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名作ゲーム『ファイナルファンタジーX』を新作歌舞伎に。その驚きの企画を菊之助が語る!

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尾上菊之助

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今も不朽の名作と語り継がれているゲーム『ファイナルファンタジーX』(以下、『FFX』)。その世界に惹かれ、歌舞伎にしようと考えた男がいる。歌舞伎役者・尾上菊之助である。このゲームの大きな魅力である映像美を活かしながら、どう歌舞伎にしていくのか。新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』も成功させた役者は、自信を持ってこの挑戦に臨んでいる。

きっかけはコロナ禍、攻略本を読んで気づいた歌舞伎との相性の良さ

──『FFX』を新作歌舞伎にしようと思われた経緯から、まずお聞かせください。

きっかけはコロナ禍でのステイホームでした。私の場合、2020年3月の国立劇場の公演が無観客での配信になり、そこから7月まで歌舞伎の公演がなくなってしまいました。先行きが見えず気持ちが落ち込んでいたときにステイホームでゲーム需要が高まっていることを知り、小学生の頃によくやっていたゲームをもう一度プレイしようと思いました。そして、ロールプレイングゲームで最も心に残っていた『FFX』をもう一度やり始め、攻略本を読んだときに思ったんですね。これはもしかしたら新作歌舞伎になるのではないかなと。

──そう思われたポイントは?

『FFX』はとにかく脚本が素晴らしいんです。まず、巨大な脅威「シン」を倒すべく、ヒロインのユウナ(中村米吉)と仲間たちが力を合わせて戦っていくという物語に、いつの時代にも通じる人間の普遍的なテーマがあります。さらに、ヒロインだけでなく、彼女を支える主な6人の人物も、葛藤を抱えて生きていることが細かく描かれている。それぞれのキャラクターがその葛藤をどう乗り越えて成長していくか。感情のターニングポイントがキャラクターごとにあるので、歌舞伎にしたときに各場に見どころができると思いました。なおかつ、ストーリー展開も、途中で逆転劇が起きるという衝撃がある。物語の中に多くの感情ドラマがあり、『FFX』を知らない方がご覧になっても感動できて、楽しんでいただけるのではないかと思いました。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』オリジナルCGキービジュアル

──新作歌舞伎にするにあたっては、連続テレビ小説『おちょやん』(NHK)、『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)などヒットドラマを手がけておられる八津弘幸さんが脚本を担当されることになりましたが、そのもともと見事だったゲームのシナリオに、さらにどんな工夫がなされているのでしょうか。

例えば、巨悪であるシーモア(尾上松也)というキャラクターが抱えている父親との葛藤も、ゲームでは回想シーンでしか描かれていませんが、今回はそこを八津さんが深く掘り下げてくださっているので、よくわかっていただけるのではないかと思います。

──そして、菊之助さんと一緒に演出を担当されるのが、『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』(2016年)やB’zのドームツアーなどを手がけられた金谷かほりさんです。客席が360度回転するIHIステージアラウンド東京で上演にするにあたって、どんな演出にしようとされていますか。

今は、美術の堀尾幸男先生が作ってくださった模型を前に、東西南北4つのステージを脚本のどの場面に使うのか、落とし込んでいく作業をしているところです。高さ8メートルのスクリーンに何を映すかということも、金谷さんが一場一場、絵コンテを描いてくださっていて。ゲームやイベントで使われた映像を投影しつつ、観ているお客様も、あたかも自分が『FFX』の世界に入っているかのような感覚になるのではないかと思っています。そこに、もちろん歌舞伎的な手法も取り入れていきます。

──その映像などのゲームの世界と歌舞伎との融合は、どのようにやっていこうと考えておられますか。

長編歌舞伎なので、これまで培ってきた歌舞伎の演技体が生きる脚本であり演出でありたいと思っています。舞踊や立廻り、歌舞伎独特の台詞回しなどを活かしながら、映像や4面ある舞台をどう効果的に使っていくかが見どころになります。その融合のバランスは場面によって少しずつ変わっていくことになると思うのですが、歌舞伎役者の身体を活かしつつゲームの世界観が堪能できる作品を作り上げたいと思っています。

今の人の心に届く新作歌舞伎が未来の古典になる

──ビジュアルは、ゲームのキャラクターに近いものになるのでしょうか。

先日、メイクとカツラと衣装のフィッティングをしたんですけれども、かなりゲームのキャラクターを想起させる素晴らしいものが出来上がっております。ただ、ゲームそのままというわけではなく、歌舞伎テイストを加えておりまして。松竹衣裳の松本勇さんが歌舞伎で使っている和の素材を入れてより美しく見えるようにしてくださっています。歌舞伎は豪華な衣装も見どころのひとつなので、歌舞伎の古典の知恵とゲームのキャラクターの融合も楽しみのひとつとしてぜひ観ていただきたいなと思います。

──新作歌舞伎では、菊之助さんは最近では、『風の谷のナウシカ』(2019年)を手がけられました。その経験も活きていますか。

それはありますね。「ナウシカ」を作っていたときに、歌舞伎に寄せてしまうと「ナウシカ」の味が消えてしまい、でも「ナウシカ」に寄せてしまうと歌舞伎の良さが消えてしまうという試行錯誤があったので。バランスを探るにあたっては、「ナウシカ」の経験がとても力になっています。

──その『ナウシカ』の他にもこれまでに、『NINAGAWA 十二夜』(2007年)、『マハーバーラタ戦記』(2017年)など、ご自身の企画・構想で新しい歌舞伎の舞台をつくってこられました。その原動力はどこにあるのでしょう。

そもそも歌舞伎の古典も、それができた当時は、その時代を生きているお客様に届くものをと歌舞伎役者たちが考えて生まれた新作です。先人たちがしてきたように、今を生きている私たちも今の人に届く新作歌舞伎を作り、それが未来に残って古典になることが、先人へのご恩返しだと思っていますので。その思いが私の大きな原動力になっています。

──古典として残っていく作品にするには、何が大切だと思われていますか。

名作と言われているものには、やはり普遍的なテーマがあります。登場人物が様々に葛藤を抱えていて──今回も、シーモアがなぜ巨悪になってしまったのかというところを丁寧に描こうと思っているのですが──、そして、人が大事にしなければいけない心情がきちんと描かれている。「里見八犬伝」に“仁義礼智忠信孝悌”という12個の玉がありますが、その中でも私は、仁義礼信は特に普遍的なテーマであると思っています。

──この『新作歌舞伎FFX』は、まさしくその要素を持っていると。

そう思っています。心に刺さる名台詞が多いので、役者が演じるたびに深みを増していくと思います。何より、お互いに協力し合って困難に立ち向かっていき、どんな壁が立ちはだかってもあきらめずに前へ進んでいく主人公たちの姿勢は、コロナ禍の今にはなおさら響き、これから先も力となる、まさに普遍的なものだと思います。

ユウナを演じる中村米吉にシーモア尾上松也ら魅力的なキャスティング

──企画・演出のみならず、もちろん出演もされます。ヒロインのユウナを支えるティーダを演じられますが、演じ手としての意気込みも聞かせていただけますか。

ティーダは、最初何も知らずにユウナを元気づけているのですが、この可憐な少女が自分が犠牲になる覚悟で戦いの旅に出ていることに途中で気づき、自分の力で世界を変えたいと思うその純粋な心に惹かれていきます。彼もまた、彼女の暮らす世界を変えたいと思うようになります。そんなふたりの人を思いやる素晴らしさを、深く丁寧に演じていきたいですね。

──ユウナを演じられる米吉さんは、2019年の『風の谷のナウシカ』でご一緒されていて、その前半部分をもとに皇女クシャナに焦点を当てて今年7月に上演された「上の巻 ―白き魔女の戦記―」では、菊之助さんがクシャナを、米吉さんがナウシカを演じられました。どんな印象をお持ちですか。

以前から古典でも素晴らしい役者さんだなと思っていたのですが、最初の『ナウシカ』でケチャ役に向き合われるクリエイティブで真摯な姿勢を拝見して、再演するときのナウシカは米吉さんしかいないと思いました。そして再演のときも新作に対する心構えが素晴らしく、同時進行でこの『FFX』の話も進んでいたので、ユウナは米吉さんにと心から思いお願いしました。他の皆さんも、金谷さんからキャスティングがみんなハマってますねと嬉しいお言葉をいただいたので、久しぶりにご一緒する(中村)獅童さんや、迫力あるシーモアになりそうな(尾上)松也さんなど、歌舞伎役者がゲームのキャラクターになり、演じるのを楽しみにしていただきたいですね。

──ちなみに、お話を伺って、『FFX』を知らない人も楽しめる工夫をされていることがよくわかりましたが、何か予習をしてから劇場に行ったほうがいいでしょうか。

歌舞伎の古典も、歌舞伎を初めてご覧になる方でも、物語のあらすじをある程度わかっていればお芝居を楽しんでいただけると思いますが、同じくこの『FFX』も、ざっくりとあらすじがわかったうえで観ていただけると、より楽しんでいただけるとは思っています。公式ホームページにあるあらすじを読んで来ていただけければ、必ず楽しめるしつらえになっておりますので。ぜひ劇場にお運びください。

取材・文=大内弓子

<公演情報>
『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』

2023年3月4日(土)~4月12日(水) 東京・IHIステージアラウンド東京
※休演日:3月8日(水)、15日(水)、22日(水)、29日(水)、4月5日(水)
開演時間:前編 12:00 / 後編 17:00(予定)

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』キービジュアル

企画:尾上菊之助
脚本:八津弘幸
演出:金谷かほり 尾上菊之助

【出演】
ティーダ役:尾上菊之助
アーロン役:中村獅童
シーモア役:尾上松也
ルールー役:中村梅枝
ルッツ役、23代目オオアカ屋役:中村萬太郎
ユウナ役:中村米吉
ワッカ役:中村橋之助
リュック役:上村吉太朗
ユウナレスカ役:中村芝のぶ
キマリ役:坂東彦三郎
ブラスカ役:中村錦之助
ジェクト役:坂東彌十郎
シド役:中村歌六

公式HP:
https://ff10-kabuki.com

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