伊藤健太郎が“真実”を探究する編集部員に、舞台『背信者』開幕&配信スタート
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舞台『背信者』ゲネプロより 伊藤健太郎
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すべて見る舞台『背信者』が、3月3日に東京・本多劇場で開幕した。これに先立ち、同日昼に行われたゲネプロの様子をレポートする。
本作は、人と人が会えない(No Meets)コロナ禍に産声を上げた“オンライン演劇”をはじめ、ユニークな手法でエンタテインメントを届けてきたストーリーレーベル「ノーミーツ」とニッポン放送が共同で制作する初の劇場作品。Web会議システム・Zoomを活用して上演された『それでも笑えれば』の岸田國士戯曲賞ノミネーション(2021年)が記憶に新しい小御門優一郎が作・演出を、ニッポン放送の石井玄がプロデューサーを務める。
舞台は、発行部数666万部を記録した創刊300年の雑誌『CAESAR(カエサル)』編集部。25年前の記録的電子災害「ビッグ・クラック」によって数百年も文明が後退した世界で、『CAESAR』は綿密な調査に基づく特集を掲載し、失われた記録を取り戻す役割を担っていた。しかし取材に邁進する編集部は、何が正しくて誤っているのか“真実”そのものを認定する機関・真理省の摘発対象になっており、これまで何人もの部員が“消されて”きたという。
ゲネプロは『CAESAR』の編集会議シーンからスタートした。ミーティングといえば通常は車座になって行うはずだが、キャストは可動式の机を横一列に並べて着席する。丁々発止の議論中、躍動的に動く一瞬を切り取って静止画のようにストップする一同。その姿は、レオナルド・ダ・ヴィンチがイエス・キリストと12使徒による『最後の晩餐』を描いた絵画の構図に……見えなくもない。タイトルの『背信者』を指す裏切り者のユダはどこに配置され、救世主であろうとしたキリストは誰なのか。実物を思い浮かべて符号したくなる、非常に示唆的な幕開けだった。
主演の伊藤健太郎は、確かな真実の探究に情熱を捧げる編集部員・クスノキ役。失われたシェイクスピアの戯曲を復元する劇団、量子力学を立て直す科学者、世界を疑う陰謀論者を取材するうちに、真理省が隠蔽する重大な“真実”にたどり着く。しかしクスノキはやっとの思いで手にした真実より、不確かな“噂”がもてはやされる現実に翻弄される。そんな彼の葛藤を、伊藤は骨太で重厚な演技と誠実なたたずまいで体現した。フェンスを軽々と飛び越えてみせるなど、スタイリッシュな身のこなしも覗かせる。
自称パパラッチを名乗ってスクープ写真を編集部に差し出すキリエ(田中真琴)と、受け取る編集長イザクラ(和田聰宏)によるドラマに満ちた関係性、その裏で自身の進退を考えるカメラマン・スナカメ(鍛治本大樹)の決断も見逃せない。校了に向けて辣腕をふるう副編集長アオタ(青山郁代)と、日和見主義の編集オオシコウチ(相田周二:三四郎)、編集ミハラ(新田桃子)、デザイナー・ババモト(石山蓮華)の処世術にも注目だ。営業カンダ役の上谷圭吾、校閲セキ役のオツハタは複数役を兼ねていた。
何が真実で虚構か曖昧な世界で、クスノキをはじめとする登場人物が最後に目撃する“真実”とは──。現世の映し鏡とも受け止められるドライな結末に、鑑賞後の感想戦も盛り上がるのではなかろうか。話を弾ませるトリガーとして、『CAESAR』編集部がまとめたという最新号(という名の公演パンフレット)購入もお忘れなく。上演時間は約130分強。
公演は3月8日(水) まで。ぴあでは期間中の毎日10時より当日引換券(劇場鑑賞)を販売するほか、「オンライン劇場ZA」で本作を観られる配信チケットも取り扱う。配信は毎公演行われ、いずれも各回の終演後から4月2日(日) 23:59までアーカイブ期間が設けられる。YouTubeのノーミーツ公式チャンネルにてゲネプロの冒頭15分弱が公開されているように、俯瞰やキャストの表情にアップするなど多様なアングルで物語の行方に迫れることだろう。劇場とはひと味異なる観劇体験を味わってみては。
ゲネプロ冒頭14分映像
取材・文=岡山朋代
<公演情報>
舞台『背信者』
2023年3月3日(金)~3月8日(水)
会場:本多劇場
※「オンライン劇場ZA」にて配信あり
■チケット情報(劇場公演・配信公演)
https://w.pia.jp/t/haishinsha/
※アーカイブ期間:各公演配信終了後~2023年4月2日(日) 23:59
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