精緻な版画技術と革新的な表現が融合した新版画240点を公開『新版画 進化系UKIYO-Eの美』9月14日より開催
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川瀬巴水 《東京十二ヶ月 谷中の夕映》 大正10年(1921) 千葉市美術館蔵
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すべて見る江戸時代に隆盛を極めた浮世絵版画の伝統的な技術と美意識を継承し、大正から昭和の初めにかけて興隆した「新版画」。その歴史を辿る展覧会が、9月14日(水)から11月3日(木)まで、千葉市美術館で開催される。充実した新版画コレクションを誇る同館は、これまでも各作家の回顧展を開催してきたが、「新版画」としてまとめて紹介するのは、今回が初となる。
伝統を受け継ぐ新版画は、浮世絵版画と同じく「絵師・彫師・摺師」による分業で制作される多色摺の木版画だ。だが、その伝統と、同時代の画家による清新な表現を合わせようとした版元・渡邊庄三郎のもとには、洋画や日本画、水彩画など幅広いジャンルの画家たちが集い、自由な画題のもと、個性あふれる新しい画風を生み出していくこととなった。
昭和に入って、いくつもの版元が参入して大きな流れとなり、また1920年代以降はアメリカを中心に海外でも人気を博した新版画には、多くの作家が関わっている。同展でも27人の作家が紹介されるが、なかでも大きな見どころは、新版画の美人画を代表する作家・伊東深水と橋口五葉、また情趣あふれる日本の風景を描いた川瀬巴水、そして洋画の表現を版画にもち込み、光や大気をリアルにとらえた吉田博など、新版画における花形作家たちの競演だろう。
同展のもうひとつの注目点は、明治末期に来日して日本の職人とともに木版画を制作したヘレン・ハイドとバーサ・ラムによる、新版画の先駆ともいうべき作品が約50点紹介されること。
さらに、個性的な役者絵を描いた山村耕花や吉川観方、昭和初期のモダンガールを鮮烈にとらえた小早川清など、新版画の多彩な画題の発展の様子も見てとることができる。
同展の出品総数は、約240点。千葉市美術館のコレクションから選りすぐった作品群で、新版画の先駆から成立、そしてさらなる発展へと至る濃密な歴史をたどると同時に、精緻な版画技術と個々の作家の革新的な表現が融合した新版画の精華をじっくりと味わいたい。
【開催概要】
『新版画 進化系UKIYO-Eの美』
会期:2022年9月14日(水)~11月3日(木・祝)
会場:千葉市美術館
時間:10:00~18:00、金土は20:00まで(入場は閉館30分前まで)
休館日:10月3日(月)、 10月11日(火) ※11日は休室日
料金:一般1,200円、大学700円
公式サイト: https://www.ccma-net.jp/
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