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【おとなの映画ガイド】“有村架純史上” 最高のキャラ!『ちひろさん』

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『ちひろさん』 (C)2023 Asmik Ace, Inc. (C)安田弘之(秋田書店)2014

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2月後半も注目作でいっぱいです。これから2週間のうちに公開される主な作品は、

●2月17日(金)〜18日(土) 公開
マーベルシネマ最新作『アントマン&ワスプ:クアントマニア』、池井戸潤原作の映画化『シャイロックの子供たち』、人気ジャズ・コミックのアニメ化『BLUE GIANT』

●2月23日(木)〜25日(土) 公開
小山薫堂脚本のおふろムービー『湯道』、映画館への愛を描く『エンパイア・オブ・ライト』、有村架純主演『ちひろさん』、9.11テロ犠牲者への補償金をテーマにした『ワース 命の値段』、カンヌ映画祭パルムドール受賞作『逆転のトライアングル』、魔人が現代に蘇る『アラビアンナイト 三千年の願い』と、傑作、話題作がならびます。

今回は、23日に新宿・武蔵野館ほかの劇場とNetflix配信で同時公開する『ちひろさん』をご紹介します。

『ちひろさん』

映画『花束みたいな恋をした』あたりから『るろうに剣心 最終章』『前科者』『月の満ち欠け』、今年の大河ドラマ『どうする家康』と存在感を増していく有村架純の、これは決定版。「ちひろさん」というキャラクターは、久しぶりに出会ったとびっきりチャーミングな存在。自分の街にいてくれたら気分がいいな、でもいそうでいないか。映画でもいい、この人に会えてよかった、と思える人間像だ。これがなかなか深い。

港町にあるふつうのお弁当屋さんの店員。元フーゾク嬢である。どこかの街から流れてきた。フーゾクで働いていたことは、町のひとはみんな知っている。彼女自身もそのことを隠そうとしない。あけすけで口は悪い。レバニラ弁当を頼んだ客には「精力つけちゃってどうすんのお?」とか。飲みに誘われても「今日は先約が。また誘ってえ」とあしらいがいい。

店のお客はもちろん、公園で出会ったひとりで遊ぶ小学生、家庭内の空気が重い女子高生、ショーパブで働くニューハーフ嬢、ホームレスのおじさん……彼女と接すると、誰もが友達になりたくなる。なのだけれど、そんなちひろさんは本当に人間好きなのか、それとも実はそうみえて孤独が好きなのか? その日常、考え、なぞの素顔と過去が、すこしずつ解き明かされていく……。

原作は『ショムニ』の安田弘之の漫画『ちひろさん』。それを今泉力哉が『愛がなんだ』で共同脚本を担当した澤井香織と脚色し、監督した。今泉作品は、男女のややこじらせてしまった愛を描く、変化球のラブストーリーが多いのだが、今回は、すこしテイストがちがう。「ちひろさん」の生き方、その周囲の人たちとの関係を通じて、ひとりで生きていくことについて、思いをめぐらす。

例えば、幸せそうに見える家族のなかで暮らしながら感じる居ごこちの悪さ、自分の居場所はもっと他のところにあるのではとふと思ったりすること。人との関係にふと疲れてしまうこと。自分自身の性格にがっかりすること。人の気持ちを全身で受けとめてしまうこと。……誰もが少しは思い当たるそんな感情を、スケッチのように描いていく。

今泉監督と有村は、WOWOWのドラマ『有村架純の撮休』で一緒に仕事をしたことがある。「ただ可愛いらしいとか明るいとか柔らかいだけじゃない、ちゃんと暗さも持っている人。ちひろさんを演じるなら、根明な人よりはある種、根暗な部分を持っているのは必須条件」(今泉監督)とキャスティングされた。

共演も、そういえば……ご縁を感じる俳優たちで面白い。ちひろさんが母のように慕うお弁当屋の奥さん役・風吹ジュンは『有村架純の撮休』で有村の母親役だった。偶然再会するフーゾク店の店長役のリリー・フランキー、今泉力哉作品の常連・若葉竜也も『…撮休』に出演していた。ちひろさんになつく小学生マコト(嶋田鉄太)の母役は佐久間由衣、NHKの朝ドラ『ひよっこ』で有村の親友役だ。女子高生オカジ役の豊嶋花、なんと、『どうする家康』の瀬名(有村)の侍女ではないか!

よくできた映画は、細部への心配りも魅力だ。この作品ではでてくる食べ物がなんともおいしそうだ。特に弁当屋「のこのこ」のお弁当は圧巻で、こんなのあったら行列必至だ。担当したのはフードスタイリストの飯島奈美。『かもめ食堂』『深夜食堂』、Netflixの『舞妓さんちのまかないさん』……彼女が手がけるとドラマがふた味ほど変わります。

なんとなく「寅さん」のことを思い浮かべる人もいるかもしれない。一見明るい性格。口は悪い。ガラも悪い。腹はわるくない。面倒見はいいが、人との距離感を絶妙にとる、孤独を愛する自由人。でも決定的なちがいは、寅さんには待ってくれている家があること……かな。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

【ぴあ水先案内から】

植草信和さん(編集者、元キネマ旬報編集長)
「……観る者の心に希望と勇気の灯を点してくれる。今泉力哉は現代のフランク・キャプラだ(ちょっとホメすぎかな)。……」

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