山田裕貴・間宮祥太朗・岡山天音が語る男の友情「男友達はずっと支えになるもの」
映画
インタビュー
左から岡山天音、山田裕貴、間宮祥太朗 撮影:鬼澤礼門
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ジャズに魅せられた少年が世界一のジャズプレーヤーを目指す姿を描く漫画『BLUE GIANT』がアニメーション映画化された。
ジャズのために日々を費やす主人公・宮本大と共にバンド“JASS”を組むのは、同世代のピアニスト・沢辺雪祈と大の高校の同級生でドラム初心者の玉田俊二だ。それぞれの熱が混じり合い躍進していくJASSの姿は観ているものを高揚させる。
それぞれ大、雪祈、玉田の声を演じた山田裕貴、間宮祥太朗、岡山天音に話を聞いた。
原作はエネルギーをチャージする感覚で読んでいました
――原作である漫画『BLUE GIANT』にはどのような印象を抱いていらっしゃるかお教えください。
山田裕貴(以下、山田) 大のキャラクターにものすごく惹かれる部分があって。世界一のジャズプレーヤーになると信じてその道を歩んでいる。多分、普通に生きていたら、「大丈夫かな」とか「自分なんか」と思う人がほとんどだと思うんですけど、大はただ「俺は自分の音を届けたいだけだ」という思いを貫ける強さはものすごく魅力的だな、と思います。
その歩んで行く道のりには、例えば高校生のときに出会った先生だったり、サックスを教えてくれた人や、雪祈、玉田とか、人との出会いも彼にとって欠かせない道筋で、それもまたセッションのように感じましたね。
間宮祥太朗(以下、間宮) 昨日、完成した映画を観て、改めて漫画も思い返しながら考えると、最近、使われている言葉で言うと人間の営みなんて、不要不急だらけじゃないですか。飯食って寝て、衣食住以外のことはだいたいが不要不急で、世の中がお金で回っていること自体、動物というレールから外れてる。その中で人間は、音楽や絵、僕らで言ったら映画や舞台とか、人生をただ生きるだけじゃなくて、豊かなものにしたり、自分の喜怒哀楽という感情を、言語じゃなくてひとつの作品として伝えてそれを受け取る人がいる、というものを発明している。その発明したものの良さを改めて感じました。
音楽というものの良さと、この3人にとってはライブをしている瞬間が一番生きていることを感じられる時間だということがものすごく伝わってきます。
岡山天音(以下、岡山) 大という強烈な人物が真ん中にいて、周りのキャラクターたちがどんどん影響を受けていくストーリーだと思うんですけど、同じように読んでいる僕らも大にお尻に火をつけてもらうというか。娯楽としても、ワクワク楽しませてくれる優れた作品だと思います。エネルギーをチャージする感覚で原作は読んでいた気がしますね。自分が好きなものをもっと好きになろうという気持ちになれるし、そこにもっともっとエネルギーを注ぎこもうと思えます。
――登場人物たちはそれぞれ、ジャズに対する向き合い方も、頑張り方も違うと思うんですが、間宮さんと岡山さんは雪祈と玉田にどんな印象をお持ちですか?
間宮 雪祈は客観視できる人ですね。自分の実力や、他人の実力とか、「どうしてこうなるのか」を自分で知ってる人。でも、知っているからこそ、大とは違って自分の可能性を限定してしまっているんですよね。だから、後半は大と玉田に対して引け目や、なにか裏返った憧れを感じたり。本当は自分のほうが恵まれている環境、かつ才能もあると思っているけど、だからこそ2人にはある何かが欠落していると思ったりもしているんですよね。
岡山 玉田はすごく普通の青年だと思います。平均より不器用すぎるのかな、という気もしますけどね。ただ、その分、大と出会えたことでドラムにのめり込んでいくキャラクターなんじゃないかな、と思います。
――山田さんは大というキャラクターについて、演じるにあたって捉え直した部分はありますか。
山田 原作では、大はもう少し明るいイメージがありました。でも、アフレコのときには結構まっすぐな表情が多かった。もちろん、かわいらしい部分もあるんですけど。映画として切り取ったときに、雪祈にはっきりと思いを伝えるところだったり、玉田には優しい目を向けているとか。大の明るさというよりも、人間としての優しさや強さがものすごく大事なのかもしれない、と思いました。
あとは大の音、声ですね。原作が「漫画から音が聞こえてくる」と言われている漫画なので、耳が肥えている人が音を想像しながら原作を楽しんでいるわけじゃないですか。アニメーションになるんだったら、どんな音が聞こえてくるんだろう、って楽器じゃなくて、声にも思うところがあると思うので、そこはすごく気にしましたね。
男同士の友情はずっと支えになるもの
――声優は俳優という普段のお仕事とはフィールドが違うところかと思うんですが、みなさんで声優のお仕事についてお話する機会はありましたか?
岡山 なんとなく経験はあるのかどうか、みたいなさわりの話はしました。でも、あんまりみんな経験がなかったんですよね。
山田 だから、3人で合わせたときに、みんなで顔を見合わせたのはめちゃくちゃ覚えてる。
――それはどういう感情で?
間宮 不安です。
山田 大丈夫かな、って。お互いに大丈夫かな、と思ってるのも伝わっていたし、それを察して「難しいね……」っていうぐらいの感情だった気がします。
間宮 そうですね。
岡山 難しさがまず来ましたね。自分としては気持ちを入れたけど、全然届いていないということもありました。アフレコの時点ではまだ絵が完成していない場面もあったので、完成して、そこに声が入ったら全く印象が違うんだろうな、と思って、そういったのも含めて出来上がりに対しての不安みたいなのはありました。
――完成した作品をご覧になっていかがです?
岡山 いや、わからないですね。結構、練習もしましたし、自分の中で反復しすぎていて。これがどう届くのか分からないですし。でも、2人の声はすごく好きでしたね。
山田 え? 今褒められました?
岡山・間宮 はははっ!
岡山 大は現場で感じていた以上にすごく愛嬌があるというか、愛おしいキャラクターになっていましたし、雪祈も雪祈ってこんな声なんだな、というのをすごく感じました。
山田 僕も2人がめっちゃぴったりだな、と思っていました。現場でも、出来上がっても、同じこと思ってます。
間宮 映画のクオリティや音楽、ライブシーンも含めて不安はないんですけど、自分の声に関してはいまだに客観的に評価するのは難しいですね。
山田 うん。
間宮 そんなこと言うなよ、って思われるかもしれないですけど、ある一定層の方には「やっぱり声優の方がよかった」って言われる覚悟も出来ています。その上で、自分たち役者がやったことは無意味ではないと思うので。
山田 すごく意味があったと思うし、今、もし雪祈と玉田がほかの声優さんになったことを想像しようとしてもできないです。2人がこうやって喋っているときでも、「あ、雪祈の声だ、玉田の声だ」と思うときがあるぐらい。
岡山 確かに。
間宮 天音、観終わったときに思わなかった? この映画に続編があっても俺らはいないから裕貴くんがんばってね、って。
岡山 思った(笑)。
山田 ……寂しいじゃん!
間宮 でも、実際にそうなんだもんね。大は外国に旅立って行くから。
山田 次はドイツだからね。
岡山 またやっていい?
山田 やってやって! ドイツ編で別のドラムの役、やってよ。
――今回、男性同士の友情や絆が感じられる作品かと思うんですけど、みなさんが男性同士の友情が支えになるのはどんなときですか。
間宮 ずっとです。
山田 かっけえな!
間宮 俺があんまり一人が好きじゃないから、というのもありますね。
岡山 でも、弱ってるときじゃないですかね。異性の友達にそんなに内側を打ち明けたりすることはないですけど、同性だとやっと休みになったときに遊びに行くだけでもすごく元気になれるし、落ち込んだり悩んだりしている時も打ち明けられたりするし。自分がバランスを崩しているときに支えてくれている、ということかもしれないですね。
――山田さんはいかがですか?
山田 「大丈夫?」って聞いてくれるときが、「わあ、いいときに言ってくるな」と思うことがあって。自分から今考えていることを話したとして、こうだよああだよ、って言うわけじゃなくて、「そうだな」「そうだよな」って聞いてくれるのがなんかいいな、っていう。男女関わらず、そういう感じが好きですね。
小学校からの親友は、一緒にいても一言もしゃべらなくなるんですよ。今度東京行くわ、って泊まりに来ても、ゲームして、僕は他のことをやってて一言もしゃべらず。でも、東京に来るって言うタイミングがちょっと力を抜きたいな、というタイミングだったりするので、すごいな、と思います。
心折れそうになっているときも楽しんだほうがいい
――大たちと同じように目標に向かって今突き進んでいる人たちもたくさんいらっしゃると思うんですけど、声をかけるとしたらどんな言葉をかけますか。
岡山 楽しいことをやりましょう。なんでもいいんじゃないですか。楽しいことをやったほうがいいと思います。
――それでも心が折れそうになることもあると思うんですけど、そういうときはどうされますか?
間宮 折れないで! って思います。
岡山 諦めないで! ってね。でも、心折れそうになっているときは、その時しか味わえないので、それはそれで楽しんだほうがいいと思いますね。
間宮 あんまり目標にとらわれすぎないほうがいいかな、と思いますね。目標を達成しないと自分を肯定できないまでいってしまうと、それこそ折れたりするから。少し柔らかめにいたほうがいいんじゃないかな。
――山田さんは、声をかけるとしたら。
山田 その目標はあなたにしか分からないので、自分で考えてください!
もし、迷うことがあっても自分にしか分からない。でも、頑張れることを祈っています。
――山田さん自身は心が折れそうになるときはありますか?
山田 昔は真正面から受け止めすぎてきついなと思うこともありましたが、まあいっか、と思えるようになりました。ちょっと余裕も多分出てきたんだろうな、と思います。全員に好かれなくてもいいし、何が成功かは分からないし。例えば、成功を幸せと感じるかと言ったらそうじゃないんですよね。俳優と人の幸せは違うことがはっきりとわかったんですよ。だから、どっちも大事にできるように、共存させられるといいな、と今は思っています。間宮くんが言っていたように、成功しなきゃダメなんだっていうことはないし。
間宮 うん、ないない。
映画館は3人で一緒に観に行く?
――改めてこの映画の魅力についてお聞かせください。
山田 自分の声を客観的に評価するのはまだ難しいですが、めっっっちゃいい作品な気がしているのは、この作品の力だと思うんですよ。もともとのストーリーの力だったり、キャラクターの力だったり、もちろんそこに僕らが力を込めてやったし、何より楽器の演奏。本当に音楽ってすごいな、と思わされました。
あと、ネタバレなので書けないんですけど僕はラストがものすごく好きで。3人のそれぞれの悩みと葛藤が好きなので。……最高です!
間宮 もちろん『BLUE GIANT』という作品自体が持っている魅力は観てもらったらわかると思います。普段と関わる映像作品との違いでいうと、アニメーションならではの演出方法というか。アングルの切り替え方だったり、回想の入れ方だったり、アニメーションであるからこその自由度ってすごくあるなと思いました。ライブシーンで、吹いてたらさ……。
山田 違う世界に繋がっていってね。
間宮 それが大という人のこれまでの歴史を感じさせて。尺としてはすごく短い映像だけど、本人の歴史、だから今この音が鳴っているんだということや、場の空気が段々飲まれていく様子が分かったり。あと、光はすごい気になりましたね。サックスが光ったり、誰かの眼鏡が光ったりとか。すごく光が効果的に使われてて面白いなと。
山田 玉田のドラムすごいよね!
岡山 もう見所は本当にたくさんあって。でもやっぱり映画館で見るかどうかがすごく大きい作品だな、ということは改めて感じましたね。だから僕も絶対に観に行こうと思います。
山田 俺も。
間宮 一緒に?
山田 一緒に。
岡山 一緒にね、行きたいですよね。
取材・文:ふくだりょうこ 撮影:鬼澤礼門
ヘアメイク:(山田さん)小林純子、(間宮さん)三宅茜、(岡山さん)山本理恵子(TWIGGY.)
スタイリング:(山田さん)森田晃嘉、(間宮さん)津野真吾/Shingo Tsuno(impiger)、(岡山さん)岡村春輝
衣装協力:(間宮さん)エトロ(ジャケット¥335,500税込、シャツ¥59,400税込、パンツ¥69,300税込、シューズ¥94,600税込)
<作品情報>
映画『BLUE GIANT』
2月17日(金) 全国公開
監督:立川譲
声の出演:山田裕貴、間宮祥太朗、岡山天音
公式サイト:
https://bluegiant-movie.jp/
(C)2023 映画「BLUE GIANT」製作委員会 (C)2013 石塚真一/小学館
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