津田健次郎インタビュー「映画『ONE PIECE FILM RED』の現場には“芝居の原点”があった」
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インタビュー
津田健次郎 撮影:源賀津己
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すべて見る8月6日より公開される、『ONE PIECE』映画最新作『FILM RED』。原作者の尾田栄一郎が総合プロデューサーを務める『ONE PIECE FILM RED』は、赤髪のシャンクスの娘であるウタが物語の鍵を握ることでも話題となった。そのウタのことを知る怪しげな男ゴードンを演じるのが声優・津田健次郎だ。
ウタが世界中から愛される歌姫としてライブステージに立つ様子が描かれた予告編からも伝わってくる、これまでの劇場版『ONE PIECE』とは異なる世界観を、津田は「新しい『ONE PIECE』が誕生したんじゃないか」と語る。その一方で、新しい『ONE PIECE』であろうと作品に向き合うキャスト陣の変わらない姿勢は、津田自身が芝居の原点に立ち返るきっかけになったともいう──。
根幹は変わらずも、新しい『ONE PIECE』が誕生した
──TVアニメ『ONE PIECE』では、ヴィンスモーク・ヨンジの声を担当されていた津田さん。『ONE PIECE』という作品について、どんな印象をお持ちですか?
津田 友情や家族愛など、人と人との絆を描いた物語だと僕は思っています。子ども・大人関係なくまっすぐに訴えかけてくる、爽快で泣ける物語がいつも繰り広げられていると感じます。
それに……大人になったらつい忘れてしまいがちだけど、ずっと大事にしないといけないものが色濃く描かれるので、「あ、そうだよね。頑張ります!」という気持ちにさせてもらえます(笑)。
ルフィはいつもボロボロになりながら、それでも最後まで戦い続けるんですよね。しかも、自分のためではない戦いが多くて。「自分のためではない戦いこそが、自分のための戦いなんだ」みたいなルフィの姿に胸を打たれます。
──これまで劇場版『ONE PIECE』といえば、金獅子のシキ(『STRONG WORLD』)、ゼット(『FILM Z』)、ギルド・テゾーロ(『FILM GOLD』)、ダグラス・バレット(『STAMPEDE』)など、屈強な男性キャラがルフィたちの前に立ちはだかる印象でしたが、『ONE PIECE FILM RED』ではウタというヒロインを中心に華やかな世界観が展開されています。
津田 バトルシーンや物語の根幹は“ザ・ONE PIECE”なんですが、現代的なテーマが入っていたり、今までの『ONE PIECE』では聞いたことのなかったような音質の楽曲が取り入れられ、新しい『ONE PIECE』の扉が開いたような気がしました。総合プロデューサーとして尾田栄一郎先生が中心にいらっしゃって、そういった扉が開くというのはすごく面白いですよね。新しい『ONE PIECE』が誕生したんじゃないかという印象です。
各キャラクターに、大事にすべき“魂の言葉”がある
──そんな中、津田さんが演じるのは、ウタのことを知る怪しげな男ゴードンです。
津田 最初にデザインを拝見して思ったのは「めちゃくちゃイカついな」ということで(笑)。力強くてゴツい印象だったので、台本をいただいて「さて、この役をどうやって演じようかな?」と考えていったんですが……。
谷口悟朗監督とアフレコ前にお話しさせていただく機会があって、「ゴードンという男は位の高いポジションなので、そういった部分を意識していただきたい」と。それを聞いて、「なるほど、このゴツさは暴力的な方向ではないんだな」とイメージできて、より繊細に作っていかないと成立しないキャラクターだと理解しました。
──「繊細に作る」とは?
津田 『ONE PIECE』というのは元々、観ている側の感情を掻き立てるような、とてもエモーショナルな作品なんですよね。だからこそ、感情にウソがないことが絶対条件であると僕は思っていて。そこだけは絶対にブレてはいけないと、感情にウソのない芝居を徹底しようと意識しました。
例えば……キャラクター性やセリフの言い回しに引っ張られすぎてウソが増えていってしまうと、それは違うかなと思うんです。そうやって道から外れていったときは監督が「津田さん、こっちですよ」と修正してくださると思っていたので、僕としてはゴードンの心の中に流れるものを丁寧に表現していこうと思いました。
──例えば、どんなシーンで強く意識されたのでしょうか?
津田 バトルの中でもゴードンのセリフがいくつか差し込まれていくんですが、その中にすごく強い言葉があって。台本をいただいたら、僕は声に出して読む前に必ず黙読するんです。そのときに「あ、これは大事にしないといけないセリフだな」と思いましたし、すごく練られた脚本なんだなというのも感じました。
各キャラクターにそういった“魂の言葉”があって、それぞれ表現方法は異なりますが、ゴードンの場合は静かに始まるんです。そこからドラマが見えてくるような重要な役だったので、ゴードンの魂の言葉にどうやって自分の魂を乗せていくかを考えて……小細工せずにウソのない言葉を乗せていく、ストレートな芝居しかないなと思ったんです。
ルフィとシャンクスがとにかくかっこいい
──谷口監督はどんな風にディレクションされる方なのでしょうか?
津田 役者に余計な圧を感じさせないように、ラフでフレンドリーに接してくださるのでとてもありがたいです。「こんな感じでやってみましょうか」とまずはやってみて、違っていたら修正してくださるといったやり取りが多かったかもしれません。
──シャンクス役の池田秀一さんとアフレコでご一緒されたそうですが。
津田 シャンクスという役柄もあって、いい感じにふわっと力が抜けていらっしゃって……その中で、繊細なお芝居を丁寧に丁寧にされている。大ベテランの池田さんが、そうやって真摯にキャラクターと向き合っていらっしゃる姿がとても印象的でした。
──名塚佳織さんが演じるウタの印象はいかがでしたか?
津田 一見とてもポップで明るい雰囲気の女の子ですが、今作の柱となるくらいですから大きなドラマを抱えていて……いろんな側面をもつウタというキャラクターが、楽曲でも表現されていたような気がするんです。新しい側面が見えるたびに「あ、ウタってこういう子なんだ」と思った、意外性のあるキャラクターでしたね。
──本作を通じて、津田さんご自身が特にグッときたポイントは?
津田 ルフィとシャンクスがかっこいいんですよね~。もう、かっこいいんですよ(笑)。かっこいいキャラクターが、きちんとかっこよく物語を導いてくれる。そういう意味でも期待を裏切らないし、カタルシスが凝縮されていくので、これまで『ONE PIECE』を応援してこられた方も、新しく『ONE PIECE』を観た方も楽しんでいただけると思います。
これまで出てきたキャラクターたちが、いろいろな活躍をするのも見せ場のひとつですよね。お気に入りのキャラクターがいらっしゃる方にも満足度の高い作品になっていると思います。
──津田さんはどのキャラクターが気になりましたか?
津田 バルトロメオ(声/森久保祥太郎)がすごく目立っていましたね(笑)。大事なところでドタバタやっていて……祥ちゃんがすごくイキイキと演じていたので、楽しいシーンになっていました。面白かったです(笑)。
それと、やっぱり麦わらの一味を演じるみなさんの安定感がすさまじかったなあと思います。いるだけで安心感があるというか、共演できるのが単純に嬉しくて(笑)。張りきってるチョッパー(声/大谷育江)とかも「本当にかわいいなあ」って思っちゃいますよね(笑)。
津田健次郎が『ONE PIECE FILM RED』から得たもの
──今作に参加されたことであらためて感じた『ONE PIECE』の現場ならではの空気感などはありましたか?
津田 基本的にはみなさん本当に和気あいあいとしていて、すごく楽しい現場なんですが、ここぞというとき、「絶対に外せないぞ」みたいな見せ場に差しかかったときの緊張感がすごいんです。「一発でOKを出す以外ないよね」みたいな空気が流れる、そのメリハリが素敵だと今回も思いました。
特に今作は……僕が勝手にそう思っていただけかもしれませんが、最初から劇場版に臨むエネルギーみたいなものがみなぎっていた感じがあったかなと思います。
──メリハリというのは麦わらの一味をはじめ、『ONE PIECE』に出てくるキャラクターたちにも通じるものがありますね。
津田 本当にそうなんですよ。普段はおちゃらけているのに、ここぞというときはビリビリと闘気を放ったり、普段はスカしてるのにいざというときはアツくなったり……根幹のところはみんなアツいので、そこにかっこよさを感じるんでしょうね。
どんなに大ベテランのみなさんでも、全力でお芝居に向かわれる。そうすると、物語自体のエネルギーもどんどん高まっていくので、カタルシスが生まれますよね。
──そういった思いを経て、あらためて『ONE PIECE FILM RED』から津田さんが得たものとは?
津田 「芝居は楽しいぞ」という原点に立ち返ったことですかね。手を抜かずに、真摯にセリフやキャラクター、物語に向かっていく。すごくシンプルな、お芝居の原点みたいなものが収録現場にあったような気がします。そこに身を置いて、あらためて「お芝居ってやっぱりこういうところが楽しいんだ! めっちゃしんどいけどね」っていうことを実感しましたね……しんどければしんどいほど楽しいなあって。
最近、個人的にもお芝居の原点みたいなことをずっと考えていたんですが、『FILM RED』で原点に触れさせていただいてとても幸せでした。最強のスタッフと最強のキャスト陣で、新しい『ONE PIECE』の扉を開いていく。それこそが冒険でもあると思うので、ぜひ劇場に足を運んでいただければと思います。音楽にもすごく力が入っていますので、映画館がライブ会場みたいになるシーンもあると思います。お楽しみください!
取材・文:とみたまい
撮影:源賀津己
『ONE PIECE FILM RED』
8月6日(土)より全国公開
(C)尾田栄一郎/2022「ワンピース」製作委員会
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