『Grasshopper vol.10』2月27日@下北沢Daisy Bar Photo by るなこさかい
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すべて見る2023年2月27日(月)、下北沢Daisy Barで、今回で第10回となるチケットぴあ主催Grasshopperが開かれた。お互いに仲が良いというこの2バンドだが、なかなか対バンの機会がなく、東京では珍しい組み合わせである。熱量溢れる2バンドのぶつかり合いはバンドにとっても、観客にとっても、忘れられない特別なライブとなった。
Blue Mash
銀杏BOYZの『BABY BABY』をバックにBlue Mashの4人がドラムのもとに集まり、静かに意気込む。優斗(Gt/Vo)が手を挙げると拍手が起こり、ゆっくりと口をマイクに近づける。弾き語りから始まったこの曲は『素直』。しっかりと息を吸い込み、一言一言を大切に歌うのが彼らしい。テンポアップする直前から観客は耐えきれずに拳を突き上げた。それに応えるように全身全霊で演奏するバンドの姿に1曲目から興奮が止まらない。
「寝屋川VINTAGEというクソ田舎からやってきました!」と叫ぶと『この街から』が始まる。街を飛び出して夢を追いかける自分の将来を不安に思いながらも、今は歌い続けていくという決意を必死にライブでぶつけた。そして間髪入れずに『2002』が始まり、興奮のあまり観客が飛び跳ねる。「このデカい音が聞こえるか!!」という優斗の煽りにフロアは熱狂し、前のめりになる気持ちが観客の身体にダイレクトに溢れ出した。
軽く挨拶した後、「俺の地元の歌を1曲やります」と言って始めたのは『京阪電車』。オレンジの照明の下、耳に優しく気持ち良い音と歌声によるバラードで、温かい気持ちにさせてくれた。続く『春のまま』は勢いのあるバンドサウンドと感情剥き出しの歌声が噛み合う演奏だ。同様に『東京ラストティーン』でも、声がひっくり返ってしまうほど感情的に、目の前の観客へと訴えかけるように歌った。
優斗は次の曲を始める前に彼らのストーリーを赤裸々に語った。何度もやめたいと思ったこと、でもやっぱり歌いたいこと、目の前の観客のために精一杯歌うこと。この日の彼らのライブも、数えきれない苦難の積み重ねの上にある。「青春は多分一瞬、だからBlue Mashという名前を付けた。駆け抜けろ海岸線!!」と彼は叫んだ。見ている人の感情を巻き込みながら、バンドのストーリーを伝える『海岸線』。青く照らされるステージで繰り広げられる彼らの青春を目に焼き付ける。そして、最後の1曲は『愛すべき日々』。始まった瞬間に歓声が上がり、観客は熱量あふれるステージに高く拳を突き上げた。
Blue Mashは直感でかっこいいと思わせてくれるライブをする。ライブ中に勢い余って飛び出す言葉には等身大の彼らが詰め込まれ、見る人の心を大きく揺さぶっていた。そんな彼らの物語の続きをまたいつか目撃したい。
ジュウ
地割れするかのような重いバスドラの音がSEをぶった斬り、勢いに任せて『赤いZ』が1曲目を走り抜けていく。「自由と書いてジュウです。よろしくお願いします!」と黒のノースリーブを着た元気はつらつな髙浪凌(Gt/Vo)が大声で観客に挨拶し、そのまま『バビロンズ首都高』に入る。サビでは観客が手を挙げて、彼らの熱量に呼応する。岩浅圭哲(Ba)がベースを天井に当たってしまうほど高く持ち上げ、伊藤和人(Gt)も雄叫びをあげた。年上として、対バン相手のBlue Mashのライブに負けるわけにはいかないという意志を見せたところで、『マジで』を始める。髙波の叫ぶような歌声の熱さに反して、丁寧なコーラスが挟み込まれ、演奏のクオリティの高さも妥協しない様子が見られた。
MCでは演奏中とは少し変わって落ち着いた高浪が見られた。「Blue Mashと相思相愛で」と嬉しそうに話したり、運営であるぴあの企画者に感謝をしたり、多方面に想いを伝える様子に彼の人の良さが滲み出る。「さすがにあれやられたら、負けるわけにはいかないですわ!!」とBlue Mashのライブの熱量を受け継ぐように『スニッチ坊や』、続く『M38の真ん中』でフロアを盛り上げていく。魂を乗せたがなり声が、歌に感情を持たせた。また、ステージ上のメンバーは非常にいい顔をする。それは笑顔であったり、真剣な表情であったり、感情の昂りが見える表情であったりと様々だが、そのすべてで観客の心を揺さぶった。
『泣き出す雨は新宿で』は、スポットライトに1人照らされた髙浪が小さめのギターの音と、息の混じった声で弾き語った。そして、突然のテンポアップで表情を変えたフロアを盛り上げた。この曲は、バンド活動を続ける中での悶々とした苦悩を歌っている。Blue Mashと同じように、ジュウというバンドにも語り尽くせない多くのバンドの物語があるのだと感じさせられる。
次に演奏したのは新曲の『暴力』。キャッチーなメロディーと聞く人の気持ちを引っ張り上げるような明るさに、初めて聴いた曲にも関わらず、観客が拳を突き上げた。真っ赤な照明の下で始まったのは、『火日東京』。歌の途中には叫ぶだけの瞬間もあった。MCで話す髙浪からは考えられないような、この感情剥き出しの本性はライブの中でしか出会えない。
バンド活動続けることにおける、苦しさと楽しさの矛盾。自分たちのバンド活動に真摯に向き合い、言葉に詰まりながらも今の考えを真面目に伝える姿をじっと見守った。『平成この夜に』では、その悶々を吹き飛ばすように歌って観客を沸かせ、そして何よりも目一杯ライブを楽しんだ。そんな彼ら自身に目が離せなかった。次に、金色のスポットに照らされて輝く汗を拭いながら『金夜の社会』を歌う。そして最後の一曲、髙浪はギターを置いて、ステージの前方に飛び出した。息切れしながらも全力で歌いきった『Tokyo night klaxon』。一瞬で過ぎ去っていった曲であったが、フロアに残した余韻は大きく、観客の拍手は止まらなかった。
アンコールではBlue Mashがかつて好きだと言った曲『東京』を。耳が痛くなるような鋭いギターと迫真のシンガロングで作り上げた熱を残して、この日のライブを締めくくった。
Text by らいれいな
Photo by るなこさかい
イベント公式サイト:
https://fan.pia.jp/grasshopper/
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