『Grasshopper vol.9』同世代スリーマンの再来! ofulover×postman×Absolute area
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『Grasshopper vol.9』1月30日@下北沢CLUB Que Photo by 稲垣ルリコ
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すべて見る2023年1月30日月曜日、2023年一発目となるGrasshopper。名古屋で対バンして以来、久しぶりに集合した同世代バンド、ofulover、postman、Absolute areaの3組の共演を見に、多くの観客が下北沢CLUB Queに足を運んだ。
ofulover
怪しげな洋楽のSEと共にメンバーが登場する。全員が見合い、揃って爆音を鳴らすとライブが始まる合図だ。「お待たせしました、俺たちが!神戸ロックバンド、ofuloverです。どうぞよろしく!」と中本樹(Vo/Gt)が少し低くて太い、ダンディーな声で観客に挨拶をした。1曲目は『Night is mine』で、歌い始めから手拍子を煽り、観客は音楽に合わせて跳ねるように手拍子をする。リズムに乗り気持ちが上がっていき、サビでは多くの拳が上がった。ofuloverはたった1曲でフロアの熱量をMAXにした。続く2曲目『夜に唄えば』は、民謡のようなテイストも感じる明るい曲だ。子供っぽい声で歌ったり、大人っぽい声で歌ったりと、声色が途中で変化する。そうした声遊びが中本の歌の表現力を広げていた。
今回の対バンメンバーとは以前にもライブをしたことがあり、思い入れがあるという。対バンバンドへの想いを述べたMCの最後に中本が手を広げると、それに合わせてドラムが食ってかかるように入り、『サイトジャックラブ』が始まる。アサダ(Gt)は高速のギターカッティングを見せた。ofuloverの見どころの1つにはリードギターがある。彼は基本的に直立不動でギターを弾くが、手元だけが滑らかに動き、難しいギターリフを淡々とこなす。そこが非常に魅力的だった。続く曲は『なれるはなれる』。中本が作ってから一番好きになった曲だという。透き通ったギターの音が一音一音響く。スポットライトに照らされて中本が静かに歌う。観客は気持ちよさそうに横に揺れる。
ドラムが始まり、突き刺すように鋭く伸びる音のギターリフが聴こえてくる。一瞬音が止まった瞬間に中本が『風を刺す』と囁き、曲が始まる。アサダとちゃそば(Ba)がステージの前に出て弾き、観客を魅了し、中本はマイクにぶつかりながら情熱的に歌った。ギターを抱きしめるようにコードをかき鳴らす姿を観客はじっと見つめた。メンバーの脱退という挫折を乗り越え、今が一番楽しいと語る中本。「こうなったのは偶然じゃない、俺たちの運命を歌います」といって始めたのは『運命』。サビではその意志を受け取って熱量を帯びた観客が高く拳を突き上げた。最後の歌ったのは『short hope』。前のめりに演奏する姿が印象的だった。彼らはフロアの後ろの方まで手が上がる様子を見届けて、ライブの幕を閉じた。
postman
SEと共に続々と入場する。最後に入場した寺本(Vo/Gt)は全身真っ赤の衣装を身に纏っていた。彼がギターの弦をなぞると金属音のような不思議な効果音が鳴り出す。1曲目は『Hazy Daisy』だ。ベースの重低音の響きは体を振動させ、リバーブがかかってふわふわとしたリードギターの音はフロアに充満する。そうして生み出された幻想的な空間の中に、温かい歌声が響いた。曲が終わり、寺本が手を挙げるとすかさずドラムのカウントが入り、『発明家』が始まる。観客の手拍子が曲の盛り上がりを増長させる。サビでは兼本(Gt)のタッピングが炸裂した。ドラムだけが残り、「postmanです、最後までよろしく!」と改めて挨拶すると、カッティングギターが特徴的な『Hot Apple Tea』が始まる。そのリズミカルさに観客は体を小さく揺らし、手を高く上げた。
フロアの奥まで通る声での弾き語りから始まった『セレクティブサンクション』。ギターのダークなリフが鳴り出し、ストロボの照明がたかれた激しいステージが見られた。今までの曲とは毛色が違い、ライブに変化を持たせる。観客は縦に飛び跳ねるように揺れながら、音楽を楽しみ、叫び声のような歌声はステージの熱量を上げた。曲が終わると寺本はギターを下ろし、タンバリンに持ち替えた。新曲『PIRATES』だ。タンバリンに合わせて観客が手拍子をし、浅井(Ba)は足を広げて低姿勢でベースをかき鳴らし、ギターとベースのユニゾンで迫力が大きく上がる。床まで振動が伝わり、見ている人に興奮をもたらす演奏だった。
最後の『光を探している』は、寺本の綺麗な裏声が響くアカペラから始まった。全員が同じストロークをし、高まる温度感とバンドの一体感が感じられた。胸が熱くなるような音楽に観客も高く拳をつき上げた。多様な引き出しを持ち、引き込まれるようなライブを見せてくれた。
Absolute area
「下北沢の皆さん、最後の最後まで楽しむ準備はできていますか!!Absolute areaです、どうぞよろしくお願いします」と山口諒也(Vo/Gt)は明るく挨拶して、初めの1曲『いつか忘れてしまっても』を始める。一音一音丁寧に歌い上げる安定感のある山口の歌声がフロア中に高らかに響いた。また、髙橋響(Dr)がパワフルなバスドラムを叩きながら、観客の手拍子を煽る。ポップなメロディーにポップな歌詞が乗った明るい曲だ。そのまま続くのは『いくつになっても』。山口の歌声は低音から高音まで振れ幅が大きく、Absolute areaの曲は彼にしか歌えない唯一無二の曲になっている。この歌声が彼らの楽曲の特徴の1つとも言える。フロア中の拳が突き上がる。その後の『ひと夏の君へ』では歌い出しから観客が手を上げた。高速のアルペジオにドラムのスネアの響き、ブレないベースライン。3人のバランスが非常に良く、その安定感から生まれる楽曲の熱量に自然と拳を上げたくなるのだろう。山口はユーモアあるMCを見せたが、そうしたキャッチーな人柄も惹かれる要素だ。
山口は横を向いてセッティングされたキーボードに手を置き、次曲『カフネ』を始めた。真っ直ぐで優しい声がライブハウスに広がる。観客はじっとそれを見つめ、気持ちよさそうに聞いていた。横を向きながらもフロアの方を見ており、歌を届けようとする姿勢が伝わってきた。続く『記憶の海を泳ぐ貴方は』は、今までよりも一層大人っぽい声で歌い出した。水色のライトに照らされる中、ベースの低音がよく響き、海の深さを連想させる。迫力あるドラムが途中から入ると、音圧が増して圧巻された。頷きながら見ている人が多く、曲に聴き惚れていたという表現が当てはまるのだろう。
最後の曲は『僕が最後に選ぶ人』。萩原知也(Ba)が楽しそうに動きながらベースをかき鳴らす。フロア中の観客が手を挙げて下さない。彼らの楽曲にはずっと手を上げたくなるほどの歌の力、ライブの魅力がある。最後に向かい合ってかき鳴らしていると、曲が終わる前から多くの観客が頭の上で拍手をしていた。
彼らがステージを降りると、アンコールの手拍子が起こる。それに応えるために再び戻ってきた彼らは、随分昔に作って、最近はまったくやっていなかったという、『未来像』を演奏した。将来への不安や期待などの思いを乗せた、疾走感のある熱いロックに彼らの原点があるのだと感じた。山口の気持ちよく伸びる歌声に、髙橋のコーラスが綺麗に重なる。最後の最後まで、3人のまとまりを強く感じるAbsolute areaらしいライブを見せてくれた。
Text by らいれいな
Photo by 稲垣ルリコ
イベント公式サイト:
https://fan.pia.jp/grasshopper/
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