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ROTH BART BARON、7thアルバム『HOWL』をリリース「こんなに彩りとエナジーに溢れたアルバムを2022年に作れてよかった」

音楽

インタビュー

ぴあ

ROTH BART BARON Photo:山本佳代子

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シンガーソングライターの三船雅也を中心としたインディーロックバンド・ROTH BART BARON(ロットバルトバロン)5年連続発表となる通算7枚目のオリジナルアルバム『HOWL』(ハウル)が届いた。〈吠える〉という動詞がタイトルになった今作は、生々しいまでのグルーヴが躍動し、同時に深い詩情も湛える。動と静、聖と邪――相反するあらゆる概念を等分に含んだ、まさに人間そのものを表現した全11曲で編まれたアルバムは、まるで長編小説のような起伏と奔流を体感することができるバンド史上における最高到達点と言っても過言ではない作品となった。三船雅也が『HOWL』で描き出した“希望”とは――? 今、最もその才能に注目が集まるシンガーソングライターの思考を追う。

不思議とそれぞれの曲が自然とあるべき場所に収まっていくような感じはありましたね

――いつもアルバム制作の時は、まず全体のイメージやテーマを考えるところから始めるんですか?

そうですね、『極彩色の祝祭』(2020年)のときもずっとアートワークを作っていて、今回はデジタルで油絵みたいなのを混ぜて作れないかなって思ってたんですよね。こういうのを(と言って、PCの中に保存してあるアートワークのプロトタイプといった様々なパターンのものを見せてくれる)作っていたんですよね。それが趣味っていうか(笑)。

――こういうところからROTH BART BARONの音楽が始まっていくわけですね。

だいたい年末の押し迫った頃の世間が静かになったあたりから、こういうのを作り始めるんですよね。「次は……」っていう感じで。それでそのアートワークと歌、曲のイメージが合わさる瞬間というのがあるんですよ。もちろん、「あれ? これ違くない?」っていうこともあるんですけど(笑)。プロセスとしてはそういう感じが多いですね、最近は。

――『HOWL』という言葉というか概念というか、それが出てきたのはどの段階だったんですか?

『HOWL』というもの自体は、僕がライフワーク的に行っている『HOWL SESSION』というものがあって、2017年くらいだったと記憶してるんですけど、その時に、このままずっとバンドだけで演奏していても成長できないなって謎の危機感を抱きまして。ぬるま湯に浸ってちゃダメだと。楽しみも緊張感も込みでいろんな人とやってみたいと思ったんです。そこで立ち上げたのが『HOWL SESSION』という企画でした。“HOWL”という言葉を用いた最初のイメージは、狼が吠えて、それに呼応するように他の狼が吠えるというもので、吠え返してくれる人たちと一緒にやろうということでした。

――『HOWL』というのは、そもそも最初からひとりではない、ということなんですね。

そうですね。僕が誰かと出会うところから始まって、お互いに影響を受けたり刺激しあったりしながらっていうイメージですね。

――全11曲を通して聴いてまず感じたのは、この曲順以外には考えられないなということでした。1曲1曲はもちろん独立した世界観があるのですが、それがつながると大きなひとつの物語として立ち上がって来るんですよね。

いつもアルバムの曲順は、スタッフや僕のなかで結構バラバラで、あーでもないこーでもないってやるんですけど、今作に関してはほとんどみんな一緒だったんですよ。不思議とそれぞれの曲が自然とあるべき場所に収まっていくような感じはありましたね。

――曲同士がハウってますよね(笑)。

ほんとそうですね(笑)。ハウってます。

――この曲ができたから次はこの曲、という具合に制作自体がつながっていったというわけではないんですよね?

あくまで1曲1曲に向き合ってやってますね。今年のゴールデンウィーク(5月1日から8日まで)に、KAAT神奈川芸術劇場で集大成的に8日間イベントとしてやった『HOWL SESSION』では、様々なゲストを招きつつ、いろんな形態でライブをやったんですけど、真ん中の2日間は『WORK IN PROGRESS “Pre-production”』と題して、アルバム収録予定の新曲をセッションしたんです。ビートルズの『ゲット・バック・セッション』みたいな感じで。お客さんも360度、自由にどこから観てもらってもいいっていう状態にして。その時はまったく曲順について考えるということもなかったですね。アートワークから導き出される世界とか流れというのはもちろんあるんですけど、楽曲というのはもうひとつ奥に入らないといけないんです。そこはまた別の世界というか。だから、例えば編集者のように俯瞰して見る前に、現場の作り手としてグッと中に入って曲と一体になる瞬間、プロセスを経ないと成立しない気がしますね。

どんな人が聴いても感じられる何かがあるというか、誰かを排除しない音楽でいたい

――1曲目の「月に吠える」は、ボーカルに中村佳穂さんをフィーチャリングしています。彼女の歌声というのはどの段階でイメージしていたんですか?

いつもこの曲ができたらアルバムになるなっていう核心みたいな曲ってあるんですけど、「月に吠える」ができた時に、これはそういうコアになる曲だなっていう予感がしたんです。同時に、この曲の持っている優しさと残酷さみたいなところが、中村佳穂さんの声と重なるようなイメージが浮かんだんですよね。それはすごく自然なことではあったしずっと一緒に歌ってみたいと思ってたんですけど、でも一方で彼女は忙しいというか、いろんな状況があるなかで、お願いするべきかすごく悩んでたんですよ(笑)。もっと音楽が自然なピースとしてはまる何かがあるんじゃないかなとか。でもようやくこの曲で一緒に歌えるんじゃないか、という思いがどんどん強くなっていったんです。だから、曲ができてすぐあとくらいじゃないですかね、中村さんの歌がやっぱり必要だって思ったのは。

――ちょっと飛んで、いきなり8曲目「場所たち」についてお聞きするのですが、この曲は毎回アルバム制作でレコーディングはするものの収録されずにずっとあったもので、今回ようやく入れられたという曲なんですよね。

そうなんです。4、5年前に作った曲で、曲自体が強すぎるのか、どこかその時のムードではないのか、いろんな理由で収録されて来なかった曲なんです。毎年最新版をレコーディングするんですけど、ピンと来ず……という感じで。でもライブではずっとやって来ているので、定番曲にはなっているんです。ファンの人たちからは「いつ出るんですか?」って言われ続けてて(笑)。そんな感じだったんですけど、今だからこそこの曲がまったく新しい曲として響くんじゃないかってバンドメンバーの間でもそういう話が出てくるようになって、ようやく自分でも納得するテイクが録れました。もうずっと向き合って来た曲で、アルバム5作分は向き合ってますね(笑)。曲の中を探り尽くして、分解しては組み立て、というのを繰り返して。

――その前の7曲目「Ghost Hunt(Tunnel)」から続けて聴くと、「場所たち」に到る道筋が強調されて響くんですよね。

閉塞されたところから開けたところに行きたいなっていうイメージがありました。「場所たち」っていう曲は、バンドっぽくないというか。僕もほとんどギターを弾かないし。これを作った当時、新しい扉を開けてくれた曲だったんですよね。だからバンドでちゃんとこの曲を演奏できる想像力や体力が昔はなかったんですけど、だんだんバンドというものが血肉になってきて、ようやく今、根を張って演奏できる楽曲になったというのが、今回収録できた大きな理由だと思います。毎年、半分ネタみたいに「今年こそは!」って言ってて(笑)。やっと「今年こそ」が実現しました。

――この「場所たち」が今回のアルバムの中で、結構重要な位置を占めているような気がしたんです。これはあくまで僕個人の感じ方として聞いていただきたいのですが、この『HOWL』というアルバムは、自己と他者の発見ということも含めて、“場所”にまつわる物語なのではないかなと思いました。音楽が発生する場所、何かが生まれる場所、生活する場所……そんなようなひとつひとつの物語の集合体なのではないかと。

ああ、なるほど。“home”はほしいけど“house”はいらない、というか。そういうことはよく考えたりしますね。最近思うのは、みんな“home”を作る作業を一生懸命やってるんじゃないかな、ということですね。コロナがあって、移動が制限されたことで逆に“home”という感覚が希薄になっているんじゃないかって感じることがあるんですよ。今、日本で生きる僕たちの問題というのは、そういうところにも少し現れているんじゃないかなって、心のどこかに留めながら音楽を作っていたという感覚はあります。

――何と言うか、漂白している感じというのはありますよね。おっしゃったように“house”はあるんだけど“home”ってどこだっけ?っていうのは、このある種不安な感覚を初めて言語化してもらった感じがします。3曲目の「糸の惑星」で描かれている、糸の絡まる場所が自分の中でもあなたの中でもなく、その間の宙ぶらりんのところにある、というのも地に足のつかない感じを象徴しているものだと思いました。

空転している感じがしますよね。で、その出来上がっていく糸の絡まりの中はスカスカで、そういったスカスカの惑星がいっぱい出来ている中で暮らしているというか。

――「場所たち」から9曲目「陽炎」につながっていくところでもそうなんですが、はたと考えてしまったんです。せっかく見つけた場所も、結局は定型なものになっていく運命というか、中身が形骸化していく宿命からは逃れられないのかな、やっぱり人間は漂って行かざるを得ないのかなと思ってしまったんですよね。

確かに、何か新しいものを見つけても、結局それがテンプレートになっていく世界なのかもしれない。けど、だからと言って諦めないで何かを見つけ続けるというのが人間の力のひとつなのではないかと思うんですよね。また10年後や、あるいは100年後にコロナと同じようなことが起こった時に、すべてを忘れている世界だったら、じゃあいったい何が新しかったんだろう?みたいになるじゃないですか。時とともに記憶が失われていくなかで、いったい何をコンパスにするのだろう、みんながコロナの時にカミュの『ペスト』を読み返したように、ロットのアルバムが100年後に同じような問題が起きた時のヒントじゃないけど、燈台の灯りになるかもしれないという感覚は失くしたくなかったんです。何か変わりゆく流れのなかで変わらないでいようとするのではない、また違った意味でコンパスになり得るもの、流動的なんだけど何か自分の指針になり得るもの――流れに翻弄される僕たちとか君たちというものを内包した音楽でありたいと思ったんです。もう単純に言えば、こういう時代にこれを聴いて、外に出て、その人のサウンドトラックになったらいいなっていうことです。そこはすごく考えていました。何て言うか、こっちの選択肢もあるよねっていうことです。ひとつの道で失敗したから自分はダメな人間っていうことになるより、地球上に人間が80億くらいいて、その数だけの場所があるのだとしたら、どこに軸を持っても大丈夫なんじゃない?て思ったりするんですよ。こっちは行き止まりだったけど、他にいっぱいけもの道があったぞっていうのを提示できればいいかなと思いました。そこを信じているんですよね、僕は。

――なるほど。

「MIRAI」で歌ってくれた、つくばみらい市のみんなとか全員一緒じゃないじゃないですか。同じ一塊の声にはなっているけど。そのズレた感覚値こそが結構リアルだなって思うんですよね。

――「MIRAI」の歌詞の〈種を蒔いていたんだ 頼まれてもいないのに!〉という一節がとても印象的で、歌いたいとかってそういうことだよなって思いました。

つくばみらい市に頼まれて作った曲なのに〈頼まれてもいない〉っていうのが面白いかなって思ったのもありますけど(笑)、でも街って誰から頼まれて住んでいるわけではないですよね。そこは「場所たち」にもつながってくる部分なんですけど、自分で切り開いていったことを歌にできないかなっていうのが「MIRAI」で描きたかったことですね。それぞれのストーリーがちゃんと見えて、どんな人が聴いても感じられる何かがあるというか、誰かを排除しない音楽でいたいなというのがありました。今は排除する力の方が強くなっているという気がするので。だから物語の力というか、ちょっと現実離れした楽曲が今回のアルバムには少し増えたのも、そういう時代の空気みたいなものを捉えて、きちんとそれに対抗できるようなものにしたいなと思ったからというのはありますね。

――そこにバンドをやる意味というのがあるんでしょうね。

やっぱり自分ひとりでは作れないものを作りたいっていうのが基本的にはありますね。歌にならない空白をきちんと音楽にしたいというか。その瞬間を僕は見たり聴いたり感じたりしたいから、ひとりでもバンドって言っているのだと思います。

――曲を作るプロセスとして、バンドメンバーに任せるという部分は結構あるんですか?

ここはこういう音で弾いてほしいんだけど、もしアイデアがあるなら聞いてみたいっていう感じで、あんまり自分自身を信用していないというか。僕が辿り着きたい地点はあるんだけど、全部が僕の言いなりみたいなことになっていったら、ストリングスやホーンのチームを呼んだ意味がないって思ってしまうんです。そもそも僕の楽曲はすごくシンプルですし。中村佳穂さんにもこういうふうに歌ってっていうことは言ったことがないです。委ねたあと、最後に作品にする時に僕が責任を持つ、という感じですね。素晴らしい瞬間をみんなで迎えられるように、最近こういうことを思っててっていうことを話したりとか、100均で買えるドクロみたいな安い死をテーマにやってくれ、とか(笑)。

――すごく余白のあるイメージを伝えるんですね(笑)。

そうです(笑)。墨汁をベタっと垂らしたような音で、とか。優れたアイデアだったら誰のものでも採用するっていうのがロットのいいところだと思います。結局その人たちが生き生き演奏してくれる場所を作らないと、いい音楽は生まれませんからね。ただ、その場所が馴れ合いというか、不健康に依存しないものでないといけないとは思っていて。だから『HOWL』っていうのは、場所というよりも、個人個人のあり方、という方が近いのだと思います。うん。場所なき場所というか。独立はしているけど束になった時にすごい力を発揮する瞬間、それがバンド活動なんじゃないのかなとか、そういうことはすごく考えますね。あと、顔が見えないけど存在は確かに感じながら吠える、吠え返すっていう関係が、今なのかなという気がしたんですよね。やっぱりまだコロナは続いていますからね。向き合って、顔が全部見えて、「やあ」っていう感じじゃないなって。顔は見えないけど、確かにいる誰かに向かって吠えたら、吠え返してくれた! そこにはいるんだなっていう距離感の世界に生きてるなってすごく思いますね。ライブひとつとってもそうで、チケットは取ったんだけど、状況を考えてやっぱり今回は行かないって決めた人たちってまさにそういう距離感にいるなと感じていて。じゃあ会場に来たくても来られない人たちのためにどうやって歌うかっていうことをすごく考えます。

毎朝パン屋さんがパンを焼くように音楽を作ろう

――今回のアルバムで描こうとした希望は何ですか?

身体感覚含めてこの3年間で失われたものをもう一度取り戻すっていうのが今年1年のテーマでした。ライブもフィジカルでやることにこだわり続けましたし、全身を震わせて歌うこと、それに共鳴をしてくれる人たちがいること、そのこと自体が僕自身の希望になっていきました。だからアルバムで描きたかったというよりは、そこを描かざるを得なかったというか、描くことになってしまった、という感覚が正直なところですね。失くしたものがすべて元の形のまま戻ってくることはない、というのはみんなわかっていると思うんです。例えば指を切ってしまったら、その傷を修復しようとする力が人間には具わっていますよね。で、傷が深ければ深いほど治っても痕が残ったりする。その、違う形になった部分こそが新しい希望そのものなんじゃないかと思うんですよね。形は歪かもしれないけど。90年代にニルヴァーナが〈なんて最悪だ〉とか、ベックが〈俺は負け犬だ〉って傷自体をさらけ出すように歌って大ヒットしましたけど、今は言ってしまえば世界全部が最悪だし負け犬だし(笑)、みんなで大きな傷を負ってしまったから、そこを歌っても当たり前でしかないじゃないですか。でも希望っていうのは、今具体的に描けないけど描きたいギリギリのところとしてあるような気がするんですよね。で、その希望が叫び声であったり身体性だと思うんです。誰かに感謝を示すような心理的な希望ではなく、身体性で描く希望にこそ新しい表現が宿るんじゃないかということは考えていました。

――それがカウンターとなって響くのではないかと。

そう。だから、ベックが「ルーザー」を歌っていたのと同じ気持ちで、僕は今希望を歌っています。

――そのことは、リズムひとつをとってもきっちり肉体に根差した表現になっていると思います。リズムが定型のリズムではなく、どれも視覚的なんですよね。例えば2曲目「KAZE」は本当に風が吹き抜けている感覚がリズムから伝わって来ますし、「陽炎」の明滅するリズムはまさに陽炎を目の前にしているように感じます。そういう意味での身体性をすごく感じる。

風にもレイヤーがあるというか、竜巻みたいなものすごく強い風もあれば、草むらをさわさわと波立てて吹くような風もある。「KAZE」ではその微妙な違いを青弦さんたちがストリングスでも表現してくれていますし、リズムはリズムで細かく絶えず吹き付けながらコーラスになったら一気に強くなるというような感じで、複合的な風が集まってひとつの風に感じられるということを考えて作りました。以前、(筆者の)インタビューで、ウクライナでの戦争が始まって、どう思いますか?って聞いてくださったんですよね。その時は確か、何がしかの形でこのムードというか感情を曲にできればというようなことを言ったと思うんですけど、このアルバムを作りながら、どこかそういうこともコロナと同じように差し込んでいかなければいけないなと思ったんです。だから「KAZE」も、いろんな風が吹いているけど、その中には爆風が含まれるかもしれないし、という感じでどこかにきちんと入れておきたかったんです。

――最後に収録されている「髑髏と花」はまさに今おっしゃった感じが色濃く立ち込めている作品だと思います。その前の「MIRAI」でアルバムを終えるということも十分考えられたと思うんです。だけど、最後に「髑髏と花」があることで、このアルバムのさらに奥へ進むことができたという感覚があります。

1曲目にプレイバックしてそこからループしていく感じがありますよね。ここからまた佳穂ちゃんの生き生きした声に戻っていくと正に蘇生、再生が起きて、全体としてすごく面白い作品になったなと思います。おっしゃるように最初は、「MIRAI」でパッと元気な感じで終えるというのは有力だったんですよ。

――それはすごくわかります。特に後半の「場所たち」「陽炎」「MIRAI」という3曲の塊感はすごいですし、「MIRAI」までの10曲で聴きながら体を動かしすぎて疲れてますから(笑)。

ですよね(笑)。高揚感で終わる可能性も大いに孕んではいたんですけど、最後に「髑髏と花」は必要だなと思って、入れました。

――そこの感覚っていうのは最初の話に戻ると、まずはアートワークから導き出された『HOWL』という世界観があって、各曲の内部を構築していく中で見えてくる大きな流れというものを掴んでいるからこそ、判断できる部分なんでしょうね。

だからアルバムって不思議なんですよね。全体のコアみたいなものが見えないと形にならないんですよ。それがないとただ曲がいっぱいあるだけで。サブスクの時代に何でアルバム作るんですか?って言われたら、何でなんでしょうって言わざるを得ないんですけど(笑)。でもここ(アルバム)でしか描けない何かというものが確実にあって。アートワークやプロダクトも含めて、そのために音楽を作っていると思える瞬間があるんです。この『HOWL』という作品が7枚目のアルバムになるんですけど、前作の『無限のHAKU』で結構集大成と言えるところまでやれたなと思っていたんですよ。じゃあこの後の作品で、これより上のサウンドってどうやって作ったらいいんだろうって漠然と思っていたんですけど、心配しなくてよかったですね。今までで一番良いサウンドで作れたし、爆発感のあるアルバムになった。人間のエナジーがものすごく入っている作品なので、「疲れちゃって」って先ほどおっしゃったのって間違いないんですよ(笑)。こんなに彩りとエナジーに溢れたアルバムを2022年に作れてよかったなって今は思ってます。なんだか宇宙飛行士みたいな気分です。

――と言いますと?

すごく遠くの星まで飛んで行って、無事に地球に帰って来れましたっていう感じ(笑)。

――はははは。

ライブも毎回そういう感じですね。秒読みして、いざ発射するときにロケットが爆発しちゃったらどうしようかっていう気持ちで毎回ステージに立つというか。

――それをコロナの間も止めなかったですよね。

戦争でもそうですけど、社会に打撃が加えられて暗いムードが覆うようになると、まずエンタテインメントはいらないって思われてしまう。でも、今思えば、居酒屋で無駄話をしていたことっていうのは、人間が生きる上で全然無駄じゃなかったんだなって思うんですよ。やっぱり人に会って直接話して受け取れるものって情報だけじゃなくてすごくたくさんあるじゃないですか。こうやってお会いしてインタビューをしていただくのもそうですし。音楽もそうなんですよね。絶対に人間の心にとって必要なものなんだって確信ができた3年間でもあったんです。それを再確認できたんですよ。パン屋さんは毎朝パンを焼いているのに、どうしてアーティストはコロナで休んでいいことになってるんだっけ? 僕にはそれがわからないから、だったら毎朝パン屋さんがパンを焼くように音楽を作ろうって思ったんです。バンドを始めたのがちょうど東日本大震災の頃で、真っ暗な中でのスタートだったので、そもそも大変なところから始まったんだから、ちょっとやそっとじゃびくともしないな俺っていうのも改めて確認できました。

――今お話を聞きながら、『HOWL』のアートワークがリアルに浮かびました。音楽を作るという不動の軸があって、まわりは絶えず動き続けているという。

月は変わらず空に上りますからね。萩原朔太郎が『月に吠える』という詩集の序文で触れた〈月に吠える犬〉は孤独と寂しさを抱えていますけど、『HOWL』の狼は、月に向かって吠える“狼たち”なんです。アートワークもそうですし、サウンドもそうですけど、こんなにひとりなのに、ひとりじゃないバンドもそんなにいないだろうなって思います(笑)。

――最後にツアーについてお聞きします。ジャズクラブを会場にしたストリングス編成とライブハウスでのバンド編成、そしてホールで行うフル編成と3つの方向性でアルバム『HOWL』の世界を表現するという趣向ですね。

5月にKAATでやった『HOWL SESSION』の増幅版とも言えるもので、特にストリングス編成をまずは細かいニュアンスやディテールを伝えられる場所で見てもらいたかったんです。『HOWL』というアルバムはものすごくエナジーに溢れた作品ではあるのですが、ストリングスも過去最高レベルのサウンドを追求しているので、まずはそこを味わっていただいてから、バンドサウンドを体感してもらおうと。同じアルバムのツアーではあるんですけど、まったく方向性の異なる表現の仕方を地続きでやるという、ロットの奥深さはそのへんにもあるのかなと思っています。

――奥深さと同時に逞しさを感じます。

現実に寄り添いながら非日常を創り出せるというのが音楽の魅力だと思うので、そこをアルバムとライブの両方で表現していきたいなと思います。また新しく企んでいることもあるので楽しみにしていてください。

Text:谷岡正浩 Photo:山本佳代子

<リリース情報>
ROTH BART BARON ニューアルバム『HOWL』

11月9日(水) リリース

ROTH BART BARON『HOWL』ジャケット

●初回限定盤(CD+Blu-ray):5,170円(税込)
●通常盤(CD):3,300円(税込)
●LP:11月下旬発売予定

【CD収録内容】
1. 月に吠える feat.中村佳穂
2. K A Z E
3. 糸の惑星
4. 赤と青
5. HOWL
6. O N I
7. Ghost Hunt (Tunnel)
8. 場所たち
9. 陽炎
10. MIRAI
11. 髑髏と花(дети)

【Blu-ray収録内容】
■ROTH BART BARON TOUR 2021-2022『無限のHAKU』〜Final〜 Live at International Forum Hall C
1. EDEN
2. みず/うみ
3. iki
4. 春の嵐
5. ショッピングモールの怪物
6. BLUE SOULS
7. あくま
8. GREAT ESCAPE
9. Eternal
10. Helpa
11. ひかりの螺旋
12. 霓と虹
13. HAKU
14. K i n g
15. U b u g o e
16. NEVER FORGET
17. 月光
18. けもののなまえ

Enc.1 極彩|IGL(S)
Enc.2 鳳と凰
Enc.3 N e w M o r n i n g

<ツアー情報>
ROTH BART BARON『HOWL』Tour 2022-2023

「ROTH BART BARON『HOWL』Tour 2022-2023」告知画像

【第1弾スケジュール】
11月11日(金) 大阪・Billboard Live OSAKA
〜with Strings〜 Live at Billboard Live OSAKA
1st show:OPEN17:00 / START18:00
2nd show:OPEN20:00 / START21.00

11月13日(日) 静岡・space-K
〜7人バンド編成・静岡公演〜
OPEN16:15 / START17:00

11月18日(金) 東京・COTTON CLUB
〜with Strings〜 Live at COTTON CLUB
1st show:OPEN17:00 / START18:00
2nd show:OPEN19:45 / START20.30

11月26日(土) 石川・メロメロポッチ
〜Magical Colors Night・6人バンド編成・金沢公演〜
OPEN16:30 / START17:00
Guest Act:noid

【第2弾スケジュール】
2023年2月12日(日) 愛知・名古屋 THE BOTTOM LINE
〜バンド編成・名古屋公演〜
OPEN17:15 / START18:00

2023年2月18日(土) 京都・磔磔
〜バンド編成・京都公演〜
OPEN17:15 / START18:00

2023年2月19日(日) 大阪・BIGCAT
〜バンド編成・大阪公演〜
OPEN17:15 / START18:00

2023年2月23日(木・祝) 宮城・仙台darwin
〜バンド編成・仙台公演〜
OPEN17:15 / START18:00

2023年2月26日(日) 北海道・札幌 PENNYLANE24
〜バンド編成・札幌公演〜
OPEN16:15 / START17:00

2023年3月3日(金) 福岡・BEAT STATION
〜バンド編成・福岡公演〜
OPEN18:15 / START19:00

2023年3月4日(土) 広島・広島CLUB QUATTRO
〜バンド編成・広島公演〜
OPEN17:15 / START18:00

2023年3月10日(金)東京・昭和女子大学 人見記念講堂
〜ツアーファイナル・フル編成・東京公演〜
OPEN17:30 / START18:30

チケット一般発売中
https://w.pia.jp/t/rothbartbaron

公式サイト:
https://www.rothbartbaron.com/

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