のん×門脇麦「のんちゃんは、私の1000万倍くらいブレない人」
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左からのん、門脇麦
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すべて見るもしもこの世とあの世の間の世界があったとしたら、人はそこで何を想うのだろう――。そんな大切な人との別れを描いた映画が『天間荘の三姉妹』だ。
原作は、髙橋ツトムの『天間荘の三姉妹 ―スカイハイ―』。「おいきなさい」の名台詞で知られる人気漫画『スカイハイ』のスピンオフ作品が、アニメーション映画『この世界の片隅に』の真木太郎のプロデュースのもと、『あずみ』『ゴジラ FINAL WARS』『ルパン三世』の北村龍平を監督に迎え、映画化される。
天界と地上の間にある街・三ツ瀬に迷い込んだヒロイン・小川たまえを演じるのは、のん。その姉・天間かなえを演じるのは、門脇麦。スクリーンに愛される2人の女優が、この切なくも美しいファンタジーで初共演を果たした。
互いに憧れとリスペクトを寄せ合う2人の、ほっこりトークをたっぷりお楽しみあれ!
私はこの世界を通過して早く天国に行きたい(笑)
――舞台は、天界と地上の間にある街・三ツ瀬。この世界観を聞いたとき、どう思われましたか。
のん 突然大切な人を失ってしまうのはとても悲しいです。私はいつも遺された方たちの気持ちについて考えたりお話を聞いたりしてきました。でもこの三ツ瀬では、亡くなった方の気持ちを描いている。中には突然すぎて自分が死んだことに気づいていない人もいる。私は、亡くなった方がその後どうしているかを考えたことがなかった。すごくびっくりしたし、心をえぐられるような衝撃がありました。
門脇 天界と地上の間にある世界って聞くと、おとぎ話のような世界をイメージするというか。きっと現実よりハッピーに暮らしている人が多いんだろうなって、これまでいろんな物語の中で登場してきたものを思い返しても、そういうものが多かった気がするんですけど。この映画で描かれている三ツ瀬はすごくリアルで、現実と全然変わらない。そういうところがすごく新鮮で面白いなと思いました。
――もし自分が三ツ瀬にいたとしても、なかなかこの世界に別れを告げて、天界へ行こうという踏ん切りがつかないなと思いました。
のん そうですね。私が演じたたまえは臨死状態で三ツ瀬に来て、そのまま魂が天界へ旅立つのか、現世に戻るのかを自分で決められる立場だったんですけど、やっぱりすごく居心地が良く感じてしまうんですよね。現世には自分の居場所がないと感じていたたまえが、三ツ瀬で家族と出会って、ここが自分の居場所だって思えるところを見つけてしまった。でも、自分はいつかここを去らなくてはいけない。想像しただけでも、すごく複雑な心境でした。
――門脇さんが演じるかなえは、恋人である一馬(高良健吾)との別れを迎えます。
門脇 現実で生きていても、大切な人を失うことはあるじゃないですか。なのに、死んでも、またそこから大切な人を失うんだって、不思議な感じでしたね。私だったら、2回も大切な人と別れたくない。だから、私はこの世界を通過して早く天国に行きたいなと思いました(笑)。
――作品を通して、生と死について考えるところはありましたか。
のん 突然自分の命を奪われたらって考えたら、やっぱりいろいろやり残したことがあるだろうなと思いました。もし私が三ツ瀬に行って、魂だけの状態になったら、きっと悔しくなると思います、自分が死んでしまったことに対して。
門脇 この地上からいなくなることは、あくまで肉体の死滅であって、魂の死滅ではない。死ぬって、心臓が止まることじゃないんだなって、当たり前のことなんですけど、改めて思いました。じゃあ魂が死ぬのっていつなんだろうと考えても、三ツ瀬の人たちのように最終的にこの世界から旅立つことを決めることが本当の死かもわからないし。結局死って、誰かがその人と魂からお別れすることでしかないのかもしれない。だとしたら、本当の別れって何だろうとか、そういうことは考えましたね。
麦さんは、気さくで、楽しくて、猫みたいな方
――お2人は初共演です。お互いに対してどんなイメージを持っていましたか。
のん 本当に素敵な役者さんだなって。だから、今回共演できるのがうれしくて楽しみでワクワクしていました。会うまでは、役者気質の、何て言うか…(と、言葉を選ぶ)。
門脇 (ズバッと)話しかけづらい感じね?(笑)
のん そう(笑)。気難しい方なんじゃないかなって思っていたんですね。それはもちろんいい意味で。現場で集中されている役者さんって私はカッコいいなと思っているので。でも実際お会いしてみたら、すごく楽しくて、気さくで、猫みたいな方だなと思いました。
門脇 猫?
のん 何て言うか、自分の時間がある。現場でもよくいろんなところで眠っていて、それも魅力的だなって思いました。
門脇 私、どこでも寝られるんです。支度部屋とか、メイク部屋とか、待機室とか。
のん こんなところで眠ってたんだっていう場面が何度かあって、それが素敵だなって。
門脇 とにかく地面が好きなんですよ。お行儀が悪いからしないですけど、できることならご飯も地べたで食べたい。ジベタリアンなんです(笑)。地面が好きすぎて、すぐごろっとしちゃう。で、気づいたら寝ちゃうんですよね。
――門脇さんの、のんさんに対するイメージはいかがですか。
門脇 私はみなさんが抱いているパブリックイメージと一緒で。可愛くて、ピュアで、天真爛漫な方なのかなと。でも実際お会いしたら、本当にストイックだし、考えていることがとても面白いし、クリエイティブだし、芯が強い感じがしましたね。ブレない感じがしました。
のん ありがとうございます(嬉)。
門脇 ひょっとしたら私の方がパブリックイメージ的にブレなさそうな印象を持たれているかもしれないけど、私の1000万倍くらいブレない。柱が太いんです。なのに軽やかなところがすごいなと思います。
麦さんだけの瞬発力をビシビシ感じていました
――そう感じた瞬間が何かしらあったんでしょうか。
門脇 一緒にお芝居をしていたらわかります。ご自身で映画も撮られているからか、考え方がつくり手側なんですよね。私とはまったく違う考えでこのシーンに取り組んでいるんだろうなという感じがすごくしたので、日々面白かったです。
のん 私は麦さんと演技してみたいと思っていたから、それが叶ってうれしかったです。麦さんのお芝居は瞬発力が面白くて。役柄もあると思うんですけど、お芝居が跳ねてるんです。そこに自分も乗っかれたときにすごく気持ち良くて、楽しかったです。
門脇 私、あそこのシーン好きだったな。のんちゃんが海辺を歩いていて、私が後から自転車でやって来て「イルカ、やっちゃう?」って声をかけるシーン。あそこは長回しで撮ったですけど、やっぱり長回しって生まれてくるグルーヴ感みたいなものがあって。それが、のんちゃんとやっていると、すごく心地よかったんです。もしかしたら音楽をやっているからっていうのもあるんですかね。
のん そうなんですかね。
門脇 音の間合いとかがとても気持ちいい方だなって。
のん うれしい。めちゃくちゃうれしいですね。そうなんだあ…(と、喜びを噛みしめる)。
――のんさんも、門脇さんの好きなシーンはありますか。
のん 私もそのシーンが好きですし、あとは門脇さんと高良さんが最初に2人で話してるシーンがすごく好きです。一瞬で2人の関係性が見えるんですよね。
門脇 あれ、クランクインだった気がする。
のん そうなんですか。めちゃくちゃ素敵なシーンだなって。仲の良さがリアルに垣間見えるというか。イチャイチャしてるふうなんだけど、かなえのちょっとツンとしてるキャラクターもよく見えて、めっちゃグッと来ました。
門脇 (微笑んで)うれしい。
のん かなえにこういう可愛いところがあったんだって。私の出ていないシーンだから、あとで完成した映画を観たときに、すごく温かい気持ちになりました。
門脇 かなえって普段可愛げがあまりない子だから、可愛いシーンは可愛くしておかないとねって(笑)。
のん 一緒のシーンでも、麦さんだけの瞬発力をビシビシ感じていたので、こういうかたちでお芝居をやれるのが本当にうれしかったです。
走馬灯って意外と些細な会話を思い出すのかもしれない
――では、質問です。物語の中で走馬灯が登場しますが、お2人がいつか走馬灯を見る日が来たら、どんな光景が浮かぶだろうなと思いますか。
門脇 仕事のことは思い浮かばないかもしれないですね。友達と過ごしたこととか、家族と過ごしたことが、バーッて浮かびますね、たぶん。
のん 私もそうかも。ディズニーランドに行ったこととか。
門脇 そうそう。そういうことだよね。
のん 今年の5月に初めてプライベートで行ったんですよ。
門脇 ディズニーランドに?
のん はい。仕事では行ったことがあったんですけど、裏動線で行くと全然雰囲気を楽しめないじゃないですか。だからそのときは楽しくなくて。あんまり行かなくてもいいかみたいにスカしてたんですけど(笑)。初めてプライベートで行ってみたらすごい楽しくて。
門脇 いいなー。行きたい、久しぶりに。コロナ後に営業再開してすぐくらいに行ったんですよ。
のん わ~。どうでした?
門脇 空いてたからいろいろ回れて楽しかった! 今は混んでた?
のん 混んではいたんですけど、カッパでしのげるくらいの小雨だったんで、まだ平気というか。すごくいやすかったです。
門脇 そっか。良かったね。意外と走馬灯って人生の劇的な瞬間とかよりも、なんで今この会話を思い出すんだろうみたいな、そういう些細な会話を思い出すんだろうなという気がします。
取材・文:横川良明 撮影:奥田耕平
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