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【おとな向け映画ガイド】緊張感MAXのノンストップ長回し撮影!『ボイリング・ポイント 沸点』と『キャメラを止めるな!』が同日公開

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イラストレーション:高松啓二

今週(7/8〜9) の公開映画数は21本。うち全国100館以上で拡大公開される作品が『ソー:ラブ&サンダー』『モエカレはオレンジ色』。中規模公開、ミニシアター系が19本です。今回は、次週7月15日公開の『ボイリング・ポイント/沸騰』と『キャメラを止めるな!』をご紹介します。ノンストップ撮影がウリの2作品です。

『ボイリング・ポイント/沸騰』

有名シェフやレストランを描いたドキュメンタリーが面白いのは、普段目にすることのできない厨房のなかをのぞけること。段取り、というのはこういうものか、と舌を巻く。調理人たちの動きが整然と展開される。混沌のなかから奇跡のような一皿が完成する。きれいに盛り付けられた料理の裏には人生がある。

これは、クリスマスを前にしたありふれた金曜日の夜、ロンドンのある有名レストランを舞台に、開店から1時間くらいの様子を、まるで生中継ドキュメンタリーのように描いた映画だ。もちろん劇映画だが、全編をワンカット、カメラを止めずに撮影している。

厨房のなかだけではない、フロントからバー、客のいるテーブル、バックヤードの事務スペースまで、カメラはずんずん入り込む。ディナーの席にも厨房のなかにも、悲喜劇があり、事件がある。すべてひとつの大きなドラマのなかに組み込まれていく。

……出勤が遅れて、焦って店に電話をしているシェフの姿から映画は始まる。店はもう目の前。終わるとまた別の電話だ。何か身内のトラブルをかかえているようだ。店内ではみなが彼の到着を待ちかねていた様子──今日の仕込みがまだできていない、衛生監視官が抜き打ち検査に入って店内をチェックしている……わかった、とりあえずコーヒーを入れてくれ、すぐ着替えるから……。

そんな風に、矢継ぎ早に声をかけられるシェフを追ってカメラも動き出す。ここからノンストップの96分だ!

全編ワンショットの長回しという見せ方で有名なのはヒッチコックの『ロープ』。ある部屋で殺人事件が起き、死体をどう隠すかですったもんだするサスペンスだ。『1917 命をかけた伝令』も撮影方法が話題になった。重要な作戦を伝えるため、銃弾がとびかう戦場を2人の兵士が駆け抜け、カメラがそれを追い続けるスタイル。

最近はスマホでムービーを撮る人も多いから、その撮影の大変さを理解してくれると思う。どんな映像も、普通は、あとで編集する前提で、シークエンスを少しずつ撮っていく。それがこの映画では、順を追って最後まで一気に撮影をし続ける。レストランとなると、料理も作り、出さなくてはいけない。食事をするシーンだってもちろんある。バックヤードの準備も膨大だ。かなり綿密な段取りが必要だし、スタッフとキャストの緊張感はすごいものだろう。逆に観る側は、常にカメラの目線でドラマを追っていける、その臨場感は格別だ。

監督は12年間シェフとして働いたという異色のキャリアを持つフィリップ・バランティーニ。シェフが主人公の短編映画を作ったことがあり、その経験から、厨房だけでなく他のパートもいれた人間関係や、ストレスなど、長編のドラマになる素材だと考えた。

ワンショットでの撮影は撮影監督マシュー・ルイスのアイデア。やはり観客に緊張感を与えたいというのが狙いという。狭い空間でカメラの本体とバッテリーを背負って、障害物にぶつからないよう回し続ける。物理的にいっても相当なハードワーク。映画のデキの最大の功労者は撮影監督だ。撮影を終えたときの達成感はすごかったに違いない。

【ぴあ水先案内から】

波多野健さん(TVディレクター、プロデューサー)
「……出演者みんなうまい! 特にスー・シェフ役のヴィネット・ロビンソンがよかった……」

波多野健さんの水先案内をもっと見る

笠井信輔さん(フリー・アナウンサー)
「……レストランで次々起きるトラブル、緊張感あふれる中、オーナーシェフは一体いつ爆発してしまうのか?そのハラハラを是非楽しんで頂きたい……」

笠井信輔さんの水先案内をもっと見る

(C)MMXX Ascendant Films Limited

『キャメラを止めるな!』

2018年、日本映画界の話題をさらった珍品中の珍品『カメラを止めるな!』。製作費300万円のインディーズ系ホラームービーが「面白いのみつけた!」とSNS、口コミで広がり、興行収入20億円を超える大ヒットとなった作品の、まさかのフランス版リメイクである。

こちらも、『ボイリング・ポイント/沸騰』同様、ノンストップ撮影がキーになった映画だ。

監督は、米アカデミー賞で作品賞を受賞した『アーティスト』のミシェル・アザナヴィシウス。さらに、完成披露はカンヌ国際映画祭のオープニング上映になったという、冗談のような本当の話だ。

『カメラを止めるな!』の面白さは構成にあった。最初の30分がいかにものC級ホラーで、なんとくだらないんだとあきれていたら、実はそこから話が始まり、30分の映画がどのようにして作られたかの謎解きをするというしかけ。実際に映画館で観てみると、最初の退屈な30分があとで意味を持ってくる、そうかそういうことか、の連続だった。

もうネタばれを書いてもいいと思うが、設定はこんな風だ。

ホラー専門のチャンネルができて、その特別プログラムとしてゾンビ映画が作られることになる。条件は、1ショットで30分、カメラを止めずに撮影すること。それを生中継で放送するというもの。しかし、ゾンビ映画を作っているクルーがなんとゾンビに襲われてしまう、というストーリー。

そんな無理難題を提案された映画監督だが、つい引き受けてしまう。何せ監督のウリは「安い、早い、できはそこそこ」。撮影当日、映画監督役の男優がトラブルで現場に現れず、監督自身が演じることになるといったすったもんだの末、なんとか30分の映画が放映される。

このフランス版では、日本で大ヒットした映画のリメイクを日本資本で作り、ZというB級映画専門チャンネルで流す、という企画になっているが、「カメラ1台で30分1カットの撮影」はマル必なのだ。

監督のレミーを演じているのはアザナヴィシウス監督作品は初出演となるロマン・デュリス。日本側のプロデューサー「マダム・マツダ」役で、竹原芳子が『カメラ…』に引き続いて実に存在感のある不思議なキャラクターのまま出演している。このプロデューサーが、「役名は日本人名でいってくれ」とか、ややこしい注文をつけてくる。

ゾンビものなのに、ハートウォーミングな見せ場もある。フランス版はそのテイストがより強い。この映画を観たら、もういちど『カメラを止めるな!』が観たくなる。

【ぴあ水先案内から】

笠井信輔さん(フリー・アナウンサー)
「……傑作コメデイを海外が放っておくわけがない。しかし、アカデミー賞監督がフランスでリメイクとは驚いた。……」

笠井信輔さんの水先案内をもっと見る

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