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【おとなの映画ガイド】新解釈! 木村拓哉の信長と綾瀬はるかの濃姫、壮絶な戦国ラブロマンス『レジェンド&バタフライ』

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『レジェンド&バタフライ』 (C) 2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

これから2週間のうちに公開される注目作品は、

●1月第3週の週末(1月20日〜21日)
北欧ヴァイキング伝説をベースにした壮絶な復讐劇『ノースマン 導かれし復讐者』、パク・ソダム(『パラサイト 半地下の家族』)がすご腕の“女運び屋”で魅せる『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』

●1月第4週の週末(1月27日〜28日)
木村拓哉・綾瀬はるか主演の『レジェンド&バタフライ』、人気マンガを強力クリエイター陣でアニメ化した『金の国 水の国』、全米で映画賞レースの有力候補『イニシェリン島の精霊』、ビートルズ初来日の熱狂的な反響を振り返るドキュメンタリー『ミスタームーンライト~1966 ザ・ビートルズ武道館公演 みんなで見た夢~』

と、傑作ぞろいです。

今回は、この中から『レジェンド&バタフライ』をご紹介します。

『レジェンド&バタフライ』

戦国のレジェンド・織田信長を描くのに、切り口を妻・濃姫(別名・帰蝶)との生涯をかけたラブストーリーでいく、なんて、これまでになかった発想。しかも、主演木村拓哉・綾瀬はるか、脚本古沢良太、監督大友啓史、東映創立70周年記念作品、総製作費20億円、と豪華極まりないプロジェクト。歴史時代劇の枠を超えた、見応えのあるエンタテインメントだ。

木村拓哉は、TVドラマ『織田信長 天下を取ったバカ』で25年前に信長を演じたことがあるが、映画は初めて。今回は16歳の若武者から本能寺で自害するまでの半生に挑戦している。信長が没した歳と実年齢がほぼ同じという。

若き日の信長は、同じ東映では日本映画を代表する名優中村錦之助の当たり役。錦之助の『風雲児 織田信長』は配信でも観られる。“尾張のうつけもの”とよばれる暴れん坊が、義理の父となる斎藤道三との面談にあたり、自然児のような髪型、肌もあらわな姿で現れ、一転、りりしい正装で登場するシーンは芝居がかっていて何度観ても面白い。木村拓哉の信長像はそれに比べて、もっとカジュアルでわざとらしさがなく、人間味があふれている。何よりもナイーブな16歳の少年にもみえちゃう瑞々しさを保持しているのがスゴイ。

本作は、道三の娘・濃姫が政略結婚のため、信長の城に輿入れするシーンから始まる。木村拓哉の信長は、錦之助の信長のような策略家ではなく、最初の結婚にやや浮かれた感じすらする。一方の濃姫は、いわば人質。しかも若いが三度目の結婚であり、すきあらば信長の命も狙おうというワケありの身。子どもっぽい信長の態度にかちんとくる。やんちゃ坊主とじゃじゃ馬の結婚初夜は、つかみあいの大けんかになってしまう。

綾瀬はるかは大河『八重の桜』や『ICHI』なんてチャンバラ映画の出演もあり、身体能力バツグン。大けんかから始まり、このふたり、何かといがみあい、ののしりあう。「政略結婚で結ばれた夫婦の笑えて泣けるロマンティックコメディを書いてみたいとかねがね思っていました」と脚本を担当した古沢良太。まるでハリウッド40年代のスクリューボール・コメディのように軽快に話は進む。

濃姫については歴史資料がほとんどないという。古沢が担当する今年のNHK大河ドラマ『どうする家康』同様、史実と史実の間を想像で埋めて作り出したフィクション。かの桶狭間の戦いも、信長&濃姫チームの視点でみると、なるほどこういう展開なのか、と納得する。京都に上った信長が、濃姫を同道し、まるで、ハネムーンのようなひとときをすごすエピソードもなかなか泣かせる。

監督の大友啓史は『龍馬伝』で大河ドラマを担当。映画では『るろうに剣心』シリーズを大ヒットさせ、時代劇には定評がある。今回、戦国のひとつひとつの戦いを順に事細かく歴史図鑑のように描くことはしないが、延暦寺の焼き討ち、本能寺の変など、戦闘シーンは大迫力で見応えがある。濃姫を迎える那古野城にカメラが寄っていくファーストシーンから、炎に包まれる本能寺の変まで、時代劇の歴史を護る東映京都撮影所の技術陣もさすがの仕事、と思う。

東映京都出身の北大路欣也が斎藤道三役。宮沢氷魚が演じる明智光秀はそう来たか……のミステリアスぶり。市川染五郎が信長の小姓、森蘭丸を凛々しく演じる。豪華な俳優陣がそろうが、なかで怪演といえるのは斎藤工の徳川家康。スゴイメイクです。

新鮮な解釈を歴史通がどうみるかはともかく、この正月、大河ドラマの宣伝番組などで、しこたま戦国時代の知識をため込んだ歴史ドラマ好きとしては、発見もあり、満足のいく2時間48分でした。これこそ映画館の大スクリーンでぜひ!

文=坂口英明(ぴあ編集部)

【ぴあ水先案内から】

笠井信輔さん(フリーアナウンサー)
「……夫婦が激突を続ける前半から中盤にかけて抜群に面白いのだ! 見ているこっちがハラハラどきどき。戦国武将は内なる敵(妻)とも戦っていたとは。……」

笠井信輔さんの水先案内をもっと見る

中川右介さん(作家、編集者)
「……木村拓哉は、「人間として弱い信長」という難役を、木村自身の「かっこよくなければならない」という宿命を背負いながら演じ、この矛盾それ自体が、信長の苦悩とオーバーラップし、新しい信長を描き出した。……」

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(C) 2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会