Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > ぴあ映画 > King & Prince・髙橋海人が映画『アキラとあきら』で見せた“存在感”。現場レポート④

King & Prince・髙橋海人が映画『アキラとあきら』で見せた“存在感”。現場レポート④

映画

ニュース

ぴあ

『アキラとあきら』

続きを読む

フォトギャラリー(5件)

すべて見る

池井戸潤の同名小説を、竹内涼真、横浜流星のダブル主演で映画化した『アキラとあきら』が8月26日(金)より公開された。対照的な宿命を背負ったふたりの若者が、情熱と信念を武器に現実に立ち向かう大逆転エンタテインメントで、髙橋海人は横浜扮する階堂彬の弟・龍馬を演じる。さまざまな思惑や葛藤が入り混じる重要なシーンで、髙橋が見せた存在感とは? (『アキラとあきら』現場レポート全4回中第4回)

髙橋海人の意外にして納得の役どころ

俳優としては、2018年の『部活、好きじゃなきゃダメですか?』(NTV)でドラマ初出演。以後、テレビでは『ブラック校則』(19/NTV)、『姉ちゃんの恋人』(20/KTV)、『ドラゴン桜』(21/TBS)と出演を重ねて、『未来への10カウント』(22/EX)での好演も記憶に新しいKing & Prince・髙橋海人。

そんな彼の映画初出演となったのは、ドラマとメディアミックスで展開されたSexy Zone・佐藤勝利主演の『ブラック校則』(19)。佐藤演じる小野田創楽の親友で、空気を読まず、周囲を驚かせる行動に出る高校生・月岡中弥に扮して輝かしい魅力を見せた。

その際のインタビューで、「僕のグループではこの1年でメンバーもたくさんの作品に出ていて、自分はそれを観に行く側で、そんな彼らの姿を見るのが嬉しかったんです。でも、正直心のどこかで自分も作品に出てみたいなという思いがあって。それが今回、こうした形で叶ったのですごく幸せです。出させていただくからには、主役を立てつつ、自分も作品で輝きたい……と、そんな野心を内に秘めながら、撮影に挑みました(笑)」と語っていた髙橋(『ぴあMoive Special 2019 Autumn』)。

満を持しての2作目の映画となる『アキラとあきら』における髙橋の役どころは、意外にして納得と言えるかもしれない。演じる階堂龍馬は、山崎瑛(竹内涼真)と合わせてタイトルロールとなっている階堂彬(横浜流星)の弟。老舗の大手海運会社・東海郵船の御曹司で、優秀な兄に対しコンプレックスを抱き、跡継ぎの座を下りて銀行員となった兄に代わって、若くして社長に就任するという人物だ。

バラエティやステージなどで見せる、明るく自由で無邪気な髙橋のイメージからすれば、意外な役どころ。しかし、それこそ前に紹介したコメントで吐露していた髙橋の心内からすれば、どこか龍馬と重なるところもあって、納得の役どころだとも言える。では、今回の『アキラとあきら』において、髙橋はどんな「野心」を胸にして撮影に挑んでいたのだろうか。

“俳優・髙橋海人”としての強みと魅力

本作がクランクインを迎えたのは、東京2020オリンピック競技会の競技開始を翌日に控えた2021年7月20日。まずは竹内と横浜のシーンを中心に進められ、髙橋が撮影入りしたのは8月2日。階堂家の大広間で親族や関係者を招いての東海郵船創立110周年記念祝賀会が開かれているというシーンで、劇中においても成長した龍馬の初登場となる場面だ。

ロケ場所は、東京・千代田区のホテル。まさに祝賀会といった雰囲気で円卓と豪華な料理が並び、本シーンに登場する髙橋、横浜、父・階堂一磨役の石丸幹二、母・階堂聡美役の戸田菜穂、そして叔父・階堂崇役の児嶋一哉、階堂晋役のユースケ・サンタマリアのほか、参加者・給仕役の約40名のエキストラがスタンバイ。

隣り合った石丸や戸田と言葉を交わして、三木孝浩監督も交えて話す中、段取りスタートということで、この日がインの髙橋をスタッフが一同に紹介。髙橋は「よろしくお願いします」と、1カ所だけでなくきちんと全方向に向き直しながら頭を下げていた。

『アキラとあきら』

少し緊張している様子も漂わせていたが、それでも臆していたり、こわばったりしているわけではない。例えは悪いかもしれないが、子供が初めての場所に連れて来られて、戸惑っているような印象でもある。

しかし、好奇心と行動力が勝る子供にとっては、戸惑いなんて最初のうちだけだ。児嶋の紹介で、スタッフがお約束の「大嶋さん……」という振りをすると、児嶋はすかさず、「児嶋だよ!(笑)」。このやりとりには髙橋も大笑い。また、段取り後には、横浜、石丸、児嶋、ユースケと輪になっていて、年齢の話やジャニーズ事務所入所の話など、場の話題の中心ともなっていた。

そして芝居に入れば、その表情も雰囲気もまたガラッと変わる。屈託のない素顔の髙橋と違って、龍馬には鬱屈や屈折がつきまとう。叔父たちがパーティーで持ち出した、リゾートホテルの新たな事業計画。「俺は面白いと思うけどな」と龍馬は感想を述べるが、一磨は彬に意見を求める。その際のふてくされたような受けの態度。また、「不動産は“買い”なんだし」という場面のキザな手振り。そして、「なんで兄貴に聞くの?」と父にぶつける際の怒りを押し殺して哀しみを噛み殺すような表情。

そのどれもが監督が演出で指示してつけたものではなく、髙橋が芝居をする中で自ら出してきたものだ。そして、気づかされる。髙橋の佇まいに子供っぽさがあったとしたら、それは龍馬が子供だからなのだ。もちろん、髙橋自身にもそうしたかわいらしさはある。ただ、今この場では、明らかに龍馬なのだ。

しかも、それが過剰じゃない。やろうと思えば、もっと嫌味にも、もっと情けなくも振れるキャラクターだろう。しかし、精一杯、自分を示そうとしている龍馬を真っすぐありのまま等身大に表現していて、だからこそ龍馬という人間のかわいらしさや哀れさ、怒りや哀しみが伝わってくる。ありのままのその人を等身大で表現する。それが俳優としての髙橋海人の強みで魅力なのかもしれないとも気づかされる。

素顔の印象が朗らかで自然体というのも、彼自身が何事にもバイアスをかけず、フラットにすべてを見て、それこそありのまま等身大に臨んでいるからだろう。嘘や飾りや気取りがない。演技においてもそれは同じで、演技を通して表現される人物においてもまた同じ。

「また皆さんとお仕事できるように頑張りたい」

そんな髙橋の最後の撮影となったのは、9月4日。東京・千代田区の会社ビルの一室を借りてのロケだ。

東海郵船・社長室のシーンながら、監督からはスーツのシャツの第1ボタンを開けて、ネクタイも緩めてほしいという指示が入る。それというのもここでの龍馬は、いよいよ社長にはなったが、会社が窮地に追い込まれ、プレッシャーもあって疲労困憊している状況。そしてついには幻聴にさいなまれ、叫び声をあげながら倒れ込んでしまう。最後になんとも難しく大変なシーンが待ち受けていた。

頭を抱えながら、「うるさい! うるさい! 黙れ!!」と声を上げる龍馬。まさに悲痛な叫びだ。シーン内のすべてのカットを撮り終えたところで、スタッフから「ということは……」と髙橋のアップを伝えるコール。

髙橋は、「お疲れさまでした。ありがとうございました。間が空いた撮影だったんですけど、あっ、明日は社長になれるんだなとすごいワクワクしながら頑張っていました。最後のシーンも燃え尽きたなって感じで、楽しくやらせていただきました。この熱い作品に僕を呼んでいただき、本当にありがとうございます。また皆さんとお仕事させていただけるように頑張るので、よろしくお願いします」と締めくくった。

監督から花束が渡されて、笑顔を見せていた髙橋だったが、実は『ブラック校則』の際のインタビューで、好きな映画として挙げていたのがこの作品。「『ソラニン』(10)です。ちょうどバンドにハマっていた時期に観た作品で、音楽系の映画をチェックしていた中でこの作品に出会いました。この作品で映画はハッピーエンドがすべてではないと学んだし、原作の再現度の高さに本当にびっくりして。今でも自分の中で、“『ソラニン』を観たいキャンペーン”がやって来るので、2カ月に1回は鑑賞しています!」(『ぴあMoive Special 2019 Autumn』)。

言わずもがな、『ソラニン』のメガホンを取ったのは、『アキラとあきら』の三木孝浩監督その人。合間に監督自身から、『ソラニン』の話も聞かせてもらったそう。

宿命という名の下に縛られた自分の人生に、そして宿命という名の下に結ばれた盟友の人生に共に立ち向かう。『アキラとあきら』はそんな映画となっているが、その中で髙橋海人が見せる存在感。今度は『アキラとあきら』が髙橋のファンにとっても、また観た人すべてにとって、なにかを学べ、なにかに驚かされ、そしてかけがえのない作品となるはずだ。

『アキラとあきら』

取材・文:渡辺水央



『アキラとあきら』
上映中

(C)2022「アキラとあきら」製作委員会

フォトギャラリー(5件)

すべて見る