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杉野遥亮は迷わない「大事なことって意外とシンプルなのかもしれない」

映画

インタビュー

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杉野遥亮 撮影:奥田耕平

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抜け出したいけれど抜け出せない心境が、テラノとリンクした

映画は、俳優にとってタイムカプセルのようなものだと思う。撮影から公開まで1年以上の時間を要することも珍しくない。ひと目にふれる頃には、スクリーンにいる自分はずっと以前の自分だったりする。完成した作品を観るのは、俳優にとって一生懸命役と向き合っていた過去の自分を掘り起こす作業となる。

「だから、自分の演技を見るのが嫌だなと思うこともあります。でもそれにも意味があるんだと思いながら、こうやって今も取材を受けています」

そういたずらっぽく笑って答えた杉野遥亮が、今回掘り起こしたタイムカプセルは8月19日(金) 公開の映画『バイオレンスアクション』。普段はゆるふわ専門学生。でも実は凄腕の殺し屋・菊野ケイ(橋本環奈)。とびきりキュートで、とびきり強い最強のヒットガールの活躍を描いた本作で、杉野遥亮はヤクザの金庫番・テラノを演じている。

「この作品を撮っていたのは、舞台『夜への長い旅路』や映画『やがて海へと届く』のもっと前なんです。どうやって役と向き合っていくかを模索していた時期でした。もっと何かできることがある気がする、やりたいことがある気がすると思いながらも、それが何なのかはまだわからなくて探している最中でした」

役づくりについても、どんなスタンスで臨むべきか、当時はまだ迷うことが多かった。

「当時はまだちゃんと役のバックボーンとかそこまで考えられていなかったと思います。どちらかと言うと、意識していたのは外側の部分でした。やっぱりヤクザだし、眉間に力を入れてやった方がそれっぽく見えるかなとか、この一行の台詞にどこまで感情を込められるだろうとか、そういう外側の見え方を気にしていた時期でした」

経験を重ねて、今は役づくりのアプローチもずいぶん変わった。

「今は外側より内面重視です。ちゃんと内面をどれだけ積み上げていけるかが芸術だなって考えるようになりました。そういうふうに考えるようになったのは、やっぱり舞台をやってからだと思います。役に寄り添うことを考えられるようになってから、芝居が変わった実感があります」

だが、それは決して昔の自分を否定しているわけではない。

「昔の自分を見て、今の自分は成長したなとは感じます。でもこうやって時間が経って振り返ってみることで、俳優として抜け出したいけれど抜け出せない心境が、ヤクザから足を洗いたいけれどできないテラノという人間にうまくリンクしていたところはあったのかなとも思っています。あのときの自分にしかできないテラノだった気はしています」

ルールが好きではない杉野遥亮が、自らに課した仕事のルール

見た目はピンクのボブヘアがトレードマークのゆるふわ女子。でも実は殺し屋というギャップがケイの魅力。自身もギャップがあるかと聞いてみると…。

「ギャップがあるって言われますよ。しょっちゅう言われています。天然と言われることもありますし、めっちゃカタいと言われることもありますし、真面目と言われることもあります。でもどれも受け取り方次第ですから。人ってつい枠組みに当てはめようとするじゃないですか。僕はその場その場で自分の感情が動く通りに生きているだけなんです」

特に表に立つ人間ほど、一部だけを切り取ってイメージを固められることもある。

「そのことに悩んだ時期もあったけれど、そのように受け取るのであればそれでもいいですし、そこを気にしていても仕方がないので、今はもういいかって思っています。僕は楽しかったら楽しくなるし、何かと戦っていたら悔しいと感じることもあります。自分の心が動くことに正直であれたらいいなと思うようにしています」

テラノが生きる極道の世界では「ルール」という単語がしばしば登場する。これもまたポジティブに受け取る人もいればネガティブに捉える人もいる言葉だ。

「僕はあんまり好きじゃないです。縛られる感じがします。もちろん必要なルールもあるけれど、できるだけとらわれすぎないでいたいなというスタンスです」

ただ、仕事においては別。本気で取り組んでいるからこそ、自らに課すものはある。

「現場には仕事をしに来ているんだということを忘れないようにしています。もちろんみんな楽しそうにやっているのを見るとブレそうになるときはあります。でも、僕にとってその場を楽しむということは、みんなとワイワイすることではなくて、演技を楽しむことです。それが僕の仕事だと思っているんです。そこはブレたくないといいますか、ルールとして課しているところはあるかもしれないです」

実は、もっと若い頃の杉野遥亮は逆だった。かつて取材でも「演じることを追求するというより、どちらかと言うと人と話したりつながることが好きだった」と語っていた。

「それを楽しいと思う自分もいましたから、気持ちはわかるんですけれど。でも、少なくとも僕はそういう時期は終わりました。今、僕がやりたいのは演技ですし、現場の楽しみは演技ですから。そうやっている自分を場違いなんじゃないかと不安になるときもありますけれど。こういう僕に声をかけてくださる素敵な先輩たちも居てくださります。そういう方々のおかげで、今の自分は間違っていないんだ、このまま進んでいけばいいんだと自分を信じられています」

一生懸命生きることが、役を魅力的にする

1作品、1作品、誠実に向き合い、経験を財産に変えてきた。芝居が好きだというブレない軸ができた今だからこそ、これからの道にも膨らむ夢がある。

「いずれは社会派の作品をやってみたいなという気持ちはあります。もっと内面をえぐられるような作品に出たいです。それは人が好きだから。人が好きだからこそ、もっと深い内面のところまで知りたいんです。」

だがその一方で、遠い未来に想いを馳せるのではなく、今この瞬間にできることにベストを尽くすという信念も持ち合わせている。

「社会派の作品をやろうと思ったら、もっと僕自身が社会とか政治について知らなきゃいけないと思っています。きっと今いただけている役は、今の自分に合っているからだと思います。だから、あれこれ先のことを考えるよりも、与えられた役をどう深くしていくのか、どう魅力的にしていくのかに全力を注ぐことが、今の自分のやるべきことなんだと思っています。」

役を魅力的にするために、俳優がすべきことは何か。そう尋ねると、間髪入れずに答えが返ってきた。

「もう向き合うことしかないです。あとは、一生懸命生きることです。一生懸命生きている人は演技にちゃんとそれが出ていると思います。僕が素敵だなと思う先輩方は、いろいろ自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分で感じて、その都度自分にとっての正解をちゃんと自分で選んでここまで歩んでこられています。その積み重ねが芝居を深くするし、存在感になるのだと思います」

そう先人たちをリスペクトするからこそ、杉野遥亮も流されない生き方を目指す。

「僕たちの世代はSNSがあって、そこを覗けばいろんな情報が転がっています。それを見て、その中の正解らしきものに自分を押し込んで生きていったら、きっと毎日は楽だと思うんですよ。でも、僕にはそれができないんです。不器用でも、自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分で感じて、自分の足で歩いていくしかないと思っています。」

模索の時期を経て、杉野遥亮の言葉は確実にシャープになっている。

「本当ですか。自分ではわからないですけれど、確かに年々シンプルになっているとは思っています。今年の2月に『ミロ展−日本を夢みて』のナビゲーターをさせていただいた時、実際に展示も見させてもらったんですけれど、晩年に近づくほどミロの表現もシンプルになっていったんです。なぜかそれにすごく共感したんですよね。自分もここ数年、ずっと削ぎ落とすということを意識していました。大事なことって意外とシンプルなのかもしれないと気づいたです。結局やることってシンプルです。楽しいかどうか。好きか嫌いかでしかないんです。自分というものがわかってきたおかげで迷わなくなりました」

きっとこの言葉も、未来の自分へのタイムカプセルとなるだろう。大事なことに気づいた杉野遥亮は、ただシンプルに芝居を追求し続ける。

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取材・文:横川良明、撮影:奥田耕平、ヘアメイク:HORI(BE NATURAL):スタイリング:伊藤省吾(sitor)

ぴあアプリでは杉野遥亮のアプリ限定カットをご覧いただけます。ぴあアプリをダウンロードすると、この記事内に掲載されています。

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