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鈴木亮平&宮沢氷魚と考える愛とエゴ「エゴを持っていることが人間の美しさ」

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インタビュー

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鈴木亮平&宮沢氷魚 撮影:友野雄

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エッセイスト・高山真の自伝的小説『エゴイスト』が映画化された。

愛する人のために尽くすことを惜しまないゲイの編集者・浩輔と、そんな浩輔の前に現れたパーソナルトレーナーの龍太。溺れるように龍太へと惹かれていく浩輔の愛は自己犠牲的でありながら、どことなくエゴイスティックにも映る。

この愛は、エゴか献身か――。

浩輔を演じた鈴木亮平、龍太を演じた宮沢氷魚と共に、愛とエゴについて考えてみたい。

この作品を通して、愛情の概念がまるっきり変わりました

――この物語のタイトルが『エゴイスト』ということについてどんなことをお感じになりましたか。

鈴木 最初に原作を読んだとき、エゴイストが活躍する、悪い主人公の話なのかなと思ったんです。そしたら真逆で、この愛はエゴイスティックなんじゃないだろうかと思い悩む人の話で、優しい愛情と救いの物語だったのでびっくりしましたね。秀逸なタイトルだなと思いました。

宮沢 この作品を通して、自分の考えていた愛情の概念がまるっきり変わりました。今までは、家族にせよ恋人にせよ友人にせよ、誰かを愛する行為は、その人のためという認識だったんですよ。でも、実は自分のためだったのかなって。相手を喜ばせたいという気持ちも、結局自分が相手の喜んでいる顔を見たいからで。すべてが自分中心だったことに気づいて、恐ろしくも感じつつ。でも人間ってやっぱりエゴの塊でもあるから、必ずしもそれが間違いでもないよなと思ったり。いろんな矛盾したものが自分の中にあって、これという答えはないけれど、自分の中で正解を見つけたいなと思うきっかけを与えてくれたタイトルでした。

――エゴと献身って何が違うと思いますか。

鈴木 献身もエゴのうちなのかなと僕は思います。たとえば恋人同士の間で、どちらかの好きだっていう思いが一方的な我儘になって、それを相手が嫌がったとしたら嫌なエゴですけど、僕は好きな相手から、あなたのことがほしいの、これが自分のエゴなんだって言われたらすごくうれしいですから。

宮沢 本当にその通りで。エゴって美しいものになるポテンシャルもあれば、はたまた人を傷つけるものになってしまう可能性もあって。エゴと献身なんて紙一重だよなと思います。

鈴木 極端に言えば、人間関係って全部エゴのぶつかり合いであり、混じり合いな気がしていて。仮に相手のエゴを優先させたとしても、それはこの関係を崩したくないという自分のエゴのもとにやってるわけだから。極論、相手の幸せを願うことですら、相手に幸せになってほしいという自分のエゴでしかない。でも、そういうエゴを持っていることが人間の美しさだし、だからこそ映画にする意味があるんじゃないかなと。

宮沢 そう考えると、エゴって人間独自のものというか、他の生物にはないものなのかもしれないなって気がします。エゴというものを与えられた以上、みんながいちばん幸せになる形でエゴを貫くことができたらすごくいいんじゃないかなと考えたり。

鈴木 それこそ、いかにそれぞれのエゴを全体のためになるように調整してきたかが人類の歴史だと思うんです。お金を儲けたいとか、おいしいものを食べたいとか、いい生活がしたいとか、エゴにはいろんな種類があって、それを完全に抑えることは誰にもできない。だからこそ、各々のエゴをどうやって全体にとって良い方向に動かしていくかを考え、バランスをとっていくしかないんじゃないかな。

相手によって自分を演じ分けているところに共感しました

――鈴木さんは役を掴むために何から入りましたか。

鈴木 原作の高山真さんがご自分をモデルに書かれているので、まずは高山さんの人生を辿っていくことから始めました。高山さんのエッセイを読み、生前お付き合いになられた方にインタビューさせていただきつつ、雑誌の編集という仕事を学び。あとは、彼のセクシュアリティであるゲイということに対して、当事者の方々へインタビューを行うと同時に、ゲイの役を演じる以上、この映画が社会にどういう影響を与えるのかということにも無関係ではいられないと思ったので、LGBTQに関する現在の社会的な問題をはじめ、基本的なことから時間をかけて勉強させてもらいました。

――高山さんについて、どんな方だと思いましたか。

鈴木 結構自分と似てるなと思いました。たまたま同じ大学出身で、同じ言語学を専攻してたりとか、地方からの上京組だとか、共通点があったのもそうですし。高山さんは自分の気持ちを言葉にする仕事をしていて、僕もちょっと違いますけど、似たようなことをやっているせいか、常に自分で自分を観察する癖がありまして、そこも似てるなと思ったり。あとはそうですね、僕がいちばん共感したのは、いろんな状況によって自分の顔を使い分けているところですね。

――自分の顔、ですか。

鈴木 いろんな方の話を聞いてると、それぞれコミュニティによって高山さんの印象が違うんですよ。みんなそういう部分はあると思いますが、特に印象の差が激しい気がして。彼の場合は同性愛者であることも影響して、そうならざるを得なかったところもあるんですけど。僕の場合も、職業柄いろんな場面に応じて、無意識に鈴木亮平という人間を演じ分けている部分があると思います。ひょっとすると、役者をやる前からそういうところがあったかもしれない。だから俳優になりたいと思った部分もあるのかな。その点にも共感しましたね。

――ということは、実際に演じるにあたってもゲイコミュニティの中にいる浩輔と、編集者としての浩輔、龍太と一緒にいる浩輔、龍太の母・妙子といる浩輔で、それぞれ顔が違うという意識を持って臨んだのでしょうか。

鈴木 そこはLGBTQ+インクルーシブディレクターのミヤタ廉さんとかなり丁寧に話し合ったところです。人はみんな演じ分けてるし、僕も演じ分けてるんですけど、彼の場合はそこに、自分がカミングアウトしている相手かどうかというレイヤーが乗っかるので、繊細にやっていかないといけないなと。少なくともゲイの当事者ではない僕が俳優として演じるわけですから、そこは最低限必要だと思いました。

――個人的には、高山さんといえばフィギュアスケートに対する深い造詣が印象的です。

鈴木 そうなんです。好きなものへの情熱がプロ顔負けなんですよね。

――ですから、ケーキ屋でケーキについて語っているシーンなんて、きっと高山さんご自身もこんな方だったんじゃないかなと思いました。

鈴木 そこの台詞はほぼまんまらしいです。「イデミ スギノ」を訪れたときに、この味知ってるとなったらしくて。オーナーシェフの杉野英実さんに話を聞いたら、15年前に自分が住んでいた街でお店をやっていて、高山さんもよくそのケーキ屋さんのケーキを買っていたことがわかったんです。その味を15年ぶりに食べただけでわかるのがすごいし、「イデミ スギノ」はその後東京でいちばんおいしいとも言われるケーキ屋になったので、やっぱり味覚のセンスが抜群だったんでしょうね。

嫌でも自分がどんどん裸になっていく感覚がありました

――宮沢さんは役づくりについていかがですか。

宮沢 僕もいろんな方のお話を聞いてリサーチをするところから始めました。あとはパーソナルトレーナーの役でもあったので、まず体をつくろうと。

――メタ的な質問で恐縮ですが、鈴木さんのトレーナー役って荷が重くないですか。

宮沢 重いです(笑)。しかも亮平さんがその前の作品が鍛えている役だったので、初めてお会いしたとき、すごく体が大きくて。僕はもともと細いから、結構トレーニングをして人生MAXの大きさだったのに、それでも並ぶと亮平さんの方が全然大きかったです(笑)。

鈴木 大丈夫。今回は、痩せさせることが目的のトレーナーだから。そういう人は細い人が多いんですよ。そうしないと説得力がないから。

宮沢 そう言ってもらえると安心しました(笑)。きっと知識についても亮平さんの方が詳しいと思ったので、とにかく気持ちだけでも上だと信じてやろうと。実際、撮影に入ったらそのあたりのことはまったく気にならなかったので、大丈夫だったと思います(笑)。

――宮沢さんは、浩輔という男性についてどんなことを思いましたか。

宮沢 自然と愛せる人物でした。自分が持ってないものを持っていて。それは別に地位とかお金とかではなくて、龍太というキャラクターが持ってないものを浩輔さんは持っていて。一緒にいるだけで、すごく満たされる自分がいたんですよね。別に何かを求めてるわけではなくて、いるだけで心地がいい。だからこそ、その心地よさに罪悪感を抱く瞬間もあって。自分のことをどんどん知ってもらいたいと思うがゆえに、自分の隠している部分をさらけ出せないことに対する苛立ちが爆発して、距離をとらないといけないと思うようになったのかなと。うまく説明できないんですけど、嫌でも自分がどんどん裸になっていく感覚が浩輔さんといるとありましたね。

取材・文:横川良明 撮影:友野雄

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