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菅井円加インタビュー ジョン・ノイマイヤー最後の日本ツアーに向けて

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菅井円加 (c) Kiran West

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ドイツの名門、ハンブルク・バレエ団が5年振りにやってくる。1973年以来カンパニーを率いてきたジョン・ノイマイヤーの、芸術監督としての最後の来日でもある。いまや“生ける伝説”として称えられる巨匠のもとで2019年より最高位のプリンシパルとして活躍する菅井円加に、ノイマイヤー作品の魅力、日本公演で上演される作品の見どころを聞いた。

めくるめく名場面と、その繋がり方も見どころの『ジョン・ノイマイヤーの世界』

『ジョン・ノイマイヤーの世界』(c) Kiran West

──菅井さんにとっては、プリンシパルとして参加される初の日本公演となりますね。いまどんな思いでいらっしゃいますか。

菅井 本当にもう楽しみで仕方がないです! しかも私の大好きな『シルヴィア』のヒロインを演じ、〈ジョン・ノイマイヤーの世界〉でジョンの素晴らしい作品の抜粋を踊ることができるなんて、モチベーションのボルテージはもうマックス(笑)、です。家族や友人も観に来てくれるので、本当に楽しみにしているんです。

──前半の日程で上演される『ジョン・ノイマイヤーの世界 Edition 2023』は、ノイマイヤーの数々の作品の抜粋で構成される見どころにあふれた舞台となりますが、菅井さんはどの場面に出演されるのですか。

菅井 まずは冒頭の『キャンディード序曲』。バーンスタインの音楽で踊るとても楽しい作品で、私も大好きなんです。それから、日本公演の後半の日程で全編上演する『シルヴィア』からのパ・ド・ドゥ(編注:踊り手ふたりによる踊り)。終盤には『マーラー交響曲第3番』も踊ります。シンプルで美しいパ・ド・ドゥなのですが、こんな素晴らしい作品を踊らせてもらえるなんて、恐れ多くて……! この『ジョン・ノイマイヤーの世界』は、ジョンの代表作、それも選び抜かれた作品の名場面が次々と出てきて、その繋がり方も見どころです。皆さんきっとお腹いっぱいになっていただけると思います!

『ジョン・ノイマイヤーの世界』(c) Kiran West

──ノイマイヤー自身も出演されて、ご自身の振付家人生を振り返る趣向になっていますね。

菅井 そうなんです。実際に舞台に立って自身でナレーションもされるので、ジョン・ノイマイヤーとハンブルク・バレエ団を存分に楽しんでいただけるプログラムではないかと思います。最近は『ジョン・ノイマイヤーの世界』をご覧になって、ここで観た作品を全幕でも観てみたいと劇場に足を運んでくださる方も増えているんです。日本の皆さまも、この公演をきっかけにハンブルクに公演を観に行きたいと思っていただけたら嬉しいですね。

共通点も多いヒロイン、シルヴィア

──後半の日程で上演され、主演される『シルヴィア』は神話をベースにした物語です。ヒロインのシルヴィアは狩りの女神ディアナに仕えるニンフという設定で、第1部での彼女は、弓を手に森の中を勇ましく疾走する姿で登場します。彼女を演じるにあたり、どのような思いで取り組んでいましたか。

『シルヴィア』(c) Kiran West

菅井 実は、シルヴィアは私自身がそのままで臨むことができるくらい、ほとんど苦労することなく取り組むことができた役柄なんです。負けず嫌いのところとか、男勝りのところとか──自分で言うのもどうかと思いますが(笑)、共通点が多いんです。ジョンも私の踊りを見て、第1部については最初から「問題ない」と言ってくれたんです! でもその後、1部後半以降の場面については、本当にいろんなアドバイスをもらいました。彼女はアミンタと出会って、大きく変わっていくんです。

──シルヴィアに恋をし、森にやってきて彼女にアプローチする羊飼いのアミンタですね。

菅井 ところが、シルヴィアは男性と話したこともないし、見たこともない。そういう環境で過ごしてきたので、アミンタと出会って恋に落ちる、といっても、恋に落ちるということ自体、もう意味がわからないんです。すべてが初めてのことなので、この変な感情って一体何なんだろうと戸惑います。中盤からは、シルヴィアのそんな繊細な部分を徐々に見せていくことになります。

『シルヴィア』(c) Kiran West

──愛の神アムールの存在も大きいのではないでしょうか。アムールはその後、詩人のティルシス、ハンサムなオリオンに変身し、シルヴィアに新しい世界を見せていきます。

菅井 第2部では装置も衣裳もがらりと変わります。シルヴィア自身も「私、どうしてこんな姿に!?」、「なぜこんなドレスをまとっているの?」と戸惑いますが、やがてそんな自分をどんどん受け入れ始めるんです。変化していく自分に違和感を覚えながら大人になっていくシルヴィアを演じることは、少し難しく感じました。

──ノイマイヤーからはどんなアドバイスがありましたか。

菅井 とても細かいところまでアドバイスしてくれました。ジョンにはちょっとした目の動きや顔の動きにもこだわりがあります。それ自体は小さな違いかもしれないけれど、そうするのとしないのとでは表現として大きな違いに──。とても勉強になりました。ジョンには、自分の作品をダンサーにどう踊ってもらいたいかというビジョンがあります。私もそのように踊ろうと思って取り組みますが、何度か舞台を経験していくうちに、そうしたジョンの味に、私の味もちょっと加えたいなと思うようになります。しばらくしてからそれを実践してみると、終演後にジョンから「ここは良かった」、「ここについては、あなたの言いたいことはわかる。でももうちょっとこうしてほしいんだ」と、どんどん次に活かせることを言ってくれます。

『シルヴィア』(c) Kiran West

──この作品は1997年にノイマイヤーがパリ・オペラ座バレエ団のために創作した作品で、日本でも、パリ・オペラ座のエトワールが終盤のパ・ド・ドゥを抜粋で踊る機会がたびたびありました。この場面の魅力を教えてください。

菅井 大好きなパ・ド・ドゥです! お互いに別々の時を過ごしてきて、最後に森の中で偶然出会う。よく見るとふたりとも髪には少し白髪がまじっていて、お互いにいろんなことを経験してきたけれど、こうして改めて再会して、昔の記憶がわーっと蘇ってきて、でも何をどう話していいのかわからなくて──。もどかしさの中に、複雑な感情が一気に押し寄せる場面なので、いまの言葉で言うならエモいパ・ド・ドゥ、って言えるかもしれません(笑)。抜粋でここだけ観ても素敵ですが、全編を通して観たら、本当に何も難しいことを考えることなく共感していただけるのではないかと思います。踊っている私も、もちろんテクニックの面ではやらなければいけないことがたくさんありますが、ドリーブの音楽に導かれて、パートナーともお互いに感情が昂ぶった状態で踊っているので、そこまでに作り上げてきた感情にまかせて、何も考えずに踊ることができます。

(c)Ayano Tomozawa

──遠い時代の神話をベースにした物語とは思えない、いまの私たちの物語のようにも思えます。

菅井 アムールやティルシスはちょっとファンタジー系のキャラクターのようにも見えますよね。でも神話だからといって身構えて観る感覚にはなりません。この作品に限らずジョンの作品はすべて、現代的な感覚にあふれています。この『シルヴィア』も舞台装置や衣裳はとても現代的ですし、バレエを見慣れていない方でも存分に楽しめると思います。ドリーブの音楽も私は大好きで、この音楽を聴きながら寝ることもあります。とくに、シルヴィアの登場シーンはすごく迫力があって、私の気分ももう最高潮に盛り上がって舞台に出ます。

ジョンとの残り1シーズン。1日1日を大切に

──2012年のローザンヌ国際バレエコンクールで第1位となったのをきっかけにハンブルクに渡り、ナショナル・ユース・バレエを経てハンブルク・バレエ団で活躍するようになった菅井さんにとって、ノイマイヤーはどのような存在なのでしょう。

菅井 ここに来てジョンと一緒に仕事をさせてもらうようになって、本当に良かったなと思っているんです。ジョンはとても感情豊かで繊細で、人間味あふれる人なんです。ここで私は、自分をどう表現するかということ、また日常生活で感じることが舞台で活きるということも学ぶことができました。彼もそんな私をちゃんと見てくれていて、日常の、ちょっとした変化でも気づいてくれることがある。「今日はちょっと違う感じが良かったよ」と声をかけられたりすると、報われた思いがしますし、そんなふうに思えるようになったのも彼のおかげです。感謝の気持ちでいっぱいです。

(c)Ayano Tomozawa

──ノイマイヤー芸術監督の任期は当初2022/23年のシーズンで最後と言われていましたが、2024年の夏まで延長されたそうですね。

菅井 もう1シーズン、彼と一緒にいることができます。私も含めて皆、複雑な心境ではありますが、ジョンと仕事ができるのはとても貴重な体験ですし、1日1日を大切に過ごしていきたいですね。今回はジョンが芸術監督として実施する最後の日本ツアーになります。少しでも皆さまにいい踊りを観ていただけるよう、また、お腹いっぱいになって劇場をあとにしていただけるよう努めたいと思っています。

取材・文:加藤智子

ハンブルク・バレエ団公演 2023年日本公演

■『ジョン・ノイマイヤーの世界』Edition2023
2023年3月2日(木) ~5日(日)
会場:東京文化会館

■『シルヴィア』
・2023年3月10日(金) ~12日(日)
会場:東京文化会館

公式サイト:
https://www.nbs.or.jp/stages/2023/hamburg/

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