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『PLAN 75』早川千絵監督、短編映画から長編映画への制作過程を語る!

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PFFスペシャル映画講座『PLAN 75』より

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現在開催中の「第44回ぴあフィルムフェスティバル2022」で9月24日、スペシャル映画講座「『PLAN 75』短編版&長編版 日本に少ない、短編を長編にする試み」が開催され、講師として早川千絵監督、プロデューサーの水野詠子氏、ジェイソン・グレイ氏が登壇した。

『PLAN 75』は、是枝裕和監督が総合監修を務めたオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一編として発表された短編映画を長編として新たに作り上げた作品。少子高齢化が一層進んで近い将来の日本を舞台に、75歳以上が自らの生死を選択できる<プラン 75>という制度が国で可決された世界で、人々が「生きる」という究極のテーマにどう答えを出していくかを描いた物語。第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、カメラドールのスペシャルメンションに選出された。

もともと早川監督は、2017年ごろに長編映画の企画として考えていたという本作。しかしプロデューサーもまだ決まっていないという状況のなか、水野プロデューサーから『十年 Ten Years Japan』の企画の話を聞いて、長編作品のままプロットを送ったという。

そこから短編へとプロットを練り直すなか、早川監督が行ったのが、登場人物を絞ること。「もともと長編では5~6人が出る群像劇だったのですが、3人に絞ってプロットを提出したのですが、20分弱の長さでは、それでも多いと。最終的に、誰を選んだら『PLAN 75』というシステムを端的に表現できるのかを考えて1人絞ったんです」と過程を説明する。

早川千絵監督

水野プロデューサーも「短編映画というのは、伝えたいことを盛り込みすぎると、本当に伝えたいことが伝わらなく危険性がある。どれだけテーマにフォーカスできるか」とポイントを挙げると、早川監督も「削っていけばいくほど、研ぎ澄まされるというか、本質が見えてきて良くなる実感がありました。『削ってください』という作業は決してネガティブなことではないと思えました」と収穫が多かった作業だったという。

短編として作成した映画から、長編まではコロナ禍の影響もあり、約4年という歳月が流れた。早川監督は「長編の脚本を書くとき、最初のプロットから3人に絞って、それぞれの人物をチャプターで分けていたんです。でもある方から『それだと短編の寄せ集めで、長編にする意味がないのでは?』という意見をいただき、実際の映画のような形になるまで、何十回も脚本を書き直しました」と語ると「最初は早く作らないと時代が変わってしまうかも……という焦りがあったのですが、コロナになって世の中が作品の世界に近づいてきてしまった。現実がフィクションを超えてしまったと感じで恐ろしくなって、脚本をまた練り直したんです。当初は問題を提起して不安をあおるような感じだったのですが、コロナを経験して、これ以上不安を作りたくないと、希望を見出す形にしました」と試行錯誤の連続だったという。

本作は、日本・フランス・フィリピン・カタール合作映画となった。この点について水野プロデューサーは「最初から合作を想定していた」と語ると「この作品はユニバーサルなテーマだと思ったので、海外のパートナーにも興味を持ってもらえるのでは」と作品の持つ可能性には自信があったという。実際、早川監督が作っていた短編映画は、海外パートナーを探すためには大きな助けになったようだ。

プロデューサーの水野詠子

主人公となる角谷ミチを演じた倍賞千恵子について、早川監督は「新人監督の一本目に出てくださって本当にありがたかったです」としみじみ語ると「でも私がビビってしまうことは分かっていたようで、とても気さくに接して緊張しないように配慮してくださいました。私も遠慮しては失礼だと思い、本気でぶつかっていきました」と撮影を振り返る。

さらに脚本を読んだ段階で早川監督に倍賞が「会いたい」と言ったというと、早川監督の人となりを知りたいことに加えて、倍賞自身のいまの姿をしっかりと監督に見てもらい、判断してほしいという意図があったという。「本当に素敵な方でした」と貴重な経験だったことを明かしていた。

取材・文・写真=磯部正和

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