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ぴあ 総合TOP > ぴあ映画 > 最終回直前でもまだ間に合う! 5人の殺し屋たちが躍動するダークヒーローアクション史劇『REVENGER』特集② 虚淵玄に直撃インタビュー!

最終回直前でもまだ間に合う!
5人の殺し屋たちが躍動するダークヒーローアクション史劇
『REVENGER』特集

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信じていたものに裏切られ、帰る場所をなくした侍の雷蔵。途方に暮れ、命を捨てようとした彼を拾ったのは、「よろず利便事(りべんごと)引き受け」の看板のもと、何でも屋を営む男たち。彼らは、力なき人たちの復讐を代行する殺し屋“REVENGER”(リベンジャー)だった……。

2023年1月から放送・配信中の本作『REVENGER』。『魔法少女まどか☆マギカ』『PSYCHO-PASS サイコパス』など緻密に練られた世界観に、観る者の心揺さぶる人間ドラマを生み出してきた虚淵玄(ニトロプラス)が、約10年ぶりにTVアニメのストーリー原案・シリーズ構成を務めたことでも話題の作品だ。本特集では、本作の魅力をひも解くとともに、キーマンである虚淵玄に直撃インタビューも敢行!

3月23日放送の第12話がいよいよ最終話となるが、各配信サービスでは1話からまとめての視聴も可能なので、『REVENGER』の世界にどっぷり浸かるのはまだまだ間に合います!

虚淵玄(ニトロプラス)に直撃インタビュー!
「時代劇って、無責任になれるのも魅力だと思うんです」

「惣二のキャラ設定はガラッと変わって
愛されキャラになりました」

『REVENGER』について聞くなら、やっぱりこの人! ストーリー原案、シリーズ構成、脚本を手掛けた虚淵玄さんに、本作の構想から制作の裏側、さらには幼少期のエピソードまで、たっぷり語っていただきました!

── TVアニメのストーリー原案・シリーズ構成を担当するのは約10年ぶりと伺いました。久々に手がけてみていかでしたか?

虚淵 確かにTVアニメは久々でしたが、なんだかんだでこの10年、同じようなことをしてきたので、特に気負うところはなかったですね。ただ、オリジナル作品なので原作の読み直しや解釈し直すような工程がなく、その分、解放感はあったと思います。

── 『REVENGER』の構想のきっかけを教えてください。

虚淵 はじめにプロデューサーから「昔っぽい時代劇がやりたい」というオーダーをいただきまして。何をもって“昔”なのかは難しいですが、僕としては高度成長期のサラリーマンのお父さんの、ストレスの受け皿になっていたような作品を思い浮かべました。アメリカンニューシネマのあおりをくらった、ちょっと不条理なお話と言いますか。「世の中ままならねえなあ」と嘆く感じの人情もの、という解釈をしまして、キャラの設定やプロットを提出しました。ただ人情物と言っても、主人公は火付盗賊改(ひつけとうぞくあらため)のような正義の役人ではなく、あくまでアウトローにしたいというのは最初からありました。

── 長崎が舞台というのも新鮮ですね。

虚淵 時代劇というとどうしても江戸の話になりがちなので、ちょっとズラしたい思いはありましたが、雷蔵と幽烟が出会う眼鏡橋のセットを見たときに、これはいいなと思いましたね。長崎の高低差のある地形って、あまり時代劇として見慣れないものなので、架空世界の雰囲気がバツっと出るんですよ。実は思いつきでいい加減なことも言っていたんですが(笑)、それが地に足のついたビジュアルに化けていくのはすごくうれしかったです。

── キャラクターについてはどのように生まれたのでしょうか。

虚淵 特に明確にモデルがいるわけではないんです。プロットを組み立てたときに、「こんな感じの殺し方がいいよね」みたいなアイデアを出して、それぞれキャラクターに当てはめていった感じですね。花札を投げて殺すキャラいいよね、みたいな(笑)。

ビジュアルは鈴木次郎さんに性格設定を渡してあげてもらったのですが、特に毎回死んでいく悪党のアイデアがことごとくすごいのが出て。とりわけ際立ったものは全く違う役どころのキャラクターに転用させてもらったりもありました。それも異国情緒なものを突っ込んでも許される長崎という舞台があったからでしょうね。

── 藤森雅也監督とはどのようなやり取りがありましたか?

虚淵 最初のプロットの段階でOKをいただけたので、やりやすかったです。大きく変わった点で言えば惣二ですね。はじめはもっと極端にアウトローに振りきった救いのない物語を想定していて、癒しポジションのキャラがいなかったんです。ただキャラデザインが上がった段階で、惣二を愛されキャラにしたいというアイデアを藤森さんがひらめいて、その辺はガラッと変わりました。物語の大筋を変えずに、惣二の動かし方だけを変えるのは神経を使う作業でしたが、うまくいったと思います。

「ビジョンを早めに共有できたので
脚本の精度を上げることに時間を割けました」

── 今作は大樹連司さんとの共同脚本ですが、作業はどのように進みましたか。

虚淵 僕が箱書き、シナリオを作成前に、各シーンごとの要点を書きとめておく作業まで進めて、それを大樹さんにお渡しして実際の場面の描写やセリフ、キャラクターの立て方はおまかせしました。前半中盤までのカギになるシーンを加筆したりは多少ありましたが、後半は見事にキャラクターを把握してくれていたので、ほぼおまかせです。惣二の長屋にいる“はな”という女の子は彼のキャラクターですしね。

大樹さんとはWebアニメ『OBSOLETE』や映画『バブル』でもご一緒しましたが、ここまでしっかりタッグを組んだのは初めて。それがいい形になってよかったです。自分で書いてもこの出来にはならなかったでしょうね。

── ということは、執筆段階で迷ったり悩んだ場面はあまりなかった?

虚淵 それが、かつてないほどスムーズだったんですよね。みんなであそこにたどり着こうというビジョンを早い時期で共有できたのが良かったのでしょうね。そこに手間取らなかった分、脚本の精度を上げるところに時間を割けましたし、自分自身も変な背伸びとか無理をせず、ある意味素でいられたように思います。それゆえに自分の本音が数多く出た話になっているかもしれません。

── ちなみに虚淵さんご自身は、時代劇には特別な思いはおありですか?

虚淵 個人的な話をすれば、僕の父親は役者をやっていて、ときどき時代劇にも出演していたんです。子どもながらに時代劇は架空のものという認識だったのですが、そこに突然父が現れるものですからなんとも不思議な感覚でした。

また、ある作品では父が悪代官か何かを演じていて、農民の子どもを殴るシーンを、僕がたまたま見てしまって愕然とするという(笑)。「これは情操教育上良くない」と思ったという話は後から聞きました。

── それは独特なエピソードですね(笑)。

虚淵 ええ(笑)。でも時代劇って、無責任になれるのもジャンルの魅力だと思うんです。今の時代に敵を想定するのは難しいですが、歴史物ならフィクションが前提になるので、どれだけ破天荒でも安心してものづくりができるんですよね。

我々の都合でキャラクターを作らずに済むし、作れなくなる枷ができるから、逆に真面目に作る手がかりにもなる。過ぎ去った時代を題材にとるメリットはそこにあるような気がしますね。

── 最後にクライマックスに向けた見どころと読者へのメッセージをお願いします。

虚淵 話の中心にいるのはあくまで雷蔵なので、彼の周りにいる人たちが、彼との関係性の中でどういった決断をしていくかが見どころになると思います。この話は明確に誰かを倒して終わりというものではなく、敵は時代そのもの。もしくは自分が背負った運命です。それにどう立ち向かうか、ぜひ注目していただきたいですね。

それと、こういう世界観に老いも若きも夢中になった時代があったことを知らないお客さんが、『REVENGER』をどう受け取ってくれるのかも楽しみな部分です。かつて娯楽の王道だったジャンルを今の技術で蘇らせる、いわば温故知新は全然ありだと思いますが、それを志すアニメは意外と少ない。そういう意味でも独特な作品になっていると思います。普段見ている作品と目先を変えて、たまに不思議なものを見るのも楽しいのではないでしょうか。

Text:渡部あきこ
Photo:源賀津己

『REVENGER』
公式サイト:https://anime.shochiku.co.jp/revenger/
公式Twitter:https://twitter.com/Revenger_anime
公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@revenger444