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米吉&橋之助が語る! 新作への挑戦と歌舞伎への想い 木下グループpresents 『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーⅩ』

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インタビュー

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中村橋之助×中村米吉 撮影:源賀津己

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歌舞伎ファンからも、それ以外からも大きな注目を浴びた『新作歌舞伎 風の谷のナウシカ』や、デジタル技術を駆使して新たな可能性を広げた『超歌舞伎』など、意欲的な挑戦を続ける歌舞伎界。3月に上演される『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーⅩ』も、“ナウシカ”を手掛けた尾上菊之助が企画・演出し、“超歌舞伎”を成功させた中村獅童らと共に送る話題作だ。

今回、菊之助や獅童の他にも、尾上松也や坂東彦三郎、中村錦之助、坂東彌十郎、中村歌六、そして中村梅枝、中村米吉、中村橋之助といった歌舞伎界をけん引する重鎮から20~40代の人気歌舞伎俳優たちまで、豪華な顔ぶれが揃った。中でも米吉と橋之助は、近年、大役を任されることや外部出演も増え、ますます注目される存在だ。京都・南座では、女方(米吉)と立役(橋之助)として2年続けてコンビを組み、その“美男美女”ぶりが話題となった。ひとたび舞台から降りると絶妙なやりとりを繰り広げるふたりに、本作への意気込みを聞いた。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーⅩ』扮装メインビジュアル

物語の舞台は、巨大な脅威「シン」に人々が怯えて暮らす世界。少年ティーダ(菊之助)は召喚士の少女ユウナ(米吉)に出会い、彼女を援護する仲間たちと旅に出る。水球競技ブリッツボールでの熱戦や、父の盟友アーロン(獅童)との再会により、ティーダたちは「真実」に近づいてゆくが、グアド族の族長シーモア(松也)に追い詰められて……というストーリー。

『新作歌舞伎 風の谷のナウシカ』のナウシカ役に続き、今回もヒロインを演じる米吉は、「ストーリーの軸となるのは、やっぱりヒロインのユウナ。女の子らしい可愛らしさはもちろんですが、世界を救いたいという意思の強さや、自分を犠牲にすることもいとわない高潔さなど、さまざまな内面も表現しないといけない。ユウナのキャラクターが魅力的であればあるほど物語の切なさや哀しさが増してくると思うので、そこはしっかり演じたいです」と話す。

一方の橋之助は、ブリッツボールの選手兼コーチで、のちにユウナの旅に同行し、「ガード」を務めることになるワッカを演じる。

「ワッカは本当にまっすぐな性格で、いつもキラキラ、元気! というキャラクター。でもユウナに対する想いというのが底にはあるので、その対比みたいなところが大切になってくるのかなと思います。あとはあまり『歌舞伎だから』とか考えずに、ワッカらしく舞台に存在できれば……」と言いかける橋之助に、横から「ほとんど(橋之助)本人のキャラじゃない?」と米吉からのツッコミが。橋之助も笑いながら「そうですね、僕、割とワッカぽいところがあるので。似ているところを照らし合わせながら、のびのびと楽しく演じたいですね」と話した。

そこで、ふと橋之助が「ユウナのように自分を犠牲にして、仲間には内緒にしたまま敵方へ向かうっていう。確かに正しいのだけど、そこまでしなくてもいいんじゃない? という行動をするヒロインって、歌舞伎の演目ではいましたっけ」と米吉に質問を投げかける。

「歌舞伎の女方(の役)っていうのは、愛する男性のためとか、我が子のため、ご主人様のため、という立ち位置で物語が進むことが多いので、ゲームのヒロインのような形はあまり多くないよね。ただ、好きな人のために、あえて何も言わずに行動する、っていうことはあるでしょう。『御所五郎蔵(ごしょのごろぞう)』の皐月(さつき)だって、『伊勢音頭』のお紺だって、その人のためになるならと見せかけの“縁切り”をするわけだし」と話す米吉。続けて、「ユウナの場合はその相手が“人”ではなく、“世界”なんじゃないかな。自分がシーモアと結婚さえすれば、“世界”を救えるのではと考えて」と言う米吉に、「なるほど……」と、すっかり聞き入っている様子の橋之助。「あの、しゃべって、もっと!」と再びツッコミを入れる米吉に、「いや本当にそうだなと思って」と、感心しつつ笑って答える橋之助。期待の若手同士、気安く何でも言い合える間柄というのが伝わってくる。

原作ファンの想いを意識しつつ、どれだけ歌舞伎の技法でやっていくか

米吉は『ナウシカ』、橋之助は『ポーの一族』など、映画やコミックを舞台化した作品に出演した経験がある。今回のように、いわゆる2次元のキャラクターを生身の人間として演じる際、意識していることはなんだろうか。

「普段僕らが立っている歌舞伎の舞台とは、違う怖ろしさがあると感じていますね。歌舞伎の古典であれば、まず先輩に教わるわけじゃないですか。そこには教わった通りにやれるかなという怖さがあるし、お客様は、先輩方や僕と同世代の役者が同じ役を演じたのを観ている方もいるわけだから、比べられることもありますよね。それはやっぱり気にしてしまうし、ある意味怖いことですよ。でも今回のような新作の場合は、原作を好きな方も観に来られるわけで、今度はお客様との対峙なんですよね。皆さんの心の中で、『このキャラクターはこうだ』というのがあるし、ユウナ像にしても『こういう子のはず』っていうイメージがある。そういうファンの方の想いはちゃんと意識して挑まなければいけないな、って思っています」と米吉は語る。

中村米吉

「でもね」と、米吉は少し考え込むような表情になった。

「そこにとらわれすぎてもいけないと思うんです。だって原作の本物のたたずまいにはどうやったって太刀打ちできないでしょう。それなら唯一、私たちが太刀打ちできるのはなんだろうというと、いかに歌舞伎にしていくかということ。いかに歌舞伎の女方として、また立役として、ユウナやワッカという人物を形づくるかということだと思うんです。原作を尊重して、どれだけ原作に近づけるかを意識すると同時に、どれだけ歌舞伎の技法でやっていくのかということも考えないと、“新作歌舞伎”として上演する意味がなくなってしまう。歌舞伎の見得をすればいいとかそんな表面的な部分ではなくて、もっと深いところ。歌舞伎のやり方でファイナルファンタジーをどう表現していくのか、ということが大切なんだと思います。」と米吉は言う。

橋之助も「本当にそこですよね」とうなずきながら、「たとえばワッカだったら、ワッカらしい扮装やメイクをして、それらしいセリフ回しや言葉遣いをすれば、まぁワッカに見えるとは思うんですよ。確かに大枠はワッカだなって。でもそれだけだったら、きっと原作を愛するお客様に『見た目はそうなんだけど……なんだか違うんだよなぁ」と思われてしまうと思います。それだけは避けたいし、そうならないようにするにはどうすればいいかって考えると、やっぱり『原作にあるものはなんだろう?』と考えるっていうことですよね。特に今回のような、何十年も愛されているコミックやゲームっていうのは、今ほどいろいろなエンタメがなかった時代に発売されたもの。ファンの方はひとつの本やゲームを大切にして、深く愛して、楽しんでいたわけで。そういう原作ファンの方たちの想いっていうのを絶対に意識しながら役づくりをしないといけないなって思います」と真摯な表情で語った。

中村橋之助

歌舞伎の古典に新作に、さらにはTVドラマやバラエティ番組にと、さまざまな“舞台”に挑んで、まさに注目度急上昇中のふたり。最後はひとりずつに、「『ファイナルファンタジー』で初めて歌舞伎を観る方に、米吉さん/橋之助さんの舞台での魅力をプレゼンしてください」とお願いしてみた。

米吉は、「彼は非常にね、今どき珍しい、男らしい役者さんだなと思うんですよ」と橋之助について語る。「そういう“骨太さ”というか、武張っている(強く勇ましいさま)ところとか、今どきなかなかない魅力なんじゃないかな。男らしいという言葉が使いにくい今の時代ではあるんでしょうが、その男らしさが非常に武器になると思います。え? 最近カッコよくなったって? この方が? いや、それはどうか分かんないけども!」と、褒めながらも最後は辛口で締めるのが米吉らしい。

対して橋之助からのプレゼンは、「米吉さんはまず、めっちゃ可愛い」となんともストレート。続けて「普段の頭の良さだったり、歌舞伎への想いとか演者への想い、愛情、優しさ、そういうのが舞台ににじみ出ているんです。すごく魅力的な、大好きな女方さんです」と笑顔で話してくれた。

インタビュー後の撮影中も、「ぜひ劇場で、生で観てください! 米吉さんのユウナ、絶対に可愛いと思うので!」と橋之助のプレゼンが続き、うるさそうな表情の米吉に、取材班から笑いが漏れるひと幕も。その言葉通り、魅力的なユウナとワッカの姿を舞台で観られる日が、今から楽しみだ。

取材・文:藤野さくら 撮影:源賀津己

木下グループpresents 『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーⅩ』

2023年3月4日(土)〜4月12日(水)
休演日:3月8日(水)、15日(水)、22日(水)、29日(水)、4月5日(水)
会場:IHIステージアラウンド東京

【開場・開演時間】
前編 11:30開場/12:00開演
後編 17:00開場/17:30開演

チケット情報はこちら:
https://w.pia.jp/t/ff10-kabuki/

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