手負いの川崎F、首位横浜FM戦へ、鬼木監督「一番自信を持って送り出せる」
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谷口彰悟(川崎フロンターレ) (C)J.LEAGUE
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すべて見る下馬評は横浜F・マリノス絶対有利である。『明治安田生命J1リーグ』第24節・川崎フロンターレ×横浜FMはアウェイチームを推す声が圧倒的だ。首位を走る横浜FMは14勝6分3敗・勝点48、ここ9試合負けなしである。2試合消化ゲームが少ない川崎Fは11勝4分6敗・勝点37の5位。直近8試合を2勝2分4敗と負け越している。
そして先週、川崎Fは新型コロナウイルス感染症の陽性者が続出した。7月30日に行われた『明治安田生命J1リーグ』第23節・浦和レッズ戦ではGK3人がベンチ入りする登録メンバー16人で試合を強行した。意地を見せるも、結果は1-3。GK4人体制で何とか18人を揃えた8月3日の『JリーグYBCルヴァンカップ』プライムステージ準々決勝・セレッソ大阪戦は試合終了間際に同点とされて1-1。『明治安田J1』第23節からフィールドプレイヤーを総入れ替えし『ルヴァンカップ』準々決勝第1戦に臨んだ横浜FMとはコンディションに雲泥の差がある。
それでも川崎F率いる鬼木達監督は「一番自信を持って送り出せるくらいの状況だと思っている」とキッパリ。決して強がりではない。8月5日のメディア対応で指揮官は手応えを感じていた。
「全員の気持ちをひとつにして戦うこと。やり方とか、色んな云々あるが、気持ちと気持ちのぶつかり合いだと思っている。浦和、セレッソと戦い、その思いが強くなった。マリノス戦は色んなイレギュラーな状況があるが、すごく期待ができる状況だと思っている。一番自信を持って送り出せるくらいの状況だと思っている。
あとやるしかない。選手一人ひとりの気持ちを感じるし、疲労で言うとマリノスと比べると全然苦しい状況だが、そこではない。人が成長する瞬間、チームが成長する瞬間はこういうものだと言えるゲームをしたい。選手たちには自分たちの限界を超えるゲームをしていってほしい」
鬼木監督は根性論を持ち出しているわけでもなく、現実から目を背けているわけでもない。
「『ルヴァンカップ』で全員でやれることをやって、結果的に最後失点して引き分けになってしまったが、全員で意思統一すればこういう風にできるんだと思った。選手たちは最後引き分けでショックを受けていたが、自分はいいものを見せてもらったと思っている。マリノス戦へのいい準備になっている。いい準備をしていいゲームに臨めるのではと感じている」
C大阪戦で選手たちの覚悟が見られたと言う。
「一番は覚悟の部分。浦和戦が終わって覚悟が足りないと感じたので、覚悟と言うかやるべきことがハッキリしてきたと言うか、より貪欲に求めていくことでチームが変わっていくと感じた。前線は新しい選手、(特定指定選手の山田)新が入って、みんなが意思統一すればああいうゲームはできる。勝つために何が今必要か全員が考えて戦えたゲームだと思う。徹底してやれたと思う。やり続ける強さと言うか、マリノスにはこうやるということを共有してやれればいいゲームができると思うし、自分たちの力で勝利というものを取りたい」
監督は大一番に向けてメンタルの大事さをたびたび口にした。
「気持ちの部分。大一番だと思っているし、大きなポイントになることは間違いない。このゲームに勝ったからと言って優勝が決まるわけではないし、負けたからと言って優勝がなくなるわけではないが、大きな分岐点になるので意識して大一番に臨みたい」
さらに次節は相手の出方を伺うのではなく、自分たち次第だとコメントした。
「マリノスは変わらず自分たちのサッカーをやり続けているので、そこの力強さがある。ただこのゲームは自分たち次第だと思っている。自分たちがいかにアグレシップに自分たちのサッカーをやるかにかかっていると思う」
CB谷口彰悟主将も自分たちフォーカスの姿勢に同意する。
「マリノスを見ていて、いい空気でやれているんだろうなとすごく伝わる。色んな選手を替えながら勝っているので、いい流れなんだろうなと伝わる。しっかり力があって、今乗っているチームを相手にするのは簡単ではない。頭でわかっていても上回られてしまう。そこでひとつ受けないことが大事かなと思っている。彼らのことを怖がって受けてしまうとどんどん彼らが乗ってくる。彼らもフロンターレのサッカーの嫌なところはある。みんなが自信を持って戦えられれば、結果は残せると自分は思っているので、あとは信じていい準備をしたい」
谷口は『EAFF E-1 サッカー選手権 2022』決勝大会をともに戦い、横浜FMの選手たちの良さを再確認した。
「マリノスの選手はやっぱり、動きが止まらない。常に動きながら、背後とか相手の嫌なところ嫌なところを常に狙うところが習慣化していると一緒にトレーニングして素直に感じた。一緒にやった選手もたくさん出ると思うが、気持ちよくやらせるわけにはいかない。こっちも意思を持って戦いたい」
コンディションの差は十分理解している。
「コンディションがしんどいのはもちろん、万全とは言えないが、次は大一番。モチベーションは高い。体はきついかもしれないが、頭とか試合への準備はしっかりできていると思う。コンディションの差は頭に入っている。受けてしまうと、マリノスの良さがどんどん出てくると思うので、簡単に受けないのが大事。自分たちのストロングを出さないとイケイケでやられてしまうと思うので、こっちが先制パンチを当てられるようなゲームをしたい」
強い横浜FMに勝つことで乗っていけるとキャプテンは言う。
「マリノスは今首位を快走しているチームなので、まず直接対決で勝って少しでも差を縮めたいし、そういうチームに勝てれば自分たちも乗っていける要素になる。もちろん、まだまだ優勝は諦めていないし、ここで叩いて乗っていこうという思いは強いので、そういう試合をしたい」
GKチョン・ソンリョンは横浜FMのスピーディな攻撃を警戒する。
「首位を走っている本当に強いチーム。一人ひとりいい選手が揃っていてスピードがある。カウンターのスピードもある。強いマリノスとの試合に向けて、いい準備をしていきたい。GKとしていいカバーをすることや試合に入る前にコミュニケーションを取るなど、GKとしてできることの最善を尽くすだけ。
戦術としてマリノスはGKとDFの間にクロスを入れてくるので、それを簡単にやらせてはいけない。相手も色々と手を尽くしてくると思うが、最善の準備、最善の努力をしていくだけ」
ソンリョンは浦和戦、C大阪戦でのクロスからの失点を反省した。
「浦和戦の後もコミュニケーションを取って改善しつつある。後ろが耐えていればいい道が開けると思う」
守護神はチームがひとつになることの重要性を力説した。
「試合に出る選手、出ない選手、競技場に来られない選手、すべてがひとつになって試合に臨んでいる。(C大阪戦後の)切り替えもできている。選手も徐々に帰って来ている。コーチ、スタッフもひとつになって戦っている。1日1日いい準備ができている。
こういう苦しい状況でも全員の力を出し切って、監督の指示のもと、監督は選手を信じ、選手は監督を信じ、すべて出し切ることが大事だと思う。1試合1試合少し戦い方が変わることもあるが、コーチ陣が練りに練っている戦術を信じ、1試合1試合最善を尽くしていくだけ」
一方横浜FMの不安材料は皆無だ。第21節・C大阪戦、第22節・サガン鳥栖戦と2試合連続2-2に終わったが、2位鹿島アントラーズとの首位攻防戦に快勝し、嫌な流れは断ち切った。37分相手GKのキックを岩田智輝が跳ね返すと、エウベルがアンデルソン・ロペスとのパス交換から一気にゴールを陥れた。51分にはFKの跳ね返りを岩田がそのままミドルシュート、DFに当たり追加点となった。17本ものシュートの雨を降らした横浜FMに対して、鹿島のシュートはわずか2本。2-0で鹿島から16年ぶりとなるシーズンダブルをやってのけた。
3日前の『E-1』韓国戦で右ひざ前十字じん帯断裂の大ケガを負った宮市亮へのメッセージ入りユニフォームを着て入場した選手たちは試合後、再び背番号17のユニフォームを着て宮市を迎え入れるなど、雰囲気はすこぶるいい。8月3日・サンフレッチェ広島との『ルヴァンカップ』準々決勝初戦は1-3で落としたが、前記の通り先発10人を入れ替えて疲労の蓄積はなし。流れは完全に横浜FMにある。
リーグ戦の通算成績は川崎Fが16勝7分14敗とリード。昨季まで3勝1分の4試合負けなしだったが、第2節は2-4。57分にエウベルの打点の高いヘディングシュートから58分・仲川輝人、64分・エウベルと7分間での怒涛の3ゴールは強烈に印象に残っていることだろう。試合後、ケヴィン・マスカット監督は「(2-2に終わった開幕戦の)C大阪戦のあと、『結果は大事だ』と言ったが、もっと大事なのは内容。自分たちのパフォーマンスをピッチで表現できれば、どのチームも止められない。内容があって、結果も付いてくると考えている」と胸を張った。
果たして、川崎Fはリーグ戦でもカップ戦でも望みをつなぐことがでるのか、それともこのまま後退を余儀なくされてしまうのか。『明治安田J1』第24節・川崎F×横浜FMは8月7日(日)・等々力陸上競技場、『ルヴァンカップ』準々決勝第2戦・川崎F×C大阪は8月10日(水)・等々力にてキックオフ。横浜FM戦のチケットは予定枚数終了、C大阪のチケットはチケフロ(Jリーグチケット)にて発売中。横浜FM戦の模様はDAZN、C大阪戦の模様はフジテレビONEにて生中継。
取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)
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