴッホの《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》は、ドイツから初来日。ゴッホの死の12年後にオストハウスが購入し、フォルクヴァング美術館の開館を飾った記念碑的な作品だ。

左:カミーユ・ピサロ《収穫》1882年 国立西洋美術館蔵  右:フィンセント・ファン・ゴッホ《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》1889年 フォルクヴァング美術館蔵

ドニとモネの作品は、どちらも縦に伸びる木々が画面を分断する印象的な作品。ドニの作品が制作されたのは、モネの作品が描かれてからわずか15年後。その当時の芸術のあり方、価値観が大きく変化していたことも伺える。

左:モーリス・ドニ《踊る女たち》1905年 国立西洋美術館蔵  右:クロード・モネ《陽を浴びるポプラ並木》1891年 国立西洋美術館蔵

そして、展覧会は国立西洋美術館の所蔵するモネの2点、《睡蓮、柳の反映》《睡蓮》を中心にノルデやゴッホの絵画作品、ドイツの写真家、エンネ・ビアマン写真など、花の作品で締めくくられる。

クロード・モネ 左:《睡蓮、柳の反映》 右:《睡蓮》 いずれも1916年 国立西洋美術館蔵

国立西洋美術館、フォルクヴァング美術館の珠玉の作品を通して、芸術家と自然との関わり方とを知ることができる展覧会。リニューアルしてまもない国立西洋美術館でぜひ鑑賞してみよう。


取材・文:浦島茂世



【開催情報】
国立西洋美術館リニューアルオープン記念『自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで』
6月4日(土)~9月11日(日)、国立西洋美術館にて開催
https://nature2022.jp/

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