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動乱の今、露オペラ上演の意義探る座談会、新国で 新国立劇場オペラ『ボリス・ゴドゥノフ』

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オペラ『ボリス・ゴドゥノフ』オペラトークより、左から)佐藤優(作家)、亀山郁夫(ロシア文学者)、大野和士(指揮、新国立劇場オペラ芸術監督)

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11月15日(火)に初日を迎える新国立劇場のムソルグスキー《ボリス・ゴドゥノフ》新制作初演。6日(日)、劇場で「オペラトーク」が開催された。公演の指揮者でもある新国立劇場オペラ芸術監督・大野和士の司会進行。パネリストとしてロシア文学者の亀山郁夫と、元外交官で作家の佐藤優が登壇した。

亀山郁夫(ロシア文学者)

冒頭、まず亀山が「今このオペラが上演されることにショックを受けた。日本でしか体験できない世界的事件」と言えば、佐藤も「とても勇気が必要なこと。みんなが少しずつ勇気を出し合うことで、政治的・軍事的な戦いの中でも、われわれ人間の共通の言葉を見つけることができる。上演にはとても意味がある」と述べた。芸術の現代性、社会性が、これまで以上に大きな意味を背負っている時代であることを、あらためてひしひしと感じる。

佐藤優(作家)

16世紀末の実在のロシア君主ボリスを題材にした作品。大野はまず、その時代の背景である「大動乱時代」が、現代のロシアでどのように捉えられているのかを尋ねた。

「ロシアがモンゴルの支配から自立する長い戦いの時代の末期。そうしたテーマが、現代の大きく混乱する世界とどう重なっているかを読み取ることが大事」(亀山)

「ロシアには、現在の戦争の帰趨によっては再び動乱時代が来るのではないかという恐怖がある。いま欧米はすでに大混乱だし、日本も動乱の直前で、この作品のテーマは現代的」(佐藤)

ただしボリスの人物像は、史実と原作者プーシキンの戯曲、そしてムソルグスキーのオペラ台本とで、かなり異なるという。「ムソルグスキーのボリスは非常に人間くさい」と亀山。これを受けて大野も、人間の内面のドラマを巧みに描くムソルグスキーの作曲技法について、主人公の登場シーンをヴェルディ《オテロ》と比較して、歌やセリフも交えた迫真の演技で説明した。

大野和士(指揮、新国立劇場オペラ芸術監督)

話題はさらに、オペラのキーパーソンの一人である「聖愚者」の存在や、物語の核ともいえる、グリゴリー(偽ドミトリー)が亡き皇子の名を「僭称(名を騙ること)」する意味などに及び、公演に向けて気分は高まった。イベントの模様は新国立劇場YouTubeチャンネルで公開中なので、実際のトークをぜひ確認してほしい。実に興味深い内容だ。ボリス役を演じるギド・イェンティンス(バス)ら歌手たちの実演も。

オペラトークではボリス・ゴドゥノフ役のギド・イェンティンスら歌手による歌唱も

新国立劇場の《ボリス・ゴドゥノフ》は11月15日(火)~26日(土)に全5公演。東京・初台の新国立劇場オペラパレスで。

取材・文:宮本明 写真:新国立劇場提供

新国立劇場オペラ『ボリス・ゴドゥノフ』チケット情報:https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2222883

オペラトーク全編はこちら

オペラ『ボリス・ゴドゥノフ』オペラトーク