高杉真宙、26歳の現在地「僕の人生は、今、“冒険編”です」
映画
インタビュー
高杉真宙 撮影:友野雄
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すべて見る年齢に自分が追いつかない感覚はずっとある
僕の人生の今は何章目くらいだろう。昔、そんな歌があったけれど、どんな人の人生にもそれぞれチャプターがあって、いろんな転機を挟みながら、人は次のチャプターへと進んでいく。
高杉真宙も今、ひとつのチャプターを駆け抜けている。取材が行われたのは7月。数日前に26歳の誕生日を迎えた高杉は「正直、自分の年齢に驚きが隠せない」と苦笑いをしながら、26歳になったばかりの心境を語りはじめた。
「年齢と自分とのギャップみたいな。年齢に自分が追いつかない感覚っていうのはずっとありますね」
26歳といえば、もう十分に大人として認められる年齢。だからと言って、自分のことを大人になったと思える人もそんなに多くはないだろう。高杉真宙もそうだ。
「僕なんかクソガキですよ(笑)。でも、みんなそうなんだろうなと思ってます。30代も40代も50代、60代もみんな自分のことをクソガキだと思ってると思うんですよ。でも、なんとか大人のふりをして生きている。きっと僕が今まで見てきた年上の先輩方も、年齢に合った立ち居振る舞いを必死に真似していくうちに、周りから見たら立派な大人に見えるようになったんだろうなって。僕もそうなれるように、ちゃんと生きていかなきゃと思っています」
26歳になったことへの感慨に含まれているのは、驚きか、喜びか、達成感か。そう尋ねると「驚きだけです」と答えたあと、少し考えて、こう付け加えた。
「あえて言うなら焦りとか。僕が初めて舞台に立ったのは中学1年生の夏。ちょうど今ぐらいの時期に稽古をしてたんですよ。ということは、僕は人生の半分はもうこの世界にいることになる。そのわりにはまだ何もなし遂げられていないというか。10年という月日が経っていると考えると、それが何かと言われたら明確には出てこないけど、もう少し何かあってもいいんじゃないかっていう焦りはあります」
今は1回目の挑戦権を与えてもらっているフェーズなのかな
だからこそ聞いてみたかった。俳優・高杉真宙は今、どのあたりのチャプターにいるのか。人生の半分を芸能の仕事に捧げた彼の現在地を知りたかった。
「第3部くらいじゃないですか。10部作の第3部。いや、もうちょっと短いかもしれない。6部作くらいの第3部かも」
そう真面目に分析する彼に、それぞれのチャプターに名前をつけてもらった。
「第1部が初心者編、第2部が第1次成長編とするなら、第3部は“冒険編”。漫画で言うといちばん熱い展開ですよね。盛り上がれ〜(笑)」
あえて自分を鼓舞するように、そうおどけてみせた。でも、そうやって茶化しながらも“冒険”という言葉を選んだことに、歩んできた道のりへの充実感が垣間見える。
「言い方が少し難しいですけど、挑戦する権利って誰しもに均等に与えられるものじゃないと思うんですよ。タイミングなんてみんなバラバラで。それまでの積み重ねがあって初めて、ここから挑戦していいよというチャンスをもらえる。たぶん僕は今、1回目の挑戦権を与えてもらっているフェーズなのかなと。そういう意味でも“冒険編”です」
冒険のゴールにあるものは、まだ明確には見えていない。だからこそ突き進むのだ、この先に何があるかを知るために。
「まずは30代まで走り切ることが、ひとつの目標です。30代になったら、またどうしていくかを考えていかなきゃいけないと思うので、20代はその準備期間。だから、20代のうちにいろんなことを経験したい。そのための挑戦の機会を今与えてもらっているんじゃないかなという気がします」
ラブストーリーで意識したのは見せ方とコミュニケーション
10月14日(金) 公開の映画『いつか、いつも‥‥‥いつまでも。』も、高杉真宙にとっては新しい挑戦のひとつなのかもしれない。演じるのは、ちょっと偏屈な若手医師・市川俊英。ある理由からひとつ屋根の下で共に暮らすことになった関口亜子(関水渚)と描く、ハートウォーミング・ラブストーリーだ。
「今までそんなにガッツリとラブストーリーをやってきていないんですよ。そういう意味でも、僕もこの年になって少しずつ年齢に合った役ができるようになってきたんだなっていう感慨はありましたね」
ラブストーリーを演じることについて「ムズいっすよ」と恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべる。意識したことは主に2つ。まずはラブストーリーならではの見せ方だ。
「どうしたら綺麗に見えるか。ある種、絵画のような感覚で捉えていて。この画角だったら、どの位置に立ってどう動いたら綺麗に見えるかなとか、そういうことを考えなきゃいけないのはラブストーリーならではですね」
そしてもうひとつが相手役とのコミュニケーションだ。
「関水さんとどれだけコミュニケーションをとれるかが、今回の僕の中のテーマでした。映画の8割がたが俊英と亜子ちゃんのシーン。そうするとこの2人の息の合っているんだか合っていないんだかわからないところがちゃんと出ないと成立しないだろうなと思ったんです。だから、関水さんとどれだけ話し合いながら作品をつくっていけるかは、今回いちばん気をつけていました。『今のシーン、やりづらくなかったですか』と聞けるだけでも大きいじゃないですか。特に僕の方が年上ですし、聞きやすい空気感づくりは意識していましたね」
芸人さんを立ち上がらせるくらい、ひと笑い起こしたい!
亜子は、俊英がひそかに想いを寄せていた相手にそっくりの女性。「完全にトシくんの一目ぼれですよね(笑)」と認めた上で、俊英の内面をこう分析する。
「まずは顔から入って、一緒に生活をしてく中で、自分にはない視点に惹かれていったんだと思います。何もない壁に絵を飾ろうとか、部屋にタンポポを運んできたりとか。そういうひとつひとつの出来事の中で、今のこの表情は良かったとか、より好きになれる部分を見つけていったんじゃないかな」
俊英は決して紳士的な人間ではない。口は悪いし、態度だってぶっきらぼうだ。でも、何気ない瞬間に亜子への優しさがこぼれている。
「本人が思っている以上に、トシくんの亜子に対する想いが熱いな厚いなという印象があって。じゃなかったら、あそこまで世話を焼かないと思うんですよ。他の人から見たら、そこまでしなくていいだろうというラインを、トシくんはひょいっと乗り越えている。それは、亜子への想いがあってのことだと思います」
他人に対してそっけない、低温動物のような俊英だが、亜子の前では声を荒げたりムキになったり、いろんな感情を見せる。その遠慮のないやりとりにも、この2人にしかない特別なものが感じられた。
「それはたぶん亜子ちゃんがどんな状況でも周りに対して感情を出せる子だったからなのかなと。亜子ちゃんに引っ張られるかたちで、トシくんもいろんな人に感情を見せられるようになった。亜子ちゃんははたから見るとかなりハチャメチャだけど、その危なっかしさも含めて、トシくんはいいなと思っていたんでしょうね」
最初こそ亜子の外見と中身のギャップに戸惑っていた俊英だが、いつしか気性の激しさも不安定さもすべてがチャームポイントになっていたというわけだ。では、高杉真宙自身は、理想と現実のギャップに戸惑った経験はあるだろうか。
「僕、喋るのが上手いとは思ってないんですね。本当に心の底からそう思ってるんですけど、あるとき、バラエティでの自分の喋りを聞いて、こんなにも早口なんだってビックリしました(笑)。たぶん心のどこかではもう少しちゃんと喋れてると思ってたんでしょうね。全然そんなことなかった(笑)。なんなら目線とかも泳いでいて。理想とのギャップがすごいなと思った記憶があります」
『ぐるぐるナインティナイン』のコーナー「ゴチになります!」にレギュラー出演するなど、最近は役を介さない高杉真宙を見せる機会も多い。バラエティの洗礼を受け、トークに対する苦手意識も随分と変わってきたようだ。
「ちょっとは成長してるんじゃないかなと思います。最近ちょこちょこ番宣でバラエティに出るようになりましたけど、ひと笑いはほしいって思うようになりました(笑)。僕が喋ったときに、芸人さんに立ち上がってほしいみたいなのはあります。笑われたいです!」
そんな野心も、人見知りの殻に閉じこもってばかりだった頃の自分では抱くこともなかっただろう。様々な経験を砥石にして、高杉真宙の人間性はどんどん磨かれていく。
この「冒険編」の結末を迎える頃には、どんな男になっているだろうか。次なるチャプターのページをめくるそのときはきっと、もっと凛々しく、もっとたくましくなった(でも、根っこの部分でシャイなところは変わらない)高杉真宙に出会えるはずだ。
取材・文=横川良明
撮影=友野雄
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